この記事を書いたライター

笹谷 淳介

笹谷 淳介

鳥取県出身のフリーライター&エディター。ファッション誌の編集部を経て現在に至る。主にファッション・音楽・カルチャー系の紙媒体・ウェブメディアで活動中。音楽と古着がとにかく好きで休日は古着屋かレコード屋にいる可能性大。最近の趣味は町中華で美味しい炒飯を食べること。

2018年11月21日
ミレニアルズワーク〜未来と直面する世代のワークスタイル

ミュージシャン 小栢伸五/人に届ける音楽を奏でるベーシストに、趣味を仕事にしたやりがいを聞く

働き方が自由になった今、“ミレニアル世代(1980年代〜1999年代に生まれた世代)”の若者たちは人生の岐路に立たされているのかもしれない。会社勤めを選ぶか自分の夢を追いかけるか…。自分の将来に不安を持つ若者が多い中で自分の“好き”を仕事にしている若者がいる。ベーシストとして活躍する小栢伸五氏はメジャーデビューも果たしている注目のミュージシャンだ。今回はそんな彼に仕事のやりがい、進化を続ける技術の中でどう働いていくのか、若い世代だからこそ感じることについて話を聞いた。

兄に憧れて、始めたベース。そこから全てが始まった…

兄の影響で始めたベース、それが生業になった

小栢(おがや)さんの生まれは、鳥取県米子市。“田舎”の代表格である土地で生まれ育った。大きなライブハウスは1つしかなく、CDショップも数えるほどしかない、そんな音楽をやっていくには少し不利といえる土地で、彼はベース人生をスタートさせることになる。

「7つ上の兄の影響が一番大きいかもしれないですね。僕は兄の背中を追って、当時は兄がやることはなんでも真似がしたかったんです。だからベースもその流れで…(笑)。弾いている姿や、音がかっこよくて、僕もやりたい!って思ったんですよ。

正直、両親にはドラムやギターを勧められていたんですけど、ベースしか考えられなかったです」

小栢さんの実家はピアノ教室を開く、音楽一家。小さい頃から音楽が身近な環境だった。2歳ごろからピアノを習い、ベースを始める中学3年生まで続けた。そこで培われた音楽センスはベースというジャンルでも発揮されることになる。

県内で進学校とされる高校に進んだ小栢さんは、本格的にバンド活動を開始。同級生たちで組んだバンドや年上の大人たちと組んだバンドなど、“ベースを弾く”という環境を自ら増やし、スキルを磨く日々を送っていった。

学生時代はベースに明け暮れる日々

「学生時代はとにかく目立ちたかったのかもしれない。そりゃ、女の子にもモテたかったですしね。でも運がよかったなって思います。同級生に音楽好きな人がたくさんいてくれたし、周りの大人の方も一緒にバンドを組んでくれた。進学校って勉強ばかりなイメージがあると思いますけど、あまり勉強をした記憶はなく…。ベースのことばかり考えていました」

どんどんベースの魅力に取りつかれていく日々。テクニカルな技術を求めるようになり、周りとぶつかることも多かった。1日何時間も練習をし、地元で“ベーシスト 小栢伸五”を知らない人はいないぐらいの有名なプレイヤーにもなった。

しかし進学校に進んだ手前、音楽ばかりやるわけにはいかない。自分の進路について考える時期が迫っていた。友人たちが大学進学のために勉強に本腰を入れていく中、小栢さんは兄の紹介で1つの動画に出会った。それは有名なベーシストが1人でプレイしている動画。

「ヴィクター・ウッテンというアーティストの動画を観たときに、漠然とベースで食って行きたいって思ったんです。ベースってバンドでも裏方的なポジションで目立たない楽器だと思うんですけど、彼は1人で音を奏でていて。それも、1つのドラマを生むような、物語を奏でていたんです。

それを観て感動してしまって…。彼の存在が、今の“ベーシスト 小栢伸五”の基盤になっているかもしれないです。なんか僕にはこれしかできないって思えたんですよね。だから将来一般企業で働いている自分の姿は全く想像できず、ベースというカテゴリーで表現をし続けたいって気持ちが大きくなりましたね」

“ベース”で食べていくと決めてからは、両親を説得する毎日。家に帰れば、ベースを触り練習する姿・自分は本気なんだという姿を両親に見せ続けた。その姿を見て両親も背中を押してくれることになり、小栢さんは東京の専門学校に進むことになる。

作業部屋にはベースやギター、機材が溢れる

上京、そしてメジャーデビューへ

プロになった今でも、練習は欠かせない

地元では実力者だった小栢さん。しかし、東京の専門学校に進むと上手い人たちがゴロゴロいた。“ベース”という1つの楽器でも、プレイスタイルは各々異なる。上手いプレイヤーを目の当たりし、ますます自分のスキルを磨こうと努力を重ねた。

