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長井杏奈

長井杏奈

生きるために食べるというより、食べるために生きている節があるフリーライター。好きが高じてグルメ系の記事を書くようになる。他には、ウェディング、トレンド、人事・採用系がメインジャンル。ライターの傍ら、司会・MC業も務めるパラレルワーカー。趣味は、一人旅に出ること、小説を読んだり書いたりすること、飲み会の幹事をすること。

2019年1月22日
スペシャリストたちの7つ道具

ローカーボ料理研究家 藤本なおよ / スペシャリストたちの7つ道具 vol.9

今や「ローカーボ(低糖質)」という言葉はさまざまな商品やサービスに溶け込み、美容や健康にいいということは広く知られている。今回は、そんなローカーボに特化した料理研究家である、藤本なおよ氏に話を伺った。OL勤めをしていた彼女がなぜ、現在ローカーボ料理研究家として活躍しているのか。仕事に欠かせない7つ道具と共に明らかにしていく。

料理好きなOLからローカーボ料理研究家への第一歩

藤本氏の自宅はカフェのような雰囲気だった

どんな人間にも、意外な面はある。職場では鬼と呼ばれる上司が家庭では目じりを下げて子供をあやしていたり、いつもクールな同僚が友人の結婚式で大号泣したり。他人に対して「この人って、こんな面があったんだ」と、誰しも一度は思ったことはあるだろう。

私は、藤本氏がうつ病を経験していたと聞いたとき、「まさか」と思った。ここ数年の活動を拝見する限り、いつも笑顔で楽しそうに活動している彼女がふさぎ込む姿は想像ができなかったからだ。

20代前半、OLとして経理事務に従事していた藤本氏は、残業が多く体調を崩した。うつ状態で休養をとっているさなかに出会った本が、『図解でわかる最新栄養医学 「うつ」は食べ物が原因だった!』(溝口徹著、青春社、2011年9月)だった。

「これを読んで、私もめちゃくちゃな食事をしていたなと思って、食事を見直しました。それから1,2か月で、心身ともに元気になったんです」

「これは素晴らしい」と思ったものの、そこからすぐに料理研究家の道を歩み始めたわけではない。職場に戻り、またOLを続けたのである。しかしそのときに彼女の頭にあったのは、「このままでいいのかな」という思いであった。

今でこそローカーボ料理の第一人者であるが、当時はまだ”お料理好きなOL”。もともと料理が好きで人にふるまうことはあったが、プロとしての活動はしていなかった。しかし藤本氏はこの「料理が好き」「このままでいいのかな」という二つの思いのなかで、料理教室に通い始める。

「母が料理を教えてくれていたので、教室で習ったことはなかったんです。でも通い始めたらすごく楽しくて」

その楽しさから、「いつか、自分も料理教室を開いてみたい」という思いが芽生えた。

彼女には、メンターとして頼れるコーチングのプロがいた。その人からは個人で活動する方が向いていると言われていたが、幼少期から引っ込み思案な性格だったために勇気が出なかったという。学生時代も何かを発表するときには緊張し、人前に出で何かをすることに苦手意識があった。しかし、メンターに背中を押してもらえたこともあり、元来の性格よりも「これがやりたい」という気持ちが上回った。自分で教室を開くことを決意したのだ。

「初めてのことだし、人が集まるかとか、自分にできるのかとか、不安しかなかったです。でも、食で世の中を健康にしたり、元気にしたいという思いが強かったから、踏み出せました」

ローカーボなどの健康にいい食事は、「難しそう」「美味しくなさそう」「食べるものが制限されそう」といった、我慢を強いられるイメージがある。それを払しょくしたいという気持ちもあり、料理教室の開催にこぎつけた。

実際に始めてみると、こうしたローカーボへのネガティブなイメージがくつがえすことができた。料理教室の参加者は「おいしい」と笑顔で料理を食べ、活動報告をSNSにのせると「自分も作ってみたい」というメッセージが寄せられた。この反応に、藤本氏は「一歩踏み出してよかった」と思い、ローカーボ研究家への道を突き進み始める。

地道なSNS発信とダイエット本の出版

twitterやinstagram、ブログの更新は欠かさない

藤本氏は、料理教室以外にも活動の幅を広げていった。その一つが、個人セッションだ。彼女は自分がうつを患った経験から、身体や心の不調を感じている人の相談役となった。人によって症状が違うため、一人一人に向き合い、健康・栄養面でのアドバイスを行ったのである。

