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いづつえり

いづつえり

柑橘農家×ベーグル屋×ライター。「地方に仕事はない」という“常識“を自ら反証することを生きがいにしているパラレルワーカー。横浜出身、天草在住。

2020年4月15日

「将来に漠然とした不安を感じる」入社3年目の女性の悩み【となりのキャリア】第3回

働く人たちの相談役、キャリアコンサルタント(以下:キャリコン)に寄せられた相談事例を振り返ることで、あなたの“仕事やキャリアを考えるためのヒント”を見出していくコラム『となりのキャリア』。 今回は仕事に慣れてきて頭打ち感が強まっているという、入社3年目・若手社員の鈴木さん(仮名。以下、鈴木)のお悩みに、キャリコンの松浦さん(以下、松浦)が回答します。多くの若手社員が抱きがちなお悩みを、鈴木さんの事例を通してみていきましょう。

入社3年、先が見えてくる時に持つ不安

仕事に慣れた頃に将来に対する漠然とした不安を感じ始める人は少なくない

相談事例:人材業界 入社3年目の鈴木さん

入社後しばらくはがむしゃらに仕事に取り組んできましたが、最近は仕事もひととおり一人でできるようになりました。同時に、このまま会社にいても、自分の成長が頭打ちになるのではと漠然とした不安を感じています。転職を考えた方がいいのでしょうか。

松浦:いまの会社で仕事を続けることに漠然とした不安を感じるのですね。これまでどんな風に仕事に取り組んできたか、もう少し詳しく聞かせてください。

鈴木:はい。会社では、採用のお手伝いをするのが主な仕事です。働くスタイルとしては、自分の会社より、お客さまのところにいる時間の方が長いです。人と会話をするのが好きで、お客様からは信頼をいただいていると思います。

松浦:お客さまからは、信頼をいただいているのですね。「成長が頭打ちになるのでは」という不安は具体的にどのようなことでしょうか?

鈴木:ずっと同じ仕事をしていくのかなぁ、という不安です。「こうなりたい」と思えるような、女性のリーダーやマネージャーがいないことも不安の原因になっていると思います。同じ仕事をして成長がとまるんじゃないかと思うと、このままでいいのかなと不安になってきました。

松浦:「ずっと同じ仕事を続ける」ことに漠然とした不安を感じるということですね。リーダーやマネージャーなどへのキャリアップは考えたことはありますか?

鈴木:それは考えたことがなかったです。

松浦:なぜ考えたことがなかったのでしょう?

鈴木:リーダーやマネージャーに任せられた仕事ならできますが、どの仕事をどの人に割り振るかを考えたり、他の人がつまずいているポイントを見極めてアドバイスできたりする力は私にはないと感じます。自分の仕事はできても、他の人の仕事まで面倒を見られる自信はありません。

松浦:管理職には、自分の仕事だけでなく他の人のマネジメントも期待されますよね。他にはどんなことが必要だと思いますか?

鈴木:組織や、お客さまにとって必要なことは何かという課題意識も足りていなかったと思います。

松浦:リーダーやマネージャーには、一般社員とは異なる質の仕事を求められます。お話を聞いている限り、いまの状態で転職しても、同じことの繰り返しになってしまうかもしれませんね。

いまは転職するより、リーダーやマネージャーとしての視点を持って働くことの方が鈴木さんにとって大切なのではないでしょうか。

鈴木:転職はよくないですか?

松浦:私は、悪いとは思いません。ただ、鈴木さんの場合、いま転職してもきっと一般社員としての待遇になる可能性が高いでしょう。働く場所が変わるだけになってしまうのではと感じました。

未経験の仕事にチャレンジするのもよいですが、一般的には未経験の仕事をする場合には、年収が落ちるケースの方が多いと思いますよ。

鈴木:いまの仕事でもできることがありそうです。これからは、目の前のことをこなすだけでなく別の視点で仕事を考えてみようと思います。

女性のロールモデルがいない=不安? 社外にも目を向けてみて

社内に憧れの存在がいなければ思い切って外に目を向けてみよう

松浦:もうひとつ、女性のリーダーやマネージャーがいないことにも不安を感じるのですね。

鈴木:はい。お手本となる女性社員がいないと感じています。まだ歴史の浅い会社ということもあって、前例がないんです。

松浦会社にお手本がいないなら、憧れる人からヒントを社外で探すのは一つのやり方かと思います。会社の外に信頼できる年上の女性や、憧れている有名人などはいませんか?

鈴木:ワーキングマザーとして有名なAさんは、いいなと思います。

松浦:なぜいいなと思うのでしょうか?

鈴木:Aさんが楽しそうに子育ても仕事もしている様子が伝わってくるからです。でも、私には難しいかと思います。

自分で仕事やプライベートの時間を選択できるのは限られた一部の人という気がします。Aさんがそうできるのは、やっぱり特別だからなんじゃないかと思ってしまうんです。有名人やインフルエンサーは、私とは違いますよね。

松浦:仕事とプライベートの時間を選択できる働き方ができて、子育ても仕事も楽しそうなところにひかれるのですね。そういう働き方は、今のお仕事だと難しいでしょうか?

