この記事を書いたライター

下條信吾

下條信吾

1984年生まれ、長野県安曇野市出身、東京在住。ライター兼カメラマン稼業と並行してレゲエ・スカバンド「KaRaLi」「Tropicos」「The Kingstompers」などでも活動している。

2019年2月8日
ウーマンリンク

キャンドルアーティスト(Sopo Candle)大林直美/ウーマンリンク vol.5

東京の西側に位置する文教都市、国立。JR中央線の国立駅から歩いて5分の小さなビルの3階に「Sopo Candle(ソポキャンドル)」はひっそりと佇む。ここはキャンドルアーティストの大林直美さんが2018年の1月にオープンしたキャンドル教室兼アトリエだ。

Sopo Candleの店内。キャンドル教室兼アトリエであり、同時にキャンドルや雑貨の販売も行なっている

キャンドルを始めてからわずか6年でキャンドルアーティストとして独立を果たした彼女は、一体どんな道のりを歩んできたのか。また、シングルマザーという一面も持つ彼女は、どのように仕事と子育てを両立しているのだろうか。キャンドルの火が灯るアトリエで話を伺った。

もともと独立心はなかった?自身の体質から生まれたSopo Candleの世界観

日本キャンドル協会(以下「JCA」)に所属するキャンドルアーティストとして活動しているSopo Candleの大林さん。2018年の1月に独立して自身のアトリエを構えるまでは、代官山にあるJCAのキャンドルスタジオで講師を勤めていた。当時から講師として人気があり、収入も安定していた彼女が独立に踏み切ったその裏には、周囲の期待に応えたいという彼女なりの“サービス精神”があったようだ。

Sopo Candle 大林直美さん

「2017年の夏頃、JCAの理事長から突然『そろそろ独り立ちしてみれば?』と言われたんです。独立なんて正直考えたこともなかったのでビックリしましたが、その頃、スタジオ以外でキャンドルアーティストとして頻繁に活動していた立川や国立などでもSopo Candleという名前が認知されるようになっていて、『こっちでも教室をやって欲しい』という声を聞くことが増えていました。リスクを伴うことなので、ひとり親で子どもを育てる私としては迷いましたが、色々な人に背中を押され、大好きな国立に教室兼アトリエをオープンすることに決めたんです。」

JCA理事長のお墨付きで独立を果たした大林さん。彼女が生み出すキャンドルは、洗練された技術による美しさだけでなく、草花の息遣い感じさせる独特な世界観が特徴だ。

一見キャンドルとは思えない独創的な作品たち

「Sopo Candleの作品には主に自然な素材を使っています。私自身がアレルギー体質なので、ジェルワックスなど石油系のものを使うと制作するときに体がかゆくなってしまうんですよ。和食の考え方じゃないですけど『素材の魅力を活かす』というのがSopo Candleの基本スタイル。例えば作家さんによってはロウそのものに彩色をしてカラフルな作品を生み出す人もいますが、私の場合、ロウ自体に色はつけず、白を基調にして草花などの自然なもので彩りを加えることが多いです。」

灯さずとも美しいドライフラワーがあしらわれたキャンドル

組み合わせる草花や配置など、Sopo Candleの作品には細部までこだわりが感じられる

悲しみや不安から癒された。キャンドルアーティストを志した原体験

「独立」という言葉を聞くと、苦節数年……そんな言葉を思い浮かべるが、意外にも彼女のキャンドルアーティストとしてのキャリアはそれほど長くない。2012年にJCAが認定するキャンドルインストラクターの資格を取得すると、その翌年にはキャンドルアーティストとして自分自身を売り込み、精力的に活動を始めていた。それまでは全く違う仕事をしていた彼女を急速にキャンドルの道へと導いたのは、身近な人の死の記憶と、日本を襲った大きな災害だった。

「私には兄がいたんですけど、私が18歳の時にこの世を去りました。その時から数年間、兄の仏前でろうそくを眺めて過ごす日々が続いたんです。ろうそくの火を見つめていると心が落ち着き、悲しさを少しの間だけ忘れることができました。」

揺らめくろうそくの火を眺めるひと時。無心になれる“日常の中の非日常”

「キャンドルの不思議な力を知り、社会人になってからは趣味でキャンドルを集めるようになったんです。するといつの間にか、かなりの数のコレクションが集まっていました。そんな中2011年に東日本大震災が起き、停電中の真っ暗な自宅で、ふとコレクションの全てに火を灯してみたんですよ。部屋の中で揺らめくたくさんの小さな炎がとても美しくて、不安だった心がスッと静まりました。いろいろな経験を経てキャンドルへの興味が高まったちょうどその頃、友達から『キャンドルを習いに行こう』と誘われ、初めて自分で制作に挑戦したんです。」

