この記事を書いたライター

伊藤璃帆子

伊藤璃帆子

芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

2018年11月12日

“正義感”は組織にとってどう映る?!もし貴乃花がビジネスマンだったら

先日、惜しくも親方引退という決断を下した貴乃花。現役時代だけでなく、親方となってからもメディアを沸かせ続けた彼は、間違いなく相撲業界において異端の存在であった。今回はそんな貴乃花がもしビジネスマンだったらどうなっていただろうか? と,少し違った角度から考えてみたい。

そもそも貴乃花ってどんな人?

現在は親方としてメディアで注目を集めているが、現役を引退したのは15年前。10代、20代には現役時代の活躍について知らない人も多いかもしれない。そこで、まず貴乃花がどのような力士だったのかについて触れておこう。

誰もが知る、日本史に名を残す名力士

・大相撲ブームを牽引した貴乃花

貴乃花の父親は元大関の貴ノ花利彰、伯父は初代若乃花であり、名横綱として知られている。いわば相撲のエリート一家で生まれ育った。貴乃花(当時の貴花田)は兄の若乃花(当時の若花田)とともに1998年に相撲界入り。名大関の息子ということに加え、兄弟での入門で「若貴フィーバー」という旋風を巻き起こし大相撲ブームの火付け役になった。

参考リンク 貴乃花親方の子供時代と現役時代の強さについて解説!

貴乃花は数々の最年少記録を更新し、第65代横綱になる。2001年5月場所の優勝決定戦のこと。貴乃花は周囲の休場勧告を振り切り大怪我をおして出場、大方の敗北予想を裏切り、対戦相手を豪快な上手投げで破った。当時の総理小泉純一郎首相が「痛みに耐えてよく頑張った、感動した!おめでとう!」と、表彰式で感情を全面に表したことでも有名な一番だった。

・平成の大横綱と言われた人気の秘密

全盛期の取り組みは日本中を虜にした

貴乃花は、「平成の大横綱」と称されるほどの評価を得るまでになるが、他にも多くの横綱がいる中で、彼が人気を博し続けている理由はなぜなのか。その理由の1つに、横綱らしい相撲の取り口が挙げられる。いわゆる”横綱相撲”と言われるそのスタンスは、端的に言えば相手の攻めを真正面から受け止め、それに応える形で取り組むという堂々とした立ち会いだ。勝ちにこだわるだけでなく、その勝ち方、つまり横綱としての姿勢や自分の信念を大切にするという貴乃花の人となりが垣間見える。こうした姿勢を貫き2003年の現役引退までに794勝、優勝回数22回という優秀な成績を残した。

・引退後の貴乃花

現役を退いてからは、親方として貴乃花部屋を構え、37歳で日本相撲協会の理事となり注目を集めるが、良くも悪くもその一本気な性格ゆえ保守的な協会と改革を進めようとする貴乃花の間で対立が深まっていく。そして、一連の暴行事件などを経て、結果的に親方を引退することになった。自身で多くを語らなかった貴乃花には賛否両論様々な見方があったが、30年の相撲人生に終止符を打ち、角界を去ることとなった。現役時代はもちろん、引退してもなお自分の信念に基づき行動するという姿勢を貫いた。

親方の仕事は会社の経営と似ている!?

さて、ここで親方の仕事についても触れておきたい。そもそも「親方」とは通称で、正式には「年寄(としより)」と呼ばれ、相撲協会の構成員で各種要件(現役時代の成績、稽古場の保有、協会の承認など)を満たす必要がある。

会社経営と相撲部屋の運営は近しいものがある

部屋運営は、実は企業の経営と重なる部分が多い。一般企業では人材がモノやカネ、情報を巧みに使い、自社に成果を残すことを求められる。そうしてできた企業ブランドに惹かれ、優秀な人材が集まり、良い商品を生み出し……という好循環のサイクルを構築するのが企業経営だ。そういう意味では相撲部屋も、一般企業の経営と本質的には変わらない。ただ異なるのが、相撲部屋におけるメインの経営資源が力士(人材)だということである。

参考リンク 相撲部屋の運営やその収入源について。廃業するケースも紹介!

・相撲業界の親方との仕事とは

気になる親方の仕事だが、まず親方は自身の部屋を存続させる必要がある。部屋の運営のため協会から所属力士に応じて様々な補助金も出るが、一方で親方のポケットマネーという側面もあるのだ。そこで重要になるのが、部屋の後援会(簡単に言えばファンクラブのようなもの)の存在。後援会に入ってもらうためには魅力(実力)ある力士をより多く生み出す必要があり、親方はそういう意味でも弟子を育てる必要がある。部屋の名前が売れれば入門希望者も増え、スカウト活動なども行いやすくなる。このように親方は部屋運営の安定化につながる循環を構築することが重要な責務と言えるだろう。

・人材育成が最重要業務

若くして入門した力士は、集団生活を通して、相撲界の慣習や目上目下の人間に対しての礼儀礼節などを学ぶ。そういう意味で、親方は技術面の指導はもちろんだが、それ以上に人間としてのあり方に対して責任を負う非常に重要な役割を担っているのだ。