鈴木:そうですね、私の身近なところではあまり見たことがありません。お手本になる人が社外だと、産休とか育休などの社内の制度のことは、前例がないので不安です。いますぐ、そういうことになるとは思っていないのですが。

松浦:前例があった方が安心なのはたしかですね。鈴木さんの会社は平均年齢が若くて、前例がないのですよね?それなら、むしろチャンスかもしれません。

これまでに育休から復帰した女性社員がいないなら、鈴木さんが前例になることもできます

ライフイベントを考えたタイミングで上司や先輩に相談してみるのもアリですね。フレックスタイム制など、もう少し勤務時間に融通がきく働き方を提案することもできるかもしれません。

鈴木:いきなり話をしても大丈夫でしょうか?

松浦会社の就業規則や、社内の福利厚生制度、そして国の制度について一度しっかりと目を通しておくとよいと思いますよ。

案外、上司や会社の人事担当も就業規則がしっかり頭に入っているとは限りません。勉強してから話をすると、相手も真剣に話を聞いてくれるのではないでしょうか

鈴木:就業規則と国の制度ですか。気にしたことがなかったです。見てみようと思います。

松浦:いいな、と思う人を見つけたり、大切にしたいことが見つかったら、なぜそれをいいと思ったのか。近づくためには何をしたらよいかを考えてみるといいと思います。

「絶対に譲れないもの」は明確に 自分のキャリアを描く考え方

譲れないものがはっきりするとキャリアは描きやすくなる

誰もが新しい環境にワクワクしながら過ごす社会人1年目。

ところが、2年、3年と経ち慣れてくると「このままでいいのかな?」と、漠然とした不安を感じはじめる人は多いのではないでしょうか。

「いまの会社で働き続けるイメージが持てない」
「お手本となる人がいない」

などの理由で、鈴木さんのように転職を考える人も少なくありません。

今回の相談事例のポイントを松浦さんに聞いてみました。

「今回の相談事例でポイントとなるのは、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン氏が提唱したキャリアアンカーという考え方です。

鈴木さんのお悩みは、入社して3年経ち、仕事もひととおりできるようになってきた人の間ではめずらしくありません。

ふと周囲を見てみると、お手本となる社員がおらず、いまの会社で働き続ける自分を想像できない。転職を考える気持もよく分かります。

長い人生の中で、キャリアがどこに向かっていくかを明確に描くことができている人は少数派です。どこに向かっていくかは分からないと、お手本がいてくれたら安心ですよね。

しかし、お手本がないと将来のキャリアを描けないというのは、問題のすり替えだと思います。

アンカー(錨)は、キャリアを選ぶときの基準とも言い換えられます。先がどうなるかは分からなくても、絶対に譲れないもの、犠牲にしたくないものをはっきりとさせておけば、周りの環境やライフステージが変わっても、大切な意思決定ができるのではないでしょうか。

生涯にわたるキャリアの核となるのは、どのように働きたいかということ。

何をしたいかは、そのときどきの状況や能力によって変わっていくものです。

まずは、どのように働きたいかをはっきりさせましょう。そうすれば、次のステージに行くために何をしたらよいかも見えてくると思います。」

“本当の課題”をひとりで見つけるのは実は、とても難しい

話ができる人がいれば問題はずっとシンプルになる

今回は仕事に慣れてきた若手社員が感じる「漠然とした不安と転職」「お手本にしたい人がいない」という相談を見てきました。

これまでの松浦さんのキャリアコンサルティングの様子を見ていて感じたのは、きちんと相談者と自分の話を分けて考えているということです。

人はどうしても「自分のストーリー」で話を聞いてしまうもの。誰かに相談したら、いつの間にか自分のことに話がすり替えられてしまっていたり、一緒に悩み始めてしまって困ったという経験を持つ人も少なくないのではないでしょうか。

プロのキャリアコンサルタントでも、相談者が気づいていない課題を、限られた時間の中で見つけられる人はそれほど多くないと思います。相談者の悩みに対して直接的な回答をするだけではなく、本当の課題は何なのかを追求する姿勢が印象的でした。

自分ひとりで本当の課題を見つけるのは難しいもの。

筆者自身、相談できる人がいたら違うキャリアを歩んでいただろうなと思うことがあります。キャリコンのサポートを受ければ、どのようにキャリアを考えればよいかのヒントを得られるはずです。

次回は、ライフイベントをふまえて仕事選びをしようとしている人の事例を紹介します。お楽しみに!

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柑橘農家×ベーグル屋×ライター。「地方に仕事はない」という“常識“を自ら反証することを生きがいにしているパラレルワーカー。横浜出身、天草在住。

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