この記事を書いたライター

金井 幸男

金井 幸男

大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

2018年9月9日
ウーマンリンク

イラストレーター・漫画家 菜々子|苦悩を受け入れ楽しく描く

『美肌一族』シリーズを筆頭に、フィギュア『佐川男子』や『anan』カバーイラストなど、ジャンルレスで活躍している菜々子氏。おっとりと優しい空気を漂わせる彼女が、いかにして人気作家となったのか。気になるキャリアはもちろん、クリエイティブ系フリーランスとしての生き方や今後の展望など、様々な話を伺った。

有名漫画家のアシスタントを経て独り立ち

有名漫画家のアシスタントを経て独り立ち

アシスタント時代は2日徹夜することも…

菜々子さんが描くイラストは多くの媒体で使用されており、誰もが目にしたことがあると言えるほどメジャーであるにも関わらず、本人は営業や売り込みに行った経験がないそうだ。

「デビュー前の20代前半、体調を崩して休養していたんですね。すると、漫画描ける人を探している方がいると知り合いから聞き、会ってみたらあっけなくデビュー決定。スキンケアグッズ『美肌一族』の会社で、まだ新興なため、チャレンジに対して積極的だったみたいです。大して経歴とか見ずに、君が描けるのならやろうって。

翌週くらいから光文社発行の週刊誌「女性自身」にて、毎週8ページの連載が始まりました。最初は美肌一族関係の仕事だけでしたが、これをきっかけに、ほかの雑誌からも声をかけていただけるようになり、じわじわと広がった感じなんです」

とはいえ、下積みの時代がなかったわけではない。

小さい頃から絵を描くのは好きだったんですけど、プロになれるとは思っていませんでした。むしろ建築家になるのが夢…。新聞に折り込まれている住宅広告の、間取りを見るのが好きだったんです。こういうのを自分が作れたらいいなーって、専門職への憧れもありましたし。

だから、大学は建築関係に進学。でも、在学中に大好きな漫画家、安野モヨコさんがアシスタントを募集していて、そこで働くようになり、イラストや漫画を仕事にしたいと願い始めました」

菜々子さんがアシスタントをしていた頃、安野モヨコ先生はすさまじい勢いがあった。

「常に描いてないと間に合わない状態。『働きマン』や『さくらん』といった人気作品をはじめ、同時進行でいろんな連載をしていて、複数の編集者さんが現場で待っているんです。うちの原稿を先に……、みたいな。詰まっている時期なんて2日徹夜することも。そんなペースですから、私は体調を崩しちゃって」

そのまま休養に入ってしまうのだが、ハードな環境で働けたのはとても良い経験だったと振り返る。

「仕事の進め方とか基本的なノウハウを、すべて教えてもらえましたから。普通の会社に就職したことがない私にとって、貴重な社会人経験でしたね」

産みの苦しみは周囲に頼って解決ように

気付いたら女子好みのテーマを多く扱うように

女子好みのテーマを多く扱うようことが多い

「先生を手伝うようになってしばらくすると、私には漫画を描くのは難しいと感じるようになりました。産みの苦しみを間近に見て、とてもじゃないけど無理だなって。才能溢れるビッグネームですら苦悩するんですもの。特に安野先生は売れっ子。描く枚数も半端じゃないし、なかなかマネできないですよ。私はイラストで生きていきたいと思いました」

しかし、今はイラストだけでなく漫画家としても求められることに。

「産みの苦しみに直面した時は、担当の編集者さんに頼っちゃいます。私自身はこういうのを描きたいというのが特にないんですよ。ですから、求められているものを探す感じ。依頼されればどんな内容でも楽しく描けるんですけどね。過去にも自分で選んだ題材はなくて、気付いたら美容、料理、ワインといった、女性が好きなものをテーマにすることが多くなっていました」

ストレスなく自分なりの働き方を実現

会社員の友人が羨ましく思えることも

今年から青色申告に変えてすべて自分で

フリーでクリエイティブな仕事をこなすというのは、会社員とどう違うのだろうか?

「良い点は満員電車に乗る必要や付き合いの残業がないこと。団体行動する機会が少ないのだって、私にとっては魅力です。あと、怖い上司がいない! クライアントで多少おっかない人がいても、身近ではないし、仕事が終われば平気ですからね。全部自分の責任になるのもラク。誰かのせいで叱られることも、私のミスで誰かが怒られることもない」

しかし、会社員の友達を見ていて、ちょっと楽しそうだなと、羨ましくなることがあるそう。

チームで仕事した経験がないので、協力しあってひとつの何かに向かうのはどんな感覚だろうかって。それに、お金の管理をすべて自分でやらないといけないのは面倒で…。確定申告が代表ですね。

