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長井杏奈

長井杏奈

生きるために食べるというより、食べるために生きている節があるフリーライター。好きが高じてグルメ系の記事を書くようになる。他には、ウェディング、トレンド、人事・採用系がメインジャンル。ライターの傍ら、司会・MC業も務めるパラレルワーカー。趣味は、一人旅に出ること、小説を読んだり書いたりすること、飲み会の幹事をすること。

2019年4月7日
ミレニアルズワーク〜未来と直面する世代のワークスタイル

書道家 万美/書道とHIPHOPカルチャーを融合し、新しいカルチャーを生み出すアーティストの思いとは

書道の楽しみ方は、「作品を書くこと」や「書かれた作品を観ること」だと考える人も多いだろう。しかしそんな固定概念にとらわれず新しい風を吹き込む書道家がいる。それが、万美氏だ。いったいいつから筆をとり、何がきっかけで「Calligraf2ity」という新しいカルチャーを生み出したのか。

書道家への道。幼き頃から抱いていたアーティストへの思い

万美氏の作品は、飾られる前から強い存在感を感じる

幼稚園の頃、折り紙を折る万美氏の周りには人が集まった。一体どんな素敵なものが生まれるのかと、同級生たちは興味津々だった。小学校に入ると、折り紙は落書きに変わる。しかし、彼女の周りに人が集まることに変わりはなかった。

そして万美氏が小学校3年生の頃、国語の授業で習字の時間が設けられる。これが当時9歳だった彼女と、書の出会いであった。

「ジャンルは決めていませんでしたが、幼稚園の頃から将来はアーティストとして活躍したいと思っていました」

パフォーマンスに力強さはあるが、作品に粗さはなく丁寧だ

こう語ってくれた彼女だが、書道の授業が始まってすぐ、書道家を目指したわけではないという。高校生の頃は、絵を描きたいと考えていた。

しかし、ある人の一言で方向性が変わる。当時の担任の先生に絵描きになりたいと話すと、「あなたは、絵よりも書道の方が得意でしょう」と言われた。それがきっかけとなり、書道家としての道を進み始める。

書道とHIPHOPカルチャーの融合。Calligraf2ityの誕生

古民家をリノベした宿・里山十帖に良く似合う

彼女の作品の大きな特徴といえば、「Calligraf2ity」だ。

2は、ひぃふぅみぃよぉ〜…と数える日本の文化

そして、書道 (Calligraphy) とグラフィティ (Graffiti) “2”つのカルチャーが融合した(2)世代の伝統。という意味を込めてのCalligraf2ity。

この新しい発想が生まれたのは、彼女が昔からHIPHOPを好んで聴いていたことがきっかけであった。

「よくHIPHOPを聴いていたんですが、歌詞カードにグラフィティの写真が入っていたんです。これはなんだろう、“HIPHOPバージョンの書道”なのかなと思いました」

書道もグラフィティも、子どもの頃から親しんでいたカルチャーだった

そんな思いを抱いていた中学校時代、書道教室に通う道すがら、生のグラフィティを見た。今にもつぶれそうなアパートの壁に、それは描いてあった。

「グラフィティを見て、これはいつもCDの歌詞カードで見ている“HIPHOPバージョンの書道”だと。そこで、これはなんという名前なのかと思って調べました」

そして初めて、グラフィティという言葉と出会った。中学時代のこの出来事がきっかけで、彼女は20歳の頃から「書道とグラフィティを組み合わせる」ことを始めた。現在、彼女の作品を観た者は、このある意味異色とも思える2つの融合に感動する。しかし、自身の思いは「融合」とは少し違うようだ。

「よくグラフィティと書道が融合したと言われますが、自分自身ではまだ融合していると思っていません。融合したというよりも、どちらの文化も尊敬しているんです。だから、グラフィティの界隈で、書道を表現することが楽しい」