ローカーボ料理研究家として活動を始めたばかりの頃は、実績もアピールポイントも少なかったが、ブログとSNSの更新だけは続けた。すると、彼女の作品を見たメディアからのオファーが少しずつ増え始めた。

ブログやSNSの更新は、今の時代、職種に関係なく求められる場面が多い。思った以上に煩雑で脱落していく人も多いが、なぜ継続できたのかそのモチベーションについて質問した。

「ブログにあげたレシピを見てメディアの方から問い合わせをいただいたり、料理教室の活動報告を見て実際に教室に来てくれる人がいたりしました。そういった反応があると、自分がのせているものを見てくれている人はいるなと思って、それがモチベーションになりました」

閲覧数の数字が増えているのを確認すると、どんどん発信してアウトプットしていきたいと感じたそうだ。

更新を続けていくとだんだんと食品メーカーや飲食店からもオファーが来るようになり、健康志向にあわせたメニューの開発にも携わるようになった。そして、ネットだけではなくリアルな世界でもアピールを始める。

「料理教室から経験を積ませてもらって、だんだん自信をつけていきました。それで、メーカーさんのセミナーに参加するようになったんです。どんなセミナーがあるか探して、参加したら名刺交換をして、こういう作品作っていますと売り込みました」

こうした行動的なアプローチと、地道なブログ・SNS発信が功を奏し、だんだんと仕事をもらえる機会が増えていったという。

独立してからは「自分を信じること」を大切にした

こうして仕事の幅を広げていった藤本氏は、ローカーボ料理研究家になるうえで、二つの目標を決めた。そのひとつが、本の出版だ。この目標は、仕事仲間でもあるウォーキングインストラクターでありモデルでもある、島田ひろみ氏がきっかけとなり実現に向かい始める。

島田氏が自身の本を出版した際、出版社から「誰かいい人はいないか」と聞かれ、藤本氏の名前を挙げた。もともと本を出したいという夢があったため、出版社の人間とつながったときにはすでに、藤本氏の手元にはすでに企画書があった。

「ずっと、こういうレシピ本を作りたいというものはありました。それにSNSにはレシピが、ブログには伝えたい思いがまとまっていたので、執筆はそれほど大変じゃなかったんです。3か月で出版まで至ったのですが、この速さは異例だと言われました」

出版のきっかけは仕事仲間の紹介だったが、本の完成までも多くの仲間の力を借りた。料理の盛り付けや写真撮影、差し込むイラストなど、これまでにお世話になった方やずっと気になっていた方に声をかけ、たくさんの協力を得ながらわきあいあいと作業が進んだそうだ。

完成した本は、『世界一おいしいダイエット』(藤本なおよ著、四六版、2018年5月)と名付けられた。出来上がりを確認した時、「まさにイメージ通りの本になった」と感じ、今でも自分の子供のようにかわいいという。読者からは「本を読んで、一か月で3kg痩せた」「とてもわかりやすかった」という反響が寄せられた。

本書のタイトルは『世界一おいしいダイエット』だが、ダイエットをしたい人だけに向けているわけではない。

「私はうつ病も経験したし、アトピーに悩んでいたし、花粉症もあったし、疲れやすい身体でした。でも、ローカーボで心身ともに元気になったから、そういう”プチ不調”を感じているにも見てほしいです」

ダイエットグルメフェスの成功

本の出版とフェスの開催という二つの目標を達成した

ローカーボ料理研究家としての二つ目の目標は、イベントを開くことであった。藤本氏の活動を知った人物が「ローカーボでフェスをやったら、面白いんじゃない?」と言ったとき、「たしかにそういうものはないし、私はもともとそれをやりたかったんだ」と改めて思い、「ダイエットグルメフェス」というイベントが動き始めたという。

ゼロからのスタートだったが、イベントのコンセプトを知り「面白そう」という人が増え、仲間が集まっていった。協賛も自分たちの足で企業訪問をして、探していった。断られることもあれば、快諾してもらえることもあり、着々と準備は進んでいった。

資金調達には、クラウドファンディングも活用した。通常クラウドファンディングでは投資の代わりに商品やサービスを提供することがほとんどだが、「イベントスタッフになれる権利」という枠を設定。すると、そこにも応募が集まり、関心の高さを感じられた。最終的には、合計80万円の資金を得たそうだ。

手探りからのスタートではあったが、ふたを開けてみれば、1万7000人もの来場者が集まり大成功を収めた。

「フェスでは、ダイエットとグルメに興味のある人にローカーボを楽しく伝えられたらと思っていました。大量の打ち合わせや企業訪問などは大変でしたが、当日はすごく楽しかったです。こういうフェスがなかなかなかったから、自分たちで作り出せて良かったなと思います」

