この記事を書いたライター

横山允彦

横山允彦

フリーライター&マーケター。趣味は映画とお酒。「男はつらいよ」が好きで、寅さんのような生き方に憧れている。 月間20万PVを稼ぐビジネス系ポータルサイト「経営を学ぶ」を運営。

2019年4月27日

今話題の『デジタルタトゥー』 とは? 現役弁護士 河瀬季氏(モノリス法律事務所)が疑問に答える【一問一答!】

インターネットに掲載された個人情報や過去のネガティブな書き込みや記事などで、風評被害を受けるケースが増えている。一度ネット上に刻み込まれた誹謗中傷のことを、まるで入れ墨のように消すことができないという意味から、”デジタルタトゥー”と呼ぶ。

スマートフォンやSNSにより、文章だけでなく画像や動画も自由に公開できるようになった今、多くの関係者と仕事をする社会人にとっても他人事ではなく、自分が対象となる危険性を意識しなければならない。そこで今回は、デジタルタトゥーに関して我々一般人が持つ基本的な疑問について、デジタルタトゥー対策の第一線で活躍する河瀬季弁護士に答えてもらった。

デジタルタトゥー対策の第一人者 河瀬季先生の紹介

IT分野に強い弁護士として数々の執筆活動もされている

河瀬先生は、IT分野に強い日本屈指の弁護士として、以前もジョイキャリアでインタビューしている。デジタルタトゥー対策の第一人者だ。大学在学中からITエンジニア・ライターとして活躍し、現在はITベンチャーから一部上場企業のIT部門まで約40社の顧問弁護士を務める、モノリス法律事務所の代表弁護士である。

最近では、NHKドラマ『デジタル・タトゥー』の原案の担当や、著書『デジタル・タトゥー ─ インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル』(自由国民社)の執筆を通して、デジタルタトゥーに関する啓蒙活動も行っている。

【一問一答】デジタルタトゥーについて教えて!

素人でもわかりやすいよう丁寧にご回答いただけた

Q1 デジタルタトゥー被害ってどんな事例があるの?

河瀬先生

まず、過去に自分で行った投稿を消したくなるケースがあります。例えば、投稿者による削除が不可能な掲示板やパスワードの分からなくなったブログなどです。次に、過去に事実上公開許諾を出した投稿を消したくなるケースです。友達が撮影した動画や彼氏彼女が公開した写真付き日記などですね。

他にも、過去の自分の不適切な行動が原因で作成されてしまったページを削除したいというケースもあります。例えば、過去の逮捕歴や、いわゆる「バカッター」炎上などです。

Q2 デジタルタトゥー被害者からはどんな相談が多いの?

河瀬先生

ライフスタイルなどの変化に伴い、「タトゥー」を消したくなるケースが多いように思えます。例えば、ある経営者の方からの依頼では、行政法違反脱税などの報道に関して、子供が幼稚園に入るタイミングや孫が出来たタイミングなどで、子供や孫が白い目で見られるリスクを考え、ご相談いただくといったケースがあります。

他にも、過去の恋人との日記などに関して、婚活や結婚を機に削除を考えるケース、変わり種では、テレビ番組などの出演やデビューが決まったタレントが、過去のマイナスな記事を消したくなるケースなども多いです。

Q3 デジタルタトゥーとリベンジポルノって何が違うの?

河瀬先生

リベンジポルノもデジタルタトゥーの一種といえます。過去の交際相手によって、個人が特定できるような性的な画像や動画が大量に拡散されてしまった結果、削除が事実上不可能となり、インターネット上に半永久的に残り続けてしまう可能性が非常に高いものです。

Q4 デジタルタトゥー被害者は就職に不利になるの?

河瀬先生

いわゆる「バカッター」など、インターネット上の炎上が増加してきた昨今では、採用活動の際に事前の実名検索を義務付けているような企業もあります。

たったひとつのサイトであっても、ネット上にデジタルタトゥーが残っていれば、それが採用先に見つけられてしまう可能性は否定できません。企業側もリスクのある採用は避けたいものです。デジタルタトゥーによって就職が不利になることは大いにあり得ます。

Q5 どんな媒体(Twitterやアメブロ、はてブなど)にデジタルタトゥーが多いの?

河瀬先生

TwitterをはじめとするSNSは拡散力が非常に高く、SNSでの炎上からデジタルタトゥー被害が発生する場合が多くあります。

また、2ちゃんねるなどの匿名掲示板サイトも、そこから転載されることが多いため拡散されやすく、それに、大元の投稿削除も容易ではないため、デジタルタトゥーが多い媒体といえるでしょう。

デジタルタトゥー対策の豊富な経験が窺える

Q6 デジタルタトゥーってどうやって見つけるの?

河瀬先生

デジタルタトゥーを消したい依頼人の情報をもとに、インターネット上で検索をかけ、問題のあるページを探していきます。なかには名前だけで探しきれるケースもあります。

しかし、2ちゃんねるなどの掲示板の場合、その人がどのようなワードで誹謗中傷されているかを検証し、どういったキーワードで検索を行えば全ての投稿を洗い出せるか、頭を使って試行錯誤するケースもあります。

Q7 動画や画像だけ(テキストの様に構造化できないもの)の場合はどうやって探すの?

