この記事を書いたライター

トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2020年5月6日

優しいあの子が部下つぶし 管理職になって初めて知ったこと・前編【キャリアの傷痕】第20回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第20回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

前後編でお届けする今回は、優しいと評判だった木下 凛さん(仮名)が、管理職になってすぐの時期に味わった苦悩を、インタビューを通じて振り返ります。

社内でも評判の「優しいあの子」

入社してすぐのころはよく「優しすぎる」と怒られていました

木下さんが学生時代につけられたあだ名は「天使」「女神」だった。木下さんは誰にでも分け隔てなく優しかったからだ。木下さんのお話をうかがうと決まったとき、私は彼女の友人からも話を聞いた。

木下さんの友人:凛ちゃんはいつでも笑顔で、しかもチャーミングなんですよね。歩く姿もなんとなくかわいくて、みんな見ちゃう感じ。「トコトコ」って擬音が聞こえそうなくらい(笑)でもぶりっことかじゃないんですよ。素でかわいいんです。

それでいて、転んでいる子がいたら、まっさきに助けに行っちゃうタイプ。たしか学生時代に飲み会で誰かがゲーしちゃったことがあるんですよ。そりゃまあ、助けるけど、臭いとかきついじゃないですか。でも、凛ちゃんだけが自分の手が汚れるのも全然気にせず介抱してましたね。
凛ちゃんに突き動かされて、ほかの人も助け始めて。それを見たとき、あー、もうかなわない。こんな立派な人がいるんだ、って思いました。私にとって、凛ちゃんは憧れです。

会社でも天使としてムードメーカーに

会社でも「優しいあの子」の評判のまま、順調に仕事を覚えた

そんな木下さんは、職場でも大事に育ててもらったという。

――木下さんは、入社当時の自分をどう思っていましたか。

木下凛さん(以下、木下):「ありがたい」って気持ちでいっぱいでした。とにかくいろいろな先輩方にかわいがっていただいて。最初だから、やっぱり仕事が全然できなくて。勉強とは違う難しさもありますよね。仕事の進め方とか、誰に気を配るといいのか、とか。そういうのを上司が最初に根回ししてくださっていたり、ね。

上司運も恵まれていなあって思います。最初から穏やかで、何度も丁寧に教えてくださる方にご指導いただいたんです。私が仕事を覚えられたのは、本当にいい上司の元につけたからです。ま、私も頑張ったな、って思いますけどね(笑)

――とはいえ木下さんは、異例の昇進で管理職まで上がったわけですよね。それは優秀さもあったんじゃないですか?

木下:うーん、そうかなあ。出世とか、評価ってやっぱりそのときの景気とか、上司との相性とか運もありますよね。努力もしましたけど、人に恵まれていたからかな? って、私は思うんです。

3年目から後輩も見ていましたけど、後輩もかわいい子ばかりで、すごく頑張ってくれてたので。その子たちが同じように成果を出してくれたからこそ、部署としても数字になったのかなあ、って思ってます。

木下さんはこのとおり、自分のことを決しておごり高ぶらない。だが、彼女が30歳を前にして、社内最速の課長になったのは確かだ。男女差別が残る会社も多いなか、女性で20代課長は異例中の異例だった。当時の彼女は営業職だったが、なによりも売上がばつぐんに良かったのだそうだ。

取引先からも「木下さんに会えない日は、やる気が出ないよ」と愛され、いくつものお得意先をつくった。とはいえ、セクハラも受け付けない。彼女は典型的な「セクハラをかわすことで、古い価値観の男性を手中に収める」タイプだった。

木下:なんか、セクハラって怒ってもきっとおじさんって治らないですよね。だったらニッコリ笑って「ありがとうございます♡ でも、部長の奥様の方が素敵ですよ♡」ってやった方が賢いじゃないですか。そのおかげか、社内外でも大事にしていただいたなあって思います。

――そういったセクハラに対して、どんな女性も抵抗しなかったんですか?

木下:そういうこと、キツく拒否する女性もいました。でも、男性から風当たりが強くなるだけだったかなあ。もちろん、コンプライアンス上はダメなんですけどね。でも、四角四面にとらえるのって「正しいけど、上手じゃないな」って思ってたんです。だって、ちょっと嫌なことを受けても笑ってかわせば、かわいがってもらえるのに。

異変は管理職になってから始まった

なんでだろう。管理職になってから、何もかもがうまくいかなくなった

そんな木下さんが違和感を覚えたのは、管理職になってからだった。部下の離職率が、異様に高くなってしまったのだ。木下さんがこれまでに見た部下や後輩は、合計10名。そのうち7名が、木下さんの下について1年以内に離職する異常事態が起きていた。

あまりに部下が辞めてしまうので、木下さん自身も手を動かさざるを得ない。そうすると、部下に仕事を任せられない。木下さんは激務に追いやられ、しかも成績が下がり始めた。

なにもかも上手くいかなくなった木下さんは、初めて「何かがおかしい」と気づいた……。

……後編へ続く

※個人情報保護のため、一部情報を編集してお届けしています。

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トイアンナさんの連載コラム「キャリアの傷痕」

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慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

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