融合というよりも、二つのカルチャーの中で書道をしている。そんなスタンスで作品を生み出している。

ただ書くのではない。書道家万美の「パフォーマー」としての姿

仕事で大切なのは、集中力を持って向かい合うこと

これまで長い間、書道と言えば「書いたものを見せる」という文化であった。そのため、書いている最中の姿は、本人にしかわからなかった。

しかし彼女の場合、作品を書くところをパフォーマンスとして観客に披露することが最大の楽しみだという。

作品を書いている姿を見てもらって、その時の勢いや、書にかける想いを見てもらえることが喜びに繋がります

長く美しい黒髪を揺らし、着物姿で作品を生み出す万美氏に、パフォーマンス中はどんなことを考えているのかを質問した。心にあふれるパッションを外に出すことを意識しているのか、ハネや止めといった書道のテクニカルな部分を重視しているのだろうか。

「両方です。具体的に言うと、作品によって違います。パッションでいこうと思ったテーマの時はパッションのまま書くし、テクニカルでいこうと思ったときはそこに集中しています」

何を書くか、どんな仕事として書くか、作りたい作品の内容によって、どちらを重視するかが変わるという。どちらのパターンでも、彼女が大切にしているのは「手を抜かない」ことだ。

「作品が人にどう見られるかということを、常に思っています。これが真っ先に考えることです」

同じ言葉を書いても、一枚として同じ作品はない

自分の作る作品とそれを飾る空間、もちろんどちらも完璧なことが理想だ。しかしそうではない場合もある。そんな時、文字の出来が90点でも、空間としてかっこよさがあればまだ納得できる。

反対に、文字は最高の出来栄えな中、空間に納得いかない方が避けたいという。パフォーマンスや作品をきれいに見せることが極めて重要だ。

人に見てもらうことが仕事であるため、書道を始めたころと比べると、つらさが全くないわけではない。しかし集中力を持って、いい作品を書き上げるために、真摯に向かい合う。

プロとして活躍する彼女だからこそ、大切にしているものがある。

「人に喜んでもらえることを大切にしています。自分だけが満足して人を楽しませられないのは良くない」

今回の取材は、株式会社自遊人が運営する宿、里山十帖にて行われた。この日は雪中茶会というイベントが催され、「古き文化を継承し、新たな文化を醸す」というテーマのもと、万美氏含む三名のゲストが招待されていた。

参加者たちを魅了したパフォーマンス

雪中茶会の夜、万美氏茶道家の松村宗亮氏ともにパフォーマンスを行った。松村氏がお茶をたて、万美氏が雪に直接文字を書いたのだ。彼女はもともと、雪に直接文字を書きたいと思っていたという。その夢を今回叶えることができたのだ。

書道とHIPHOPという二つのカルチャーを組み合わせ、人の心を動かす作品を作る万美氏。彼女の作品が、そしてパフォーマンスが、今後どのように展開していくのか。雪中茶会でのイベントのように、きっと私たちの想像を超え続けるのだろう。

取材後記

雪中茶会のパフォーマンスの前に「いい意味で物議をかもしたい」と話していた。一体どんな内容なのかと楽しみにしていたが、想像をはるかに超え、激しく、荘厳で、凛とした強さと、しなやかさのあるものであった。

松明の炎がパチパチと木を弾く音だけが聞こえる雪の中で、ゆらゆらと揺れるように動く万美氏の腕は、どこか幻想的な美があった。

その場の雰囲気をすべて持っていくような、強い個性と存在感。そこから生まれる文字は、会場となった南魚沼の自然と似たような、畏敬の念を持たせる何かがあった。

万美さんのご紹介

山口県下関市出身。高校生の頃から書道家を志す。HIPHOPカルチャーであるグラフィティと、日本の伝統である書道を組み合わせた、Calligraf2ityを確立した。LUXの全国テレビCM出演、松竹大歌舞伎 パフォーマンス出演(パリ Palais de Chaillot)、LEXUSにて パフォーマンス出演、作品提供など活躍している。

【万美さんのリンク集】

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Calligrapher MAMI Link

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