「上京して感じたのは単純に上手い人が多いなってこと。高校のときは正直上手くなくてもよかったんですよ。高校時代は勢いや若さで演奏をしている人が多かったんです。

でも、専門学校に入ると勢いとかはなくてただただ、上手い人が多かった。僕の代のベース科はたまたま、みんなジャンルの違う感じで技術の突出している部分が違ったんです。いろんなキャラクターの人たちがいる中で、ジェラシーみたいな感情ももちろんありましたけど、自分の音楽の幅が広がったというか、自分の芯がしっかりした感じはあります」

東京に出たことで、性格にも変化があった。高校時代は“自分が一番”だという感情が強く、「なんで俺がこんなところで演奏しなきゃいけないんだ」と思うこともあった。しかし環境が変わり、“自分のために弾くベース”が“人のために弾くベース”に変わった。

その変化が今の仕事のやりがいにつながっている。これは小栢さんがいろんな人とセッションを重ねる中で見出した答え。「音で会話をしながら演奏するということ」。

3rdAlbum 『PORTRAY』

それに気がついてから、ベースがもっと楽しくなった。現在、活動するジャズ・フュージョンバンド『DEZOLVE』のメンバーとも出会うことができ、“ベーシスト 小栢伸五”を発信する場所も作ることができた。

しかし、メジャーという大きな舞台で戦う今、不安はもちろんある。そもそもジャズ・フュージョンというジャンルは若い年代にはとっつきにくいジャンル。そのジャンルをミレニアル世代だけで組んだバンドが演奏すること自体大きなチャレンジなのだ。

「お客さんが増えてほしいなって気持ちは強くありますよ。若い世代が聴かないってやっぱり世間に広がり辛いじゃないですか。そういうところではこのままやっていけるのかなっていう不安はもちろんあります。

でも単純に楽しいことをやってるという感覚があるし、僕はサポートミュージシャンという一面もあるので、このバンドではアーティストの顔を見せれたらいいかなって思っています。自分の好きなプレイ・魅せたいプレイを追求する場所がバンドかなって」

自分のやっていることに自信はありながらも、挫折も経験した。プロとして活動を始めた最初の頃は、演奏面・人間的な未熟さに悩まされることも多かった。泣いてしまう夜だってあった。

挫折を大きな糧にして、突き進む

しかし、挫折したらダメになってしまう、若い世代も多い中で、彼はベースという仕事をやめようとはしなかった。そこには小栢さんの強い想いがあった。

「いろんな働き方をしている人がいる中で、僕は好き勝手やっている部類に入ると思うんです。こんなに好きなことをさせてもらっているのに、何を悩んでいるんだろうって。自分がやりたいと思った道だから、何が何でも上に這い上がってやろうって」

好きを仕事にして働くというのは難しいことかもしれない、しかし小栢さんには明確な芯がある。ここまでの強い芯があるからこそ、音楽業界という大きな舞台で輝けるのかもしれない。

デジタルネイティブが求められる時代をどう生きるか

PCを使っての楽曲制作

今の時代、スマートフォンさえあれば情報が手に入り、映画やテレビ番組も見ることができる。ひと昔前までは考えられなかった日常が今では普通になっている。

音楽業界でもこの、新技術の波は大きく影響していて、iTunesやSpotifyなど月額で登録すれば、楽曲が聴き放題。何千曲もある楽曲を簡単に聴けるようになった。一見、便利なように聞こえるが、これはアーティストからすると死活問題のようだ。

「正直、このサービスはダメだと思う。月額1000円くらいで簡単に音楽が聴けてしまっては、音楽の本当の良さが伝わらないと思うんです。音楽って思い出と共に記憶されていくものだと思っていて、海に行ったときに聴いた曲とか車の中で聴いた曲とかって覚えているじゃないですか。

僕はそういうところを大事にしたいんです。CDを手にとって買ったものってデータで聴いた音楽とは全然違うと思うし、記憶に残りますよね。正直、CDが売れないってアーティストからしたら結構厳しいものがあるし、便利になりすぎるのもどうかなって思ってしまうんです」

新しいものにクエスチョンマークを感じながらも、楽曲制作に欠かせないという思いもある。バンドでの楽曲は制作ソフトで作ることがほとんどで、ソフト上でほぼほぼ完成させるのが今の作り方。サブスクリプションも楽曲制作に役立っている。

サブスクリプションサービスには反対ですが、実は僕も使っているんです。やっぱり時代の流れには逆らえないですよね。仕事をする上でiTunesのリンクが送られてきたりすることも増えてきましたし。だから、今の時代というか今を生きるアーティストしてはサブスクは切っても切れないものになっているのかもしれないですね」

