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お雑煮

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1995年生まれ。浪人・留年経験を経て、総合出版社に内定。雑誌系Webメディアで編集・ライターを担当している。Twitter: @ozouni_es335

2019年12月13日

「本が好き」だけではダメ?不況の出版業界で、出版社が就活生に求める2つの資質

「本が好き」だけではダメ?不況の出版業界で、出版社が就活生に求める2つの資質

例年、人気業界ランキングの上位に食い込む出版業界。東洋経済新聞社が2019年10月25日に公開した「就職人気ランキング・速報版」によると、集英社・KADOKAWA・講談社などの大手出版社がベスト20にランクインしており、依然として学生の人気が高いことがうかがえます。今回は、そんな出版志望の就活生に向けて、出版社が新卒生に求めているものを紐解く「ふたつのキーワード」を解説します。

出版社の選考で勝ち進んでいくためには

講談社の2020年度入社定期採用HPより

出版社は例年、高倍率の選考となります。たとえば2018年の講談社の新卒採用は書類選考の応募者が2,712人であったのに対し、内定者数はわずか20名。倍率に置き換えると135.6倍にもなります。講談社に限らず出版社は新卒の募集人数がわずかで、そもそも新卒募集をしている会社が少ないため、ほとんどの企業が高倍率となる傾向にあります。

そんな人気かつ高難度の出版業界ですが、就活生が「本が好き」であることはもはや当たり前。選考に勝ち進んでいくためにはいま、出版社が「新卒生に何を求めているか」を読み解くことが重要になってきます。

出版社と業界の現状を確認しよう

出版業界は、不況の真っ只中

まずふたつのキーワードを解説する前に、出版業界の現状を確認しておきましょう。現在、出版業界は不況の真っ只中。インターネットやデジタル端末が普及したことで、紙媒体の売り上げが急速に減少しているのです。

2018年の時点で日本の出版社数は約3,200社程度、業界全体の売り上げは約1兆5,400億円、そのうち紙市場の売り上げは1兆2,921億円に及びます。一見この数字を見ると、「出版業界はいまだに、ある程度の規模があるじゃないか」と感じるかもしれません。

しかしこれは「出版社→出版取次→書店」という、流通の多重構造によるもの。書店に本が並ぶまでの過程が多いため、紙媒体の売り上げ規模が必然的に大きくなるのです。

しかし、もしデジタル媒体の勢力が増して、今以上に紙媒体が売れなくなったとしたらどうでしょうか。「出版社が倒産→受注案件が減った出版取次が倒産→本が売れないために書店が倒産」といった具合に、出版業界全体が一気に共倒れになる可能性があります。

現に、東京商工リサーチの調べによると、2019年1月から8月の間で倒産した出版業の会社は26件。出版社で見ると、1998年からの10年間で1000社以上が倒産に追いやられています。

それではこの不況の時代を、出版社はどのようにして生き残っていくのでしょうか。鍵となるのが、「デジタルシフト」「メディアミックス」というふたつのキーワードです。

出版社が生き残るためのキーワード1 「デジタルシフト」とは

出版社では、デジタルコンテンツの売上が伸びている

まず最初のキーワードが、「デジタルシフト」です。先述の通り、出版業界ではインターネットの台頭で紙媒体の売り上げが減少しています。そのため、紙媒体にとらわれず電子書籍やWebメディアなど、デジタル媒体を活用したコンテンツ発信の重要性が増しているのです。

たとえば昨年度の講談社の会社説明会によれば、2010年度の講談社の売上高は86.1%がコミック・雑誌・書籍などの「製品」であったのに対し、2016年度にはその割合は72.2%まで減少しています。一方で、デジタルコンテンツや海外版権などの事業が比率を伸ばしており、デジタル事業に至っては2010年度には1.8%しかありませんでしたが、2016年度には14%の売上高を占めるまで拡大しました。

このようなデジタルシフトは講談社だけの話ではなく、出版各社で起こり始めています。とりわけ、定期的に情報を発信しなければならない雑誌媒体は顕著で、いかにデジタルシフトの速度を速めるかが存続の鍵となるのです。

紙媒体とWebメディアでは稼ぎ方が異なる

ここでひとつ押さえておきたいのが、Webメディアなどのデジタル媒体の稼ぎ方です。紙媒体では書籍の実売上と広告が売上の大半を占めていました。しかしWebメディアでは、有料コンテンツを除けば、ページの閲覧数(PV数)による広告報酬がメインとなります。

そのため、週刊誌媒体だとしてもWeb版は毎日記事を更新してPV数を増やしたりと、同じコンテンツでも発信の仕方や稼ぎ方が全く異なるのです。それにより最近は、出版社がWebディレクターやマーケターなどデジタル領域に精通した人材を積極的に募集しているケースも増えています。

出版社が生き残るためのキーワード2 「メディアミックス」とは

KADOKAWAは、メディアミックスに積極的に取り組んでいる/角川文庫HPより

ふたつめ目のキーワードは「メディアミックス」です。メディアミックスとは、出版社のコンテンツをアニメ化・映画化するなど、メディアが他業界の媒体を使ってコンテンツの宣伝を行う手法のこと。

代表的な事例がKADOKAWAです。KADOKAWAは、映画配給会社や中堅出版社などの合同合併を経て、2014年10月1日にドワンゴと経営統合を行いました。従来KADOKAWA
は映画作品のノベライズ化など、メディアミックスに積極的に取り組んできました。これによって出版社という枠組みにとらわれず、漫画や映画、映像作品などのコンテンツを機動的・横断的に発信できるようになったのです。

また近年では、SNSでの宣伝やコンテンツの書籍化など、ソーシャルメディアを活用した手法も現れています。

出版社がこれから新卒に求めるスキルとは

出版業界に新しい価値をもたらす人が求められている

「デジタルシフト」に「メディアミックス」。出版不況の中で、出版社が行なっているふたつの生存戦略を解説しました。ではこれらを踏まえて、出版社が新卒に求めているのはどのような人材でしょうか。

それはズバリ「出版業界に新しい価値をもたらす人」です。

集英社のキャラクタービジネス室・室長の浅田貴典氏は『FINDERS』のインタビューで、「クリエイティブをコーディネートしていく立場になるプロデューサー的な人の重要性がより高まっている」とおっしゃっていました。

つまりこれからの出版社には“編集者・ライターとしての素質”と“コンテンツをプロデュースする素質”を兼ね備えた人材が必要になってくるのです。そしてコンテンツをプロデュースするためのヒントこそ、今回のキーワード「デジタルシフト」と「メディアミックス」なのです。

業界の変革期だからこそ、やり甲斐もある

先述のように、出版各社では紙媒体の収益構造に縛られず、新しい収益源を日々探しています。このような変革期においては、デジタルシフトの「デジタル媒体を通じてコンテンツに新しい価値を与えるスキル」、メディアミックスの「多様なメディアを生かしてコンテンツを発信するスキル」が必ず必要になってきます。

不況がきっかけとはいえ、この変化は決して後ろ向きなものではありません。デジタル媒体やメディアをフル活用して、自分のアイデアで作家さんの作品を届け大ヒットを生み出す。むしろ、プロデューサーとしての新しい役割が加わったからこそ感じられるやり甲斐ではないでしょうか。

出版社を志す新卒のあなた、ぜひ「本が好き」という想いにとどまらず、出版業界の将来を見据えた志望動機を描けるよう、イメージトレーニングをしてみてください。

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