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笹谷 淳介

笹谷 淳介

鳥取県出身のフリーライター&エディター。ファッション誌の編集部を経て現在に至る。主にファッション・音楽・カルチャー系の紙媒体・ウェブメディアで活動中。音楽と古着がとにかく好きで休日は古着屋かレコード屋にいる可能性大。最近の趣味は町中華で美味しい炒飯を食べること。

2018年9月9日
日本の社窓から

屏風職人 片岡恭一(片岡屏風店)/日本の社窓から vol.2

“温故知新”。そんな言葉がピッタリな会社が墨田区にはある。片岡屏風店は東京で唯一の屏風を専門に作る会社だ。この会社もまた“職人”という職のイメージをいい意味で裏切る。FMラジオが流れる作業場で仕事をする様は現代と過去を融合させた不思議な空間のよう。機会がないと訪れることのない屏風店を覗いてみると、古くから伝わる技術という“財産”を次世代へと残そうとする職人の顔を見ることができた。

東京唯一の屏風店の仕事

東京唯一の屏風店の仕事

お店の看板である“社窓”には立派ば屏風が飾られる

1946年の創業以来、節句用やホテル、式場用、装飾用の屏風を作り続ける片岡屏風店。過去には東京に数十軒あった屏風屋も今では片岡屏風店のみとなった。

家業としてスタートし、現在は2代目の恭一さんと3代目の息子さんを中心に9名の職人が仕事をしている。

1階は屏風の博物館、2階を作業場とした社屋にはさまざまな種類の屏風が並んでいる。小さいものから大きいものまで、普段屏風を見ることない私からしたら全てが新鮮に見えてしまう。

1階のショールーム

1階のショールーム

「もともと1階はショールームだったんです。博物館となったのは墨田区の小さな博物館に認定されてからですね」

と話すように、小さな博物館に認定された後、多くの人が訪れるようになった。年間で2,000人以上の人が訪れ、小学生から日本に住む外国の方が屏風を学びに訪れる。

「屏風というものがあることを教えていかないと文化がなくなってしまいますから」と話す片岡さん。

文化を残すためからくり屏風を作る体験教室などを開き次世代へ屏風について教えているようだ。

FMラジオの流れる作業場

USENの流れる作業場

温故知新という言葉が当てはまる現場

“職人”の現場と聞いてどんな現場を想像するだろうか。これは私の勝手なイメージだが、取材に来るまでは立ちっぱなしでの作業や正座をして黙々と作業をする光景を想像していた。

しかし、片岡屏風店は違う。明るい室内にデスクが置いてあり、FMラジオも流れている。PCを片手に作業をする人もいる。イメージしていたものとかけ離れた環境で、屏風は作られているのだ。

「数年前までは正座をしながら、作業をしていたんですけどね。今のスタイルに合わせて椅子に座って仕事をするようになりました」

しかし現代風の仕事場でも使う道具は古くから使われているものばかり。ここでも“温故知新”という言葉が当てはまる。

職人技術の光る作業風景

職人技術の光る作業風景

仕事の現場は新しくなっても、その技術は変わることはない。

手先を使う作業は職人にしか出来ない仕事だ。働く職人の手を見ると、和紙を貼るため糊が付いていたり長年の作業で皮膚が厚くなった手を見ることができ、その手を見るたび職人の仕事のすごさが伝わってくるのだ。

作業場にいる愛犬たち

作業場にいる愛犬もいる風通しの良い社風

そして片岡屏風店の作業場には可愛いワンちゃんが4匹。この場面も他の会社では見ることの出来ない風景だろう。

「犬がたくさんいるので、面接の最後の質問は犬は好きですか?と聞くんです」

元気に動き回るワンちゃんを見ているとすごく風通しの良い会社なんだろうと思うことができる。

伝統を次の世代へ伝えていく

伝統を次の世代へ伝えていく

いまの家屋に合わせて伝統を紡いでいく

屏風という伝統を次の世代へ伝えるため、片岡屏風店では「からくり屏風」の製作体験をすることができる。

からくり屏風とは屏風を開くと4面でてくる不思議な屏風のことで、これが子供や外国の方にすごくウケるようだ。

また、新しい屏風の製作にも力を入れている。タンスに眠っている着物や帯、ネクタイなどを使って屏風を作る。東京唯一の屏風屋には一般の方からいろいろな要望が届くようだ。

「この前は東大の教授から屏風を作ってくれと依頼がありました」

また、どうしても屏風本来の幅や尺にしてしまうと和テイストなものになってしまう中で、少し細くしたりなどの工夫をして今の家屋に合わせた屏風作りを心がけているのも片岡屏風店のすごいところ。

“新しい屏風”へのチャレンジも行なっている

“新しい屏風”へのチャレンジも行なっている

使わなくなったが想いが詰まっているものや普通なら屏風とはミスマッチなものも屏風にし、新しいものに変えていくそういった取り組みが屏風を次世代に繋いでいく道しるべになっているのかもしれない。

“断らない”というこだわり

“断らない”というこだわり

ボランティアで引き受けるシゴトもある

お客様の要望で、いろいろな屏風を作る機会も増えた中で、片岡さんには1つのこだわりがある。それは“断らない”ということ。

中には無理難題を突きつけてくる人もいる。それでも片岡さんは断ることをしない。

「こういう屏風はできませんか?とたくさんお客さんが持って来てくれるんですよ。それが楽しくてね。じゃあやってみましょうかと引き受けてしまうんです」

伝統を次世代へ繋ぐという思いもあるかもしれないが、片岡さんは屏風作りを心から楽しんでいる。

連載開始50周年を記念したあしたのジョー展に飾られた大きな屏風を作ったときも絵さえあれば屏風ができるのにと提案しボランティアで作ったという。

「あしたのジョー」とのコラボレーション

「あしたのジョー」とのコラボレーション

こういった片岡さんの働きが屏風を次世代へ繋いでいく。「故ふるきを温たずねて新あたらしきを知しる」精神が今の職人には必要なのかもしれない。

取材後記

普段触れる機会のない屏風。職人さんへのインタビューと聞き少し緊張しましたが、お話をしてみると優しく丁寧でわからないことを全て教えていただきました。

現代と古きよき時代が混ざった不思議な空間でのお仕事姿はとても新鮮で、自分もオリジナルの屏風を作ってみたいと思いました。貴重な経験をありがとうございます!

インフォメーション

片岡屏風店
〒131-0033
東京都墨田区向島1-31-6
TEL:03-3622-4470
FAX:03-3622-0294
HP:http://www.byoubu.co.jp/

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