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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2019年12月25日

犯罪はキャリアで不利になるのか? 犯罪者の「その後」をプロに聞く(前編)【キャリアの傷痕】第7回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第7回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第7回・第8回は、犯罪者として刑罰を受けた方、つまり前科者のキャリア分析や裁判の傍聴を専門とするライター・高橋ユキさんに聞いたお話を前・後編に分けてご紹介します。犯罪者の「その後」を見てきた高橋さんが語ってくれたこととは......?

日本の治安はどんどん良くなっている

――そもそも論ですが、前科を持った人って日本にどれくらいるのでしょうか?

高橋ユキさん(以下、高橋):実は、人口のうちどれくらいが前科者かというデータはないんです。代わりに、「検挙人員」を参考にすることが多いですね。平成29年のデータでは、21万5,003人が検挙されています。罪を犯しても全員逮捕されるわけではなく、書類送検や任意の取り調べで済むこともあります。「検挙」にはそれらの数字も含まれていまた数字です。

検挙される方のうち約半数は窃盗です。よくニュースになる強制わいせつや詐欺は、全体の6%にもなりません。

――年に20万人くらいが犯罪者になる、というわけですか。

高橋:正確には不起訴になる例もありますから、「検察庁終局処理人員」という資料を参考にすることもあります。ただ、「警察に犯罪を疑われ検挙されたことのある人」という解釈ですと、平成29年は20万人くらいといえます。

――20万人って、結構な人数ですよね。地方都市の人口くらいあります。日本ってそこまで治安が悪いイメージがなかったのですが。

高橋:ただ、毎年20万人「新しい犯罪者」が生まれるわけではないです。2017年の再犯者率は、48.7%です。おおよそ2人に1人は再犯者となります。

再犯者率が高い背景にはいろいろあると思うのですが、総人口の減少、そして治安の改善がは関係しているのではないかと思われます。2003年ごろと比べて、犯罪は以前の半数近くにまで減っているんですよ。検挙されてから正式に裁判まで進む人を「公判請求人員」と言いますが、こちらは同年で8万3,988人、前年比3,747人減です。

検挙人員も減っていますし、正式裁判まで進む人も減っています。新しく罪を犯す人が減少しているため、必然的に再犯者の比率が高まるのかなと。

罪を犯しても裁判まで進むほうが珍しい

罪を犯しても裁判を受けるのはまれ

――警察のお世話になったからといって、全員裁判まで行くわけではないんですね。

高橋:はい。略式命令請求といって、100万円以下の罰金で済む場合は書類だけで手続きを終えられます。また、「被害者と和解している、反省している」といった事情から起訴猶予となるケースや、そもそも証拠不十分などで不起訴になる人もいます。この中では起訴猶予が最も多く、2017年は63万5,593人の方が起訴猶予となりました。

――そうなると、確かに「犯罪者の人数」を割り出すのは難しそうです。裁判で有罪にはならなくても、罪を犯した人は裁判を経ることなく暮らしていくケースも多くあるんですね。

罪を犯しても、職場へ報告しない人も多い

会社は前科者を特定する秘密のデータベースを持たない

――ここまでの内容を踏まえると、意外と罪を犯してもキャリアに影響がないように思えます。

高橋:そうですね。逮捕されてしまうと、取り調べのために警察は最大で20日の拘留ができます。そこで、今の職場に逮捕を知られることにはなりますよね。ただ、正式裁判を経て禁固刑以上になれば、そもそも失職することが多いでしょうから……。有罪になったとして、懲役や禁固刑を終えてからの就労ですが、転職先に報告しない方も多いですよ。

――それでも、職場にバレないんですか?

高橋:よく、「企業は前科者のリストを持ってる」なんてウワサを聞くかもしれませんが、そんなことはなさそうです。面接で「前科はありますか」と聞かれることもないでしょうから、前科を伝えることなく転職される方もいらっしゃると思いますよ。(※)

※ 履歴書の賞罰欄には記載する必要が出てくる。ただ、履歴書に賞罰欄がないものを選べばそのまま就労できる。

――意外でした。本人のやる気で、社会復帰はできるものなんですね。

有名事件はネットで検索してバレる

ネットで検索されれば事件が明るみに出ることも

高橋:例外はあります。まず、有名事件だと検索すれば出てきてしまいますから、志願者の氏名で検索されて「あれっ、犯人と同姓同名だぞ」とバレてしまうことがあります。

たとえば強盗殺人といったなどの重大な犯罪は、ネットで名前が出てしまう可能性が高いですね。逆に大麻取締法違反などは、芸能人でもない限り名前がネットに出てこないので隠し通せると思います。

――ニュースに取り上げられる犯罪って、まちまちですよね。この前のあおり運転など、犯罪の中では比較的軽い方に入ると思いますが、あれだけ集中的に報道されれば以降のキャリアに影響がありそうです。

高橋:そうですね、重大事件だけでなくが「人が怒りを抱くような犯罪」ですとメディアに取り上げられる確率は上がりますし、次のキャリアへの影響が大きいかもしれません。ただ……前科者にはそれよりも「犯罪以前に抱えているハンデ」があるんです。

……後編に続く

参考資料:犯罪白書 平成30年版、検察庁「検挙人員」、法務書「矯正統計」

高橋ユキさんプロフィール

傍聴人。フリーライター。殺人事件の取材や公判傍聴などを基に執筆。これまでの傍聴件数は1,500件を超える。 2019年、山口連続殺人放火事件のルポタージュ書籍『つけびの村』出版。ほかにも『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など多数。

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