新しいこと吸収しつつ、成長につなげる小栢さん。技術の進歩に少し批判的ではありながらも、バンドの認知を広げるためにYouTubeやSNSなど新しいツールを駆使し、挑戦も続けている。

最新ツールを使う重要性とは…

「いかに人に聴いてもらうかだと思うんです。だってサブスクリプションだけでしか音楽を聴かない人だっているかもしれないし、YouTubeしか見ない人もいるかもしれないわけで。音楽を届ける立場の人間として、反対的な立場だとしてもしっかり今のツールは使っていかなければならないと思います。音楽を届ける方法で一番なのはライブだと思っているので、新しいツールを使うことで、その導線が作れたらいいかなって思いますね」

趣味を仕事に。今が一番楽しい。

自分が好きなこと仕事にする、楽しさ

好きなことや趣味を仕事にしてしまうと好きだったことが嫌いになってしまうという意見もある。だから“仕事”と割り切ってしまう人も多い中、小栢さんは自信を持ってこう話す。

「中には仕事として割り切っている人もいると思うけど、僕はベースをやっているときが、一番楽しいんです。演奏しているときがすごく楽しい。何を演奏していても、楽しいんです。もちろん、うまくいかなくて嫌だなって思うときもあります。

仮に演奏が楽しくなかったとしても演奏中、自分のメリットを探すようにしています。これをやればここが成長できるっていうのを考えながらやるだけで、その瞬間は楽しくなると思うので。モチベーションになることさえ見つけられれば、なんでも出来るし、楽しくなってくると思いますよ!」

常にモチベーションの置きどころを考えつつ、その一瞬を楽しもうとする。このマインドが移り変わる今の時代で成功する鍵なのかもしれない。

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取材後記

実は、小栢さんは私の高校時代の友人。一緒にバンドをやってきた親友の1人だ。正直、“さん”付けで名前を呼ぶのも恥ずかしいし、面と向かって真剣な話をするのもゾワってする(笑)。インタビュー中も2人で照れ笑いをしながら、いつもの飲み会のような時間を過ごしたわけだが、こんなにも小栢さんがたくさん話してくれるとは思ってもなく、結構なボリュームのインタビューになった。

高校時代の彼は音楽が関わると本当に“嫌なやつ”(笑)。何度も嫌いになりかけた。でも彼の頑張りを間近で見ていたからこそ、嫌いになることなく今の関係を続けているわけで、リスペクトできる親友としてほぼ10年間付き合い続けている。お互い高校を卒業し、専門学校に入学して初めてのGW。地元のファミレスで「俺は、人のためにベースを弾く」と宣言した彼が本当にプロのベーシストになり、“人のため”にベースを弾いている。それがすごく嬉しくてたまらない。

ライターとベーシスト。業種は違えども、いつか一緒に仕事ができたらいいねと話していた学生時代。今こうやってインタビューという形で夢を実現することができた。改めて話を聞いてみると、「やっぱり、こいつすごいな」と…。

彼の作る楽曲がもっともっといろんな人たちに聴いてもらえるように、私は親友として、“ベーシスト 小栢伸五”のファンとして見守り続けていきたいと思う。

小栢伸五さんの紹介

小栢伸五/1993年11月13日生まれ 鳥取県出身。

幼少期からピアノ、ギターなどの楽器に触れ、クラシック、ポップス、ロックなど多くの音楽に触れる。中でも3才から始めたミュージカルの影響で幅広い音楽と表現に影響を受ける。14才からベースを始めライブ活動を開始。高校卒業後、東京の音楽学校メーザーハウスに入学。エレキベースを大野淳一氏、櫻井哲夫氏、ウッドベースを佐藤慎一氏に師事。活動の中心は、山本真央樹(Dr) 友田ジュン(Key) 北川翔也(Gt) 小栢伸五(Ba) 4人で結成された若手フュージョンバンドDEZOLVE。

2015~2016年、KIYO*SEN(大高清美、川口千里)のツアーサポート
2016年2月9日、DEZOLVE 1stAlbum「DEZOLVE」をリリース
2017年2月8日、北川翔也 1stAlbum「The New Day」に参加
2017年2月25日、DEZOLVE 2ndAlbum「SPHERE」をリリース
2018年2月7日、DEZOLVE Major1stAlbum「PORTRAY」をキングレコードからリリース
2019年2月13日にはDEZOLVE Major2ndAlbum「AREA」の発売も控えている

その他の活動は、声優・シンガーのサポート、バックバンド、スタジオワークや、ミュージカル、CM関係の作曲・編曲、神奈川TVの音楽番組にレギュラー出演など幅広く活動中。

小栢伸五さんの関連リンク集

小栢伸五オフィシャルHP
DEZOLVEオフィシャルHP

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