スターがいれば部屋も当然活気づくが、逆に力士の一人でも事件を起こすと親方の責任が問われることになり、部屋自体も空中分解してしまう危険性をはらんでいる。こうしたことから、親方の最も重要な仕事は部屋に所属する力士の教育、監督任務といっても過言ではない。

参考リンク 親方の仕事あれこれ

もし貴乃花がビジネスマンだったら

さて、ここまでで貴乃花の現役時代や親方の仕事に触れたが、ようやく本題の「貴乃花がビジネスマンだったら」という観点で掘り下げてみたい。

名力士・貴乃花がビジネスマンだと、どんな影響があるのか

貴乃花は責任感が強く、一本気な性格の持ち主であると推察できるだろう。それは、一連の暴行事件から読み解ける。その事件とは、2017年10月25日夜~26日未明に起こった、当時横綱の日馬富士による貴乃花部屋貴ノ岩への暴行事件である。この事件で貴乃花親方は、決して内々で解決させず事実確認を警察へと託した。その後、横綱を引退へと追い込み、業界全体の構造改革にも挑んだ。

しかし、協会を批判し理事長候補選挙にも惨敗。協会での立場はもちろん無くなり、批判も山ほど浴びることとなった。その結果、部屋への影響を考え自ら角界引退を選択。それと同時に、今まで面倒を見てきた「子供同然」という力士たち関取など10名は、千賀ノ浦部屋に移籍をさせたのだった。

事件詳細 参考リンクは こちら

これほどの使命感と責任感を行動に移し示せる人間は、周りを見渡したってそう見つからないだろう。真面目で信頼でき、結果も出すという頼れる存在だと言えるが、違う角度から見ると、頑固で話が通じないという印象に映ることもあるだろう。このような人材が企業にいたらどんなことが起こりうるだろうか。

・古い体質の企業にはミスマッチ!?

勉強家で努力の人、これを聞けば仕事に臨むスタンスとしては問題ない。新人時代などはその直向きさを可愛がってもらえ、メキメキと実力をつけていくだろう。ただし、仕事ができればいいというものでもないのが、日本の企業体質。特に組織が大きくなれば関係する部署も増えていくことから、社内政治が求められるようになっていく。

自分たちが理不尽に耐えながら築き上げてきたことに対し、正論で論破しようとすれば角が立ち、敵を増やすことにつながる。正しいこと(例えば不正を内部告発等)をした者が職場内いじめや不当な処遇を受けるといった事件は実際に耳にする。日本の同調文化においては、出た杭は打たれてしまうのだ。今回の騒動の相撲協会と貴乃花の関係において重なる部分があるのではないだろうか。組織で働く場合、貴乃花のような一本気な性格はやや不安因子となる。

・貴乃花が活躍できるのはこんな会社!?

では、ビジネスマンに向かないかと言われるとそうではない。例えば成果主義の組織で、プロセスよりも結果重視の企業であれば失敗も成功も自分次第。そういう意味では信念の男貴乃花であれば活躍できる可能性は大いにあるのではないだろうか。

また、そもそも職務の役割が明確な外資系企業や、経営者との距離が近く、意見交換やビジョンを共有できるベンチャー企業などにおいてもハマれば自分の力を出し切れる可能性は高いと考えられる。

貴乃花が上司だったら部下は安心?それとも大変?

では少し観点を変えて、貴乃花がもし私たちの上司だとしたらどうだろうか?貴乃花には自分自身の信念のもとで行動するある意味真っ直ぐな上司だ。当然、教育や成果は厳しく見られ、ごまかしは効かないだろう。

ただ、協会を相手に弟子をかばう姿勢などからもわかるように、真面目に努力して取り組めば、見捨てず成果を出すまで付き合ってくれそうだ。たとえミスをしても一緒に客先に出向き頭を下げてくれるのではないだろうか。失敗を恐れチャレンジしなくなる若者が増える現代において、貴乃花のもつ安心感は部下にとってはありがたく映るはずだ。

信頼と安心感をくれる上司はそうそう居ないはず

一方で、その上司が会社とうまく折り合いがついていない場合は、部下にそのしわ寄せが来ることも考えられる。会社から扱いづらいというレッテルを貼られた人間のチームとなれば、そのチーム全体が反乱因子とみなされるかもしれない。また、上司と他部門との間に挟まれるなどの可能性も否定できない。こうなると、部下としてどう振る舞っていいのかわからず大変な思いをしなければならない。

まとめ

組織に対して個人で戦うには限界がある。結果を出しつづけた貴乃花でさえ引退することになったのだ。例えば会社勤めの私達が会社を変えようと行動を起こす際には孤軍奮闘することは得策ではない。

自分自身がある程度のポジションにいることが前提となるが、ビジネスの現場にいる私たちは、第三者の存在を活用することが有効な選択肢の一つだ。具体的には外部のコンサルタントや調査会社を活用し、匿名でのアンケートや中立な立場からの分析を通じた示唆を提示することで、角も立たずうまく実情と対応策などを提言することがでる。

社会に出ればステークホルダーと言われる自分自身を取り巻く関係者が多くなる。その中で出世していくためには利害関係を把握して調整するスキルが求められる。真っ直ぐな気持ちはもちろん重要だが、自分だけで戦わない、他人を巻き込んでいくことの重要性を貴乃花は教えてくれたのではないだろうか。

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伊藤璃帆子

伊藤璃帆子

芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

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