愛犬のレモンちゃんもローカーボでダイエットに成功した

これまでの仕事でやりがいを感じた瞬間を聞くと、「色々あるけど……」と悩んだうえで、フェスで得た達成感について語った。学生時代に大学祭実行委員会をやっていたことから、それに似た形で楽しくやれたらいいなと思っていたそうだ。

「メンバーはヘロヘロになりながらも、みなさん頑張ってくださって。青春的な感じがしました(笑)。自分ひとりの力だと小さいけど、たくさんの方の力を借りて、大きなものが成し遂げられたという達成感があります」

ダイエットグルメフェスは、来年以降も継続する予定だ。今回は中野セントラルパークで開催されたが、来年は天候に左右されずに屋内外で楽しめるフェスにしたいという。将来的には全国区に広げて、地方開催も視野にあるそうだ。

また、フェスを通して若年層にも「ローカーボはおいしいもので、健康にもいい」というのが伝えたい。

「健康が大事というのはみなさんわかっていても、伝え方が硬いと楽しくないと思われてしまいます。ダイエットグルメフェスはもちろん、その他の活動を通して、”楽しくおいしく”伝えてきたいなと思っています」

藤本なおよの7つ道具

料理研究家らしい道具がそろった

仕事に欠かせない、7つ道具を伺った。やはり、料理研究家ならではのアイテムが目立つ。特に三つ目の道具・ポーチは色々なものがつまっており、「仕事の時はスムーズに進むよう段取りを意識する」という藤本氏の細やかな心遣いが伺える。

二つ目の道具・エプロンは長年使っているとのこと。愛着を持って使いこまれた歴史を感じるが、丁寧にケアされているのかきれいな色・形を保ち、藤本氏が7つ道具たちをどのように扱っているのかが想像できる。

この日はチコリコーヒーでバターコーヒーを淹れていただいた

一つ目は、バターコーヒー。これはもともとアメリカで飲まれていたものだが、数年前から日本でも流行しつつある。普通のコーヒーに、ブレンダーで撹拌したバターを入れ、MCTオイルと混ぜたものだ。

MCTオイルとは中鎖脂肪酸オイルのことで、脂肪を燃焼しやすくする効果があるという。集中力が高まるため藤本氏は毎朝飲む習慣があるそうだ。

筆者はその存在は知っていたものの「バターとコーヒーって、どうなの?」と訝しく思い飲んだことがなかった。しかし今回チャレンジさせていただくと、とてもまろやかでおいしく驚きであった。オイル感は強くないため、くどさはない。その代りコクがあり、ラテに近い飲みごたえがあった。

遠くからもパッと目を引く鮮やかなイエロー

二つ目は、エプロン。雑貨やインテリアを扱う有名なフィンランドのブランド、マリメッコのものだ。黄色は元気が出るため、色んなエプロン持っているなか、仕事の現場に行くときはこれを着用してテンションを上げるという。

調理器具だけでなく、色々なものがつまっている

三つ目は、作業用ポーチ。撮影をするときは必ず腰に巻く。中に入ったキッチンバサミは特に使い勝手がよく、常にすぐに出せるようにしている。他には、トング、へら、泡だて器などの調理器具の他、付箋などにメモをするためのボールペン、そして皿のちょっとした汚れをふくための綿棒が入っている。

手帳は毎年アナログのものを使っている

四つ目は、手帳。毎年色々なものを使うが、今年はやりたいことリストをたくさん書きたかったため、ワタナベ薫氏の「理想の自分を作る未来手帳2019」を使っている。スケジューリングの他、何をやりたいかを書きとめているそうだ。

Macに変えてから作業効率も上がった

五つ目は、パソコン。ブログやSNSの更新に利用する。執筆作業も増えたため、パソコンに向き合う時間が長くなったそうだ。本の執筆などがあると、長い場合、半日くらい使う日もあるという。

仕事にもプライベートにもiPhoneは欠かせない

六つ目は、iPhone。仕事のメールはすぐ返信したいため、わざわざパソコンを開かずiPhoneから送るという。また、SNSの更新もiPhoneがほとんど。noteはパソコンで書くが、書きたいことを思いついたらiPhoneにメモをする。また、料理の写真撮る際も活躍するそうだ。

一日出ずっぱりの日には特に活躍する

七つ目は、充電器。iPhone、パソコン、モバイルWIFIなどが充電できるタイプだ。ノートやツイッターを豆に更新していると電池の減りが気になるため、鞄に入れて常に持ち歩く必需品だという。

