この記事を書いたライター

みよたかこ

みよたかこ

人材業界で10年以上働きながら、ライターとしても活動する就職氷河期世代。翻訳書出版の経験も持つ。現在の執筆テーマは、社会人のキャリアやスキルアップ、女性の生き方など。趣味は飲酒しながらの料理。

2019年11月11日

11月11日は、「ポッキー&プリッツの日」長く愛される江崎グリコのマーケティング戦略に迫る

11月11日は『ポッキー&プリッツの日』

制定から20年経ったいまでもSNSを中心に盛り上がり、知らない人はいないほど浸透している11月11日の『ポッキー&プリッツの日』。不発に終わる「◯◯の日」も多い中、なぜ『ポッキー&プリッツの日』は盛り上がり続けるのでしょうか? 

誕生の背景や、社会に浸透させるために苦労した点、工夫したことなどを江崎グリコのマーケティング担当者にお聞きしました。企業のマーケティング部門やマーケターを目指す人にとっては、ヒントが満載の内容です。

「ポッキー&プリッツの日」のような、社会に浸透させるマーケティング戦略を実現することは難しい

ライフスタイルや好みはどんどん多様化している

現代は流行の移り変わりが激しく、人々の好みも多様化しています。同じ世代の友人であっても、音楽や洋服の好みは千差万別ですよね。

商品やサービスを企画する企業にとっては、昔とは異なり社会全体に流行させるものを生み出しにくくなっています。マーケティングの観点でも、「社会に浸透させるマーケティング」を実現させることがどんどん難しくなっているのです。“一発屋”の施策を行い続けるだけでは利益があがりにくく、マーケター自身も疲弊してしまうでしょう。

そのような中、「社会に浸透させるマーケティング」の数少ない成功例に、11月11日の『ポッキー&プリッツの日』があります。

そこで本日11月11日に合わせて、『ポッキー&プリッツの日』誕生秘話と成功の秘訣を江崎グリコのマーケティング担当者に伺いました。

「ポッキー&プリッツの日」の誕生秘話と成功の秘訣とは

インタビューに応じてくれた森川氏

ポッキーは1966年の発売開始以来、長年に渡りヒットし続けている江崎グリコの代表的商品です。“Share happiness!”のスローガンが表すとおり、家族や友人たちと集まって楽しむときに、みんなで分けあえるお菓子として人々に愛されてきました。

江崎グリコでポッキーのマーケティングを担当する森川直氏に、どのようにして『ポッキー&プリッツの日』を社会に浸透させていったのかを中心にインタビューしました。

ーー『ポッキー&プリッツの日』は今年で20周年ですね。

森川:平成11年11月11日に始め、回数としては21回目になりました。ポッキーもプリッツもスティック状のお菓子で、数字の「1」に似ているので、この日としました。

施策としては、歴史を遡ると昔は店頭中心で、象徴的なイベントも開催していましたが、2012〜13年頃からデジタルメディアも使ってのマーケティングになっていきました。

ーーターゲットの顧客層は?

森川:ポッキーのメインターゲットは親子やファミリーです。ただ『ポッキー&プリッツの日』については、学校や職場でも楽しむ日になっており、若い方もこの日はとくにポッキーを食べてくださっています。

ーー親子にしろ、学校にしろ、ひとりではないシーンですね。

森川:そうですね。『ポッキー&プリッツの日』は回数を重ねるにつれ、“スティック菓子の日”から、“みんなでお菓子を楽しむ日”と捉えられてきたように感じます。このような認識があるからこそ、生活者の皆さんが自然と、主体的に楽しんでいるのだと思います。

SNSの公式アカウントで消費者の投稿を積極的に紹介する

ーー回数を重ねる、すなわち長く続けるために大切にしていることはありますか?

森川:一番気をつけていることは、「こちらの押し付けにならない」ことです。皆さんが面白いと思って参加して、自由に楽しんでいただくことをすごく大事にしています

たとえばTwitterでは、お客様がポッキーを積み上げたり、自由に踊ったりする投稿が多くあります。そういう投稿を募集して公式アカウントでリツイートをしながら、みんなで楽しむ企画にしています。Instagramでも、ご本人許可を取って公式アカウントで紹介していますね。こちらで場やメッセージを用意しすぎると、お客様自身が楽しむ“余白”がなくなってしまうんです。

ーー押し付けにならないことと、広く浸透させることを両立させるポイントは?

森川:みんなに盛り上げてもらおうという感覚を常に持つようにしています。ダンスコンテストやTikTokの企画も、お客様が自由にアレンジできる内容です。そうすると不思議と、僕らが意図していないものをお客様自身で考えて投稿してくれます。

ダンスやポッキーのタワー、学校の黒板に絵を描いたもの、みんなで記念撮影しているものなどですね。この5〜6年、とくにそのような流れになってきています。

マーケターとしては、机の上で頭でっかちに考えてしまうと理屈っぽい企画ができるので、お客様が楽しむ姿を思い浮かべて、SNSやファンサイトを通して、お客様と話すことを大切にしています

全国各地の大型ショッピングモールなどでイベントも行う

ーー一方で、リアルの場での施策もあるのでしょうか?