キャンドルを灯すことで悲しさや不安な気持ちから癒されてきた大林さん。実際に制作することで、ロウに種類があることや、選ぶロウによって火の灯り方や溶け方が違うことなど、キャンドルの奥深さにのめり込んでいった。そして、「キャンドルの魅力を多くの人に伝えたい」と考えるようになり、キャンドルアーティストの道へと向かっていったのだ。

点と点が繋がり、大林さんはキャンドルアーティストになった

シングルマザーとして。大切にしているのは毎日の息子との●●

2019年の1月でオープンから1周年を迎えたSopo Candle。仕事の主軸となるレッスンに加え、ポップアップの出店に向けた制作や新作の考案、その他、ウェブサイトの更新や経理などなど……すべてを一人で行う今、多忙を極めているという。

そんな大林さんはキャンドルアーティストであると同時に、小学校6年生の息子を持つシングルマザーでもある。限られた時間のなかで子どもと触れ合う彼女は、いつも大切にしていることがあるそうだ。

息子の話をする大林さん。表情が自然とほころぶ

どんなに忙しくても1日1回は必ず息子をハグします。おはよう・おやすみ・ただいまとか、テストで満点をとった時とか。一緒に過ごせる時間が短い分、スキンシップは欠かさないようにしています。最近はちょっと反抗期なんですけどね。それでもハグする習慣は昔からなので、息子も『はいはい。』って、諦めてるみたい(笑)」

キャンドルアーティストという特殊な仕事を持つ大林さん。そんな母のことを一人息子はどう見ているのだろうか?大林さんは頬を緩ませながらとあるエピソードを話してくれた。

「直接本人(息子)に聞くと興味がないような口ぶりですけど、クラスメイトのお母さんの情報によると『うちのお母さんはキャンドルアーティストなんだよ』ってクラスで自慢しているみたいです(笑)以前小学校のイベントでキャンドルレッスンをした時もなんだか誇らしげにしていたので、親としてはすごく安心しましたね。普段は寂しい思いをさせてるかもしれないけど、私が選んだ仕事を受け入れてくれてるんだなって。」

「アーティスト」という職業で仕事のクオリティを保つために

大林さんのようにレッスンを行うキャンドルアーティストにとって、コミュニケーション能力や社会性はとても重要。同時に、作品の考案や制作をする際は感性や集中力が物を言う。日々の仕事のクオリティを保つために、大林さんは自分自身の“心身のバランス”を常に意識しているそうだ。

制作中は孤独と向き合い、キャンドルと向き合う大林さん。「集中力はかなり高いと思う」と自己分析

「作品を作るときはアトリエにこもって音楽やラジオを消し、無音の状態にして集中力を高めます。キャンドル制作は自分自身と向き合う作業。例えば息子や家庭のことで心配事があったり、体調が悪かったりすると作品が作れなくなってしまいます。だからこそ、プライベートではメンタルと体調の管理にすごく気を付けています。職業病なのか、もともとの性格なのかわかりませんが、ちょっとやそっとの不安な気持ちなら自分でコントロールして忘れられるんですよ(笑)」

「基本的にはいつも仕事を楽しんでいます」と語る大林さん。力強い瞳で未来をまっすぐと見つめる

キャンドルアーティストとして独り立ちをして2年目に入った大林さん。最後に今後の展望を聞いてみた。

「去年は立ち上げたばかりのアトリエを運営していくためにとにかくいっぱいいっぱいでした。今後はアシスタントをつけて生産性を上げながら、地域でキャンドルイベントを企画したり、周囲との関わりを大切にしていきたいです。それから、もう少し心と時間に余裕をもち、息子と過ごせる時間を長くつくりたいです。」

まとめ

【取材後記】

大切な人の死や震災を経験し、導かれるかようにキャンドルアーティストを志した大林さん。“アーティストでありシングルマザー”という事前情報から「大変ですね」「すごいですね」「かっこいいですね」……そんな言葉を用意していきましたが、お会いしてみると気負いのないフラットな佇まいと好奇心に満ち溢れた少女のような瞳に面食らってしまいました。その不思議な存在感はまさにキャンドルの灯りのよう。取材中もその場の雰囲気を明るく照らしてくれました。

【大林直美さんのご紹介】

大林さん、素敵なお話をありがとうございました!

東京の西側、立川・国立を拠点に活動しているキャンドル作家。 国立市にある日本キャンドル協会認定校。イベントでのキャンドルナイトの企画や、各地で様々なワークショップを開催。 普段の暮らしの中の道具として気軽に使えるキャンドルを製作している。

【Sopo Candleのリンク集】

Sopo Candle ホームページ
Sopo Candle Instaglam(@sopo.candle

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1984年生まれ、長野県安曇野市出身、東京在住。ライター兼カメラマン稼業と並行してレゲエ・スカバンド「KaRaLi」「Tropicos」「The Kingstompers」などでも活動している。

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