ずっと親任せにしてきたんですけど、今年から青色申告会というのに入って、帳簿のつけ方から教わっています。オフの調節も自分でやらないといけませんね。休みがないのはありがたいことですが、ずっと働き詰めというのは問題かと。昔は仕事が安定してあるわけではないと、ドキドキすることもあったのですが、どうやら私はプレッシャーに強いみたいで、その収入不安定問題には打ち勝ちました。

会社員の友人からは、先のこと見えないんじゃない? と心配されますが、意外と平気で…鈍感なのかも知れませんね。でも、本当にデビュー以来あまり苦労した覚えがなく、辛い思いはアシスタント時代にすべて終わらせた感じ。アシスタントは自分のペースで動くわけにはいきませんからね、すごくしんどくて。先生も忙しい時はちょっと怖かったし。いや、良い人ですよ(笑)。今も仲良くて、定期的に食事会したり、アドバイスを頂いたりしています」

リフレッシュの手段は普通の女性と変わらない

リフレッシュの手段は普通の女性と変わらない

縁もあってももクロのグッズも制作

ツアーグッズ制作を手伝った経緯もあり、『ももいろクローバーZ』は古くからのファンだとか。

「気分転換はライブ鑑賞やフェスで。ももクロ以外にもイエモンや岡村靖幸、東方神起、ビッグバンあたりが好きです。あとは友達との食事ですかね。そういうタイミングで時事ネタを聞いたり、拾ったり。

まぁ、オフの過ごし方は多くの女性と変わらないと思いますよ。奥が深く、一生できる趣味になりそうだと思うのは書道。仕事にも生きていて、作品内の手書き文字がキレイになったと言われることが。墨をすって、香り嗅ぎながら過ごす時間に癒されています」

尊敬しているのは、一緒に仕事している料理研究家、きみママさん。

「北参道で”はらじゅく畑”というお店をやっている女性です。年中お会いしているのですが、60代と思えないほどパワフルでエネルギッシュ。それでいて無理をしている感じがなく、自然体なんです。安野モヨコ先生も尊敬していますが、ちょっとレベルが高過ぎて雲の上のお方かな」

20代の積み重ねがあるからこそ今の働き方がある

若いうちの苦労のおかげで今がある

時代だったけど、がむしゃら時代が自分を創った

焦らず無理しないことが、菜々子流の仕事を楽しむポイント。ただし、20代のうちは辛抱するべきとも。

若いうちにがむしゃらに頑張ると、30代である程度まとまってくる気がするんですよ。そうなるとマイペースでも平気に。今って、スパルタ系はちょっと気分じゃないですよね?

でも、私はけっこう体育会系で育っていて、とても嫌だったし、人に同じ思いをさせたくありませんが、強引な筋トレだとか寝るなとか、理不尽や厳しい環境があったからこそ、今があるというか……。現在進行形の時は本当に辛かったし、体調も悪くしましたから人にはオススメしませんけど、あのキツい時代があって良かったな。

という思いも拭えません。耐えた分は、しっかりプラスになって返ってきていると思いますが、若い人の過労死や自殺といった悲しい話を聞いてしまうと、やっぱり今の時代とはマッチしないかしら」

続けるのは難しいけど仕事を楽しむことが大事!

嫌なことが忘れられる漫画を一生描き続けたい

嫌なことが忘れられる漫画を一生描き続けたい

「私はすでに、かつて願っていたことの多くが叶いました。お金持ちや有名人になりたいとも思っていませんし、今後の望みは生涯現役。ちょっと楽しくなったり、今日あった嫌なことが忘れられたりする漫画やイラストを、ずっと描き続けたいです。始めるのは誰でもできますが、続けるのは意外と難しいと思いますので」。

漫画家やイラストレーターの仕事について詳しく知るには職業ナビ!
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【菜々子さんの取材後記】

書籍だけでなく、ヒット商品のパッケージや有名雑誌のカバーなど、多岐に渡る活躍が人気のほどを証明する菜々子さん。焦らず無理をせずと本人は言うものの、今に至るには20代で体験した苦労があってこそ。自分の”好き”を武器とする生き方に憧れる人は多いでしょう。しかし、大抵の場合は厳しい下積みが必要だということも忘れずに(笑)。

【菜々子さんの紹介】

菜々子キービジュアル

菜々子キービジュアル

菜々子(漫画家・イラストレーター)

東京都出身。大学在学中の2000年に、人気漫画家である安野モヨコさんの事務所にて、アシスタント生活をスタートさせる。’04年、体調不良のため休養するも、’06年には女性セブンで『美肌一族』を連載開始。漫画家デビューを果たす。その後もコスメの美肌一族関連の制作に携わり、『anan』や『ゼクシィ』等、様々なメディアで活躍。単行本『センスがいいと思われる 贈りもの美人の作法』 、『結婚につながる恋のはじめかた』のほか、フィギュア『佐川男子』やTV番組内イラストなども多数手掛けている。

【菜々子さんの関連リンク集】

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金井 幸男

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大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

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