河瀬先生

単純に画像検索などのサービスを使うケースもありますし、問題の動画や画像内の情報から、その内容を何通りかにキーワード化するかたちで、通常のデジタルタトゥーと同じように探していくケースもあります。

例えば、ある騒動で特定の写真がさまざまなサイトに掲載されてしまっているという場合、その写真と一緒に記載されがちなワードを検証し、どういったキーワードで検索を行えば全ての投稿を洗い出せるか試行錯誤します。

Q8 デジタルタトゥーはどうやって消すの?

河瀬先生

問題のあるページを削除する権限を持っている人や会社、例えば、記事執筆者サイト管理者サーバー管理者検索エンジンを相手に、デジタルタトゥーが依頼者の権利を侵害しているとして、削除を求めます。

交渉が決裂した場合は、裁判や「仮処分」という、裁判所を通じた手続によって削除を求めます。

Q9 デジタルタトゥー対策は誰に頼めばいいの?

河瀬先生

デジタルタトゥー対策の大半は、「法律事件」「法律事務」に該当するものであり、本人以外にそれらの業務を行うことができるのは、弁護士のみです。つまり、裁判を行うことができるのは、自分自身と弁護士だけ、というのと同じです。

弁護士資格を有しない業者が削除代行を行うことは、「非弁行為」といって法律違反にあたります。自分で対処しきれない場合には、弁護士に依頼するべきです。

Q10 デジタルタトゥー対策はIT企業にも頼めるの?

河瀬先生

先ほども述べた通り、弁護士以外がデジタルタトゥー対策を行うことは、「非弁行為」に当たる可能性が非常に高いです。ただ、単なる監視や逆SEO等のIT的対策をとる場合には、「法律事件」「法律事務」には該当しないため、IT企業にも依頼することができます。

Q11 デジタルタトゥー対策はどんな人から依頼があるの?(有名人?経営者?政治家?)

河瀬先生

「幅広い」というのが率直な感想です。企業から過去の事故などについて相談を頂くこともあります。「事故があった」という事実は争いようがないにせよ、それにともない根も葉もないデマを記載されてしまっていたケース。事故直後は「触れない方が良い」という判断で放置されていましたが、そろそろ消したい、といったケースなどです。

他にも、経営者軽犯罪で逮捕されてしまった一般のサラリーマンなどから依頼を頂くこともあります。

Q12 デジタルタトゥー対策で大変なことは?

河瀬先生

デジタルタトゥーを消すためのアプローチを誤ると、せっかく鎮火しつつあったものが再炎上してしまうこともあります。その場合には、デジタルタトゥーが消えるどころか、再び掘り返され拡散されてしまうため、事案にあった解決法を慎重に考えなくてはいけません。

Q13 なぜ河瀬先生はデジタルタトゥー対策に力を入れてるの?

河瀬先生

当事務所は、ITをはじめとするテクノロジーや社会システムの進化を、法務のスペシャリストとして促すことを使命としています。インターネットもまた、それらの進化の一つです。だからこそ、その進化の過程で生まれてしまった負の側面であるデジタルタトゥーと向き合うことも、我々の仕事であると思っています。

まとめ

ネット上に”タトゥー”を残さないように注意しましょう

デジタルタトゥーに関する基本的な質問から具体的で踏み込んだ内容まで、わかりやすく真摯にお答えいただけた。河瀬先生のような、デジタルタトゥー対策の第一線で活躍されている人物でなければ、このような具体的な回答を得ることができなかっただろう。

また、弁護士を通して適切な対策を取れば、デジタルタトゥーを削除できるということがわかり、ひとまず安心を得ることができた。しかし、だからといって気を緩めてはならない。

最近は、アルバイト先での悪ふざけ動画などをSNSに投稿する”バイトテロ”や、TwitterやInstagramで自らの反社会的行為を投稿する”バカッター”などが増えている。彼らの行為は若気の至りでは済まされず、大人になってからデジタルタトゥーとして自分に返ってくる可能性があるだろう。

デジタルタトゥーは元もと、書き込んだ本人が亡くなった後も、WEB上に記録されたデータが永久に残り続けることから、「人間は不死になった」という概念として用いられたようだ。それが、現在のような意味で使われているということは、ネットを使う人間の倫理観が、テクノロジーに追いついていないということを表しているのかもしれない。

誰もが被害に遭う可能性があるデジタルタトゥー。当然、自己顕示欲のためにSNSで不適切な投稿をするなど、軽はずみな行動は避けなければならないし、普段からネットに何かを書き込む際には細心の注意を払う必要があるだろう。

河瀬季先生の関連リンク集

モノリス法律事務所 公式HP
NHKドラマ『デジタル・タトゥー
河瀬先生の著書『デジタル・タトゥー ─ インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル
デジタルタトゥーとは
河瀬先生のブログ記事
河瀬先生のインタビュー(ジョイキャリア )

この記事を書いたライター
横山允彦

横山允彦

フリーライター&マーケター。趣味は映画とお酒。「男はつらいよ」が好きで、寅さんのような生き方に憧れている。 月間20万PVを稼ぐビジネス系ポータルサイト「経営を学ぶ」を運営。

TOPへ戻る