好きを仕事に、独立する方法

「人はいつでも変われる」と考えている

藤本氏はもともと料理が好きだったこともあり、自分のやりたいことが直接仕事につながるため、たくさんのやりがいを感じるという。自分の作った料理を「作ってみたい」「おいしそう」と言ってもらえると、やってよかったと感じるそうだ。さらに、やりがいとは反対に、仕事において大変な部分を聞いた。

「料理研究家ってもしかすると華やかなイメージがあるかもしれないですが、地味な作業が続くんです。むしろ、9割方は地味で。執筆作業もコツコツ書いているし、試作も一人で作って試食してと。最初は大変だなと思っていたんですが、誰かに喜んでもらえるためだと思えば、頑張れます」

OLから料理研究家へ転身した彼女に、起業やフリーランスを目指している人への思いを伝えてもらった。

今では会社員時代とはまったく別の分野で活躍している

「SNSやブログはすごく強いツールで、今はこれらを使って個人が輝ける時代になっていると思います。自分の作品をどんどん見せていくと、どこからか声がかかったりするはず。だからSNSはなるべく継続的にやっていった方が、色んな人から見つけられやすいと思います」

藤本氏は最近noteという、文章や写真などを手軽に投稿し、クリエイターと読者をつなげるサービスを利用し始めた。そのきっかけは、SNSではその人の裏が見えず、みんなが華やかだと思える一方、成功している人は地道な努力を続けているからだった。

「私もSNSでは、活動の部分をだけを切り取っています。だからnoteで裏側を見せていって、大変なこともあるけどこう乗り越えていけるとかを、引っ込み思案でも変われたとか、そういう部分をどんどん発信していけたらと思っています」

起業やフリーランスとして独立したい人が増える中、自分に自信が持てない人も多い。だからこそ、「私でも一歩踏み出せた」というのを伝えていきたい。一歩踏み出せば可能性が広ることがわかったから、背中を押せるようなものを作りたい。そんな信念から、藤本氏はnoteに「起業の舞台裏」をつづっている。

さらに、独立のスタートの切り方についても具体的なアドバイスがもらえた。

「有名なインフルエンサーさんでも、実は二年くらい副業していたという人もいます。私も派遣で仕事をしながら、少しずつ自分の仕事を増やしていきました。今の仕事を一気に辞めるのではなく、派遣や副業をしながら、好きなことを増やしていくというスタイルの方が精神的にもいいと思います」

藤本氏はかつて、心と身体の調子を崩した。だからこそ、今”プチ不調”に悩む人たちに、ローカーボを伝えたいという思いを強く持っている。「食事法で、心身ともに変われる」ということを伝えるため、藤本氏の活動はますます進化し続ける。

【取材後記】

取材をしていて藤本氏についてわかったことが、一つある。それは彼女が「感謝の達人」であるということだ。本の出版やフェスの成功は実際に大きな功績であるため、人によっては”天狗”になっても仕方ないかもしれない。しかし取材中、「○○さんのおかげで」「メンバーが頑張ってくれて」という言葉がかなり目立った。企業とのコラボやメディアでの露出も増えている中その謙虚さを保つ藤本氏は、ローカーボで心と身体がヘルシーなだけではなく、考え方まで洗練されている。

【藤本なおよさんの紹介】

ローカーボ料理研究家 藤本なおよ

ローカーボ料理研究家 藤本なおよ

料理教室の講師や食品メーカーのローカーボ料理監修、飲食店でのローカーボメニュー開発などに携わる。著作に、『世界一おいしいダイエット』(藤本なおよ著、四六版、2018年5月)がある。『dancyu』へのレシピ掲載の他、「日経ウーマンオンライン」や雑誌『からだにいいこと』『kiita』『veggy』、BS TBS「ストイック女子」に出演している。

藤本なおよさんの活動はこちらからもチェックできます。

藤本なおよさんプロフィール:ローカーボランド
藤本なおよさんのページ:note
Twitterアカウント:@lowcarb_land
Instagramアカウント:noyofujimoto

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長井杏奈

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生きるために食べるというより、食べるために生きている節があるフリーライター。好きが高じてグルメ系の記事を書くようになる。他には、ウェディング、トレンド、人事・採用系がメインジャンル。ライターの傍ら、司会・MC業も務めるパラレルワーカー。趣味は、一人旅に出ること、小説を読んだり書いたりすること、飲み会の幹事をすること。

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