森川:デジタルとリアルの連携が大事だと思っています。リアルな世界に浸透していないと、商品を手に取ってもらえないですから。売り場はその表現方法のひとつですね。

ショッピングセンターでのイベントは大きな施策です。『ポッキー&プリッツの日』が浸透するにつれ、会場も大きくなっています。首都圏ですとラゾーナ川崎や、イオン成田で行なっています。

10代のインフルエンサー6名を起用した『超ポッキー部』

ーー今年は、楽しみ方そのものをお客様と考える『超ポッキー部』の施策がありますね。

森川:これも、みんなで作ろう、みんなで楽しもう、というスタンスです。10代のインフルエンサーさんに、学校訪問の企画を主体的にやってもらっています。僕も今日の夕方、インフルエンサーさんにお会いするのですが、緊張しています(笑)。

ーー『ポッキー&プリッツの日』は、商品ブランドにどのような影響を与えていますか?

森川:11月11日に、ポッキーのスローガンである“Share Happiness!”の体験をすることで「みんなでポッキーを食べて楽しかった」という記憶が残ります。そうすると、誕生日やバレンタイン、ちょっとした日常場面にもポッキーが出てきてくれるようになると思っています。

コミュニケーションツールとしての意味合いが強いお菓子ですので、場を盛り上げるためにもっと役立てればいいなと思います。

お客様に楽しんでもらう企画をつくり続ける

ーー『ポッキー&プリッツの日』をどう成長させたいか、未来予想図をぜひお聞かせください。

森川:“世の中ごと”になってほしいと思っています。単なる記念日とか、メーカーがやっているプロモーションではなく、ハロウィンやバレンタインと変わらないレベルで、『ポッキー&プリッツの日』はみんなで集まってワイワイ楽しむ日だと自然に思ってもらえる状態にまで持っていきたいです。認知は90%を超えているので、今はその階段を登っている段階ですね。

「ポッキー&プリッツの日」に学ぶ、社会に浸透させるマーケティングとは

家族や友人たちと食べる定番のお菓子だ

『ポッキー&プリッツの日』のように、「社会に浸透させるマーケティング」はどのように実現させるのでしょうか。森川氏へのインタビューから、ふたつのポイントが見えてきました。

ポイント1:お客とともにつくる姿勢

SNS全盛期の現在では、消費者は企業からのメッセージのみならず、同世代のインフルエンサーや他の消費者からの口コミを重視します。また、アクセスできる情報が溢れている環境でもあります。企業側が一方的に発信するだけでは、消費者の心にメッセージが残らないことは容易に想像できるでしょう。

だからこそ、お客が楽しむ場作りをしたり、ときにはお客に企画そのものを作ってもらったりしながら、企業とお客とが一緒に商品を育てていく姿勢が大切です。

『ポッキー&プリッツの日』も、森川氏が「お客様が自由に楽しむ余白を残す」と説明していたように、お客の工夫や意見を企業側が積極的に取り入れています。企業にとっては、お客と顔の見える対等な関係を築くことがますます重要になってきています。

ポイント2:ブランドとの整合性

ポッキーといえば、家族や友人と楽しむお菓子だ

いくら目立つマーケティング施策であっても、商品やサービスのブランドと整合していなければ効果はありません。それどころか、それまで築いてきたブランドに傷をつけてしまう恐れすらあるのです。

ポッキーを例に取ると、デジタルマーケティングであっても、“Share happiness!”のスローガンが表す通り、家族や友人と楽しむことを前提とした企画が徹底されています。ホームページやCMでも、必ずふたり以上で楽しく食べている風景が描かれており、人と人とのコミュニケーションツールであることを自然と感じます。

つまり、お客に商品やサービスをどのようなブランドだと認識してもらうかを意図し、その意図に沿ったマーケティング施策を行うことが重要です。

多様化が進む社会でも、第二の「ポッキー&プリッツの日」となるようなマーケティング戦略を生むことはできる

お客とともに社会全体へ浸透させていく姿勢が大切だ

消費者の多様化が進む社会においても「社会に浸透させるマーケティング」は実現可能なことを、『ポッキー&プリッツの日』の施策を通して見てきました。

さまざまな価値観が存在する現代において、すべてのお客に同じ行動を取ってもらうことは不可能です。大切なことは、商品やサービスがもつ価値観に共感するお客と、想いや行動を共有することだといえます。

これからのマーケターは、価値観をしっかり定義し、お客と対等な関係を築く姿勢をもち、交流する場づくりをすることが求められます。

そして「社会に浸透させるマーケティング」は、一朝一夕には成し遂げられません。目の前にある、一つひとつの小さな仕事を丁寧に進める姿勢も不可欠です。

インタビュイープロフィール

森川直/江崎グリコ株式会社
森川 直(もりかわ すなお)
江崎グリコ株式会社 マーケティング本部 チョコレートマーケティング部

2006年江崎グリコ入社。入社時よりマーケティング部門に所属。入社以来、さまざまな菓子商品の企画開発業務を担当し、2012年からはリサーチ業務、デジタルマーケティング・オウンドメディアの企画運営を歴任。
2014年より「ポッキー」ブランドの商品企画、広告・店頭販促施策といったマーケティング全般の業務を担当。ポッキーブランド担当になって以来、「ポッキー&プリッツの日」の広告・店頭販促の企画運営に携わっている。

仕事に関するお悩みはキャリアのプロに相談!

この記事を書いたライター
みよたかこ

みよたかこ

人材業界で10年以上働きながら、ライターとしても活動する就職氷河期世代。翻訳書出版の経験も持つ。現在の執筆テーマは、社会人のキャリアやスキルアップ、女性の生き方など。趣味は飲酒しながらの料理。

TOPへ戻る