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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2020年2月5日

転職回数は多いけど、無能ではなかった…天職まで転び続けた仕事道・後編【キャリアの傷痕】第11回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第11回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第11回の後編は、一般的にキャリアで「傷」扱いを受ける複数の転職を経て、4社目で天職に就いた真鍋里沙さん(仮名)にお話を伺います。


新卒で入社した会社を離職するに至った経緯が語られた前編はこちら。

「好きだから働きたい」を吹き飛ばす社内政治

社内政治の末に、ある日突然、部署が消えた

真鍋里沙さんは、都内在住の33歳。旅行代理店を約1年で退職してから、外資系企業へ。スリルある職場でやりがいに燃えていたが、そこで待ち受けていたのは、リストラという意外な結末だった。

――真鍋さんは楽しく働けていた職場で、なぜリストラに?

真鍋里沙さん(以下、真鍋):社内政治です。実は当時、社内で営業と私がいた部門で軋轢が生まれていました。とはいえ、部長同士がいがみ合っているだけで、ヒラの私には関係ないって思っていたんですね。お偉い人同士が仲が悪いなんて、それこそよくある話じゃないですか。

ですが、社内政治で私の上司の上司に当たる方が退職されて。それから数か月後に、私の部署ごと解体されてしまったんです。

――部署ごと解体!? それって、会社は成り立つんですか。

真鍋:成り立つ……んですかね。成り立たなかったんじゃないかなあ(笑)。とにかく、私の部署にいた人間はほかの事業部門に回されて、散り散りになることが決まったんですよ。未経験の事業部に飛ばされるか、クビか。選択肢がなかったんです。

筆者も驚いたが、確かに外資系企業では部署ごと消えるケースがある。多くの部署は採算が立たない事業から撤退するためにつぶされるが、社内政治がモノを言う企業では社員同士の対立で部署が吹き飛ぶ話もある。

外資系企業では、人事権を人事部が握らない。代わりに同じ部署の幹部社員が人事権を持つので、こういうめちゃくちゃな采配もありうるのだ。

ただし、課長以上の管理職は売上/利益のノルマを抱えており、売上が落ちればクビとなるケースが多い。部署ごと動かせるほどの権力を持つが、売り上げが落ちれば退場……大きな権力と重い責任がセットになっているため、外資で偉くなれば好き放題やれるというわけではない。

長期休暇で「やりたい」を手放す決意を固めた

自分を見直すタイミングとして、ちょうどよかったレイオフ

――それで、辞めてからは転職活動を?

真鍋:いえ、少し休もうと思って……。いろいろ考えてみたんですけど、これまでの人生でキャリアに追われてばかりいたなって。ちゃんと自立して、食べていかなくちゃってのと、好きな仕事をしたいってばかり。このままじゃ、何回でも同じ失敗をしちゃう……って危機感を抱いたんです。

正確にはもう覚えてないんですが、結構休みを取ったなあ。1年近かったんじゃないかな。休みと言っても旅行とか、パーティとかは一切なくて。でも婚活はしましたね。仕事から逃げたすぎて、結婚しようとしてました(笑)。そのときお付き合いした人もいましたけど、結局仕事がしたいから、いまも働いてます。

あとは、山手線を何駅分も散歩したり。思いつきでケーキ焼いてみたり、前から読みたかった恩田陸先生の小説を読んだり……。建設的なことはしてなかったですね。そういうものから、離れたかったので。

――そこで、手に入れたものはありましたか?

真鍋:ええ。「やりたいこと」って、案外プライベートにあるんだなって気づいたんです。思えば、仕事に向いていないことだらけなのに、これまで仕事で好きなことを実現しようとして。そりゃ、つらいなぁ。私はそういう生き方、無理だなー。って、思ったんです。

それで、少し楽になりましたね。好きなことを仕事にしなくていい。感銘を受けるようなリーダーと働いて、刺激を得なくてもいいんだって。人生ってそれ以外にもいろいろあるんだなって。

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やりたいことより、「できること」で幸せをつかんだ女性

真鍋:それからは、「できること」を基準に職場を探しました。私、職歴は多かったんですが、新卒1社目の旅行代理店以外では法律関係のお仕事が多くて。とくに輸入関連の法律は詳しかったんです。それで、BtoBメーカー(法人向け商材を扱うメーカー)の中でも、輸入が多い分野を探して。

社風も、これまでは「やりたいことができるか」で探してきたんですね。それを思い切って「嫌な人がいないか」に変えました。ビジョンを描くより意識は低いけれど、周りの人って幸せに直結するので。

――いまの職場は、いかがですか。

真鍋:若いころの私が見たら、がっかりするかな(笑)。やりがいより、楽な人との付き合いを選んじゃったから。でも、それが最高に幸せなんですよ。

会社から帰って、好きな分野の勉強ができるのも楽しくて。いまは医薬品の輸入手続きについて、ヒマなときに勉強しています。こういう成長もあるんだなあって感じです。

――ありがとうございます。

インタビューのため、18時ぴったりに会議室へ来てくれた真鍋さんは、とても幸せそうだった。そしてヒアリング後も、「この後、勉強会なんです」と爽やかに去っていった。ご自身では「若いころの自分が今の私を見たら、がっかりする」などと表現されていたが、きっと本音ではないだろう。

真鍋さんは、成長を「会社で得られるもの」から、自宅で得ていくものに変えた。そして会社では楽な人と仕事をすると切り替えたことで、救われたように思う。伸びる場所はどこでもいい。会社で成長しなくても、人は変われるのだから。

※個人情報保護のため、一部情報を編集してお届けしています。

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