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金井 幸男

金井 幸男

大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

2019年8月22日
スペシャリストたちの7つ道具

ドローンパイロット 中村聡志/笑顔と友達の輪で遊びと仕事を融合

ドローンパイロット中村聡志(サーフィン空撮)

上空から俯瞰した、迫力あるムービーを撮影するのに欠かせないドローン。もともとは軍事用に開発されたのだが、近年では家電量販店やECショップでたやすく入手可能に。一般ユーザーに浸透した結果、ドローンを自在に操り、求められる映像を実現させる「ドローンパイロット」が注目されている。

サーフ系ドローン撮影の第一人者である中村聡志氏は、空間把握能力に優れ、ダイナミックな撮影を得意とする人気パイロットだ。どのようなキャリアを歩んで現在のポジションになったのか。どんな道具を使っているのか。東京オリンピックでサーフィンが公式種目となり、より脚光を浴びる「ドローンパイロット」について、愛用する7つ道具とともに教えてもらった。

中村氏を知るには、まずは作品を見てもらうのが早いだろう。サーフィンに興味がある人たち以外も魅了し、中村氏の名を知らしめたYouTub映像がこちら。

高校卒業直後に後先考えずバリ島へ

近くの海岸ではサーフィンの大会が。多くの選手が中村氏と親しげに挨拶を交わしていた。

愛知県豊橋市に生まれた中村氏は、幼い頃から自然の中で遊ぶのが常だった。

「海、山、川、相手をしてくれる自然にはこと欠きませんでした。でも、友達は多くなかったですね。遊び方が過激過ぎてついて来てくれないんです。ハチをやっつけに行ったり、みんなが乗っているゴムボートの空気をいきなり抜いたり(笑)」

中高生になっても遊び相手は自然たち。周りが就職や進学に直面し悩んでいる時期でも、ひたすらに面白いことだけを探していた

高校3年のとき、留学している弟に会うためニュージーランドに行ったんです。キレイな海に衝撃を受けました。しかも、朝5時から夜10時まで明るい気候。一日中遊べるのが嬉しくて。そして、サーフィンを覚えて帰国しました」

ニュージーランドでサーフィンの魅力にとりつかれ、聖地バリ島に憧れを抱いた。

なんて世界は知らない場所だらけで楽しいのだろう。中村少年はもっといろんな世界を見たいと渇望するように。勉強は一切せず、アルバイトに没頭。雑誌で見かけた、美しいバリ島の夕日に強く憧れた

「就職や進学はまったく考えず、高校卒業直後の4月1日にはバリ島にいました。バイト代が30万円程度貯まっていたので、それを使って。ご飯については全然考えていなかったですね。ただ思い切り遊ぼうってだけ」

笑顔を武器にひたすら遊ぶ日々

初めはバリ島の海が目的であったが、住人のフレンドリーさにも惚れ込んだ。

以来、生活拠点をバリ島に移す。

「そのまま、俗にいう”仕事”をせずに暮らしてきました。バリは誰でも個人で生きていける社会。日本の価値観ではお金や企業勤めがマストでしょうが、向こうでは違うんです。誰かに喜ばれさえすれば、何かしらご飯が食べられる。不思議に思うかもしれませんが、そんな世界もあるんです」

移住後言葉の壁はあった。「でも、言語より笑顔の方が大切なんです」

中村氏が昔から意識していることが一つある。それは笑顔。

「自分が笑顔でいれば、相手もしかめ面ではいられない。無理せずとも自然と良い関係に」

バリでは興味が生まれたらすぐチャレンジし、新しい遊びの発掘に全力を注いだ。楽しい発見は、周囲の人たちと積極的にシェアを。狙ったわけではないのに、時が経つほど友達が増えていった。

「僕が新鮮に思うなら、ほかの人たちも同じ。遊びを通じて輪が広がりました。その輪が例えば1000人になっていれば、そのうち一人くらいは『今日は楽しかった。ついでにご飯食べにおいで』って言ってくれるものです」

新しいおもちゃとしてドローンに出会う

SNSにドローンで撮影したサーフィン動画をアップすると、想像以上の反響があった。

特に”仕事”を経験せずに35歳になった頃、中村さんは気付いた。

「仕事しなくても食べていけている」

友人に頼まれて日本人をアテンドしたら、10万円の謝礼が出たことはあったが、基本的に現金収入は珍しかった。

「後からテレビ局関係者だと知りました。でも、ラッキーはそうあるものではなく」

収入はなくとも、遊びのネタと時間には困らなかった。数年前に見つけた新しいアクティビティがドローン。海岸に集まるサーファーたちを撮影し、SNSにアップすると瞬く間に視聴者が増え、たくさんの”いいね”が。いつの間にか、エクストリームスポーツやサーフィン大会の撮影依頼が来るようになった。しかし、大抵は無償で請けるようにしているそう。

「所属先から契約を切られたサッカー選手のPVを撮ったことも。すると、タイのチームからオファーがあり、無事プレイヤーに返り咲き。とても喜んでくれましたよ。それだけで満足です」

ドローン活動に関しては「お金を取らない」「誰でも」「感動」この3つをキーに行動しているという。先日はYouTube動画をテレビ局からのオーダーで提供した。もちろん無償で。

「僕は何をしても生きていける。だから、わざわざビジネスにしようとは思いません。ドローンで食べたい人が職業にすれば良いでしょう。僕にとってドローンは楽しい遊びの1つ。だからみんなと共有して楽しむ方が良いんです」

気になる収入だが、最低限はホテルウエディングの撮影や、企業から依頼されて行うアドバイザーやコーディネーターなどの業務で確保しているという。

「海の撮影はドローンにとって過酷。丁寧に手入れしても年に10台は壊れてしまいます。その補填や移動費用に必要なため、残ることはないんですけど(笑)」

ミニマリストな中村氏、お金では得られない楽しみや人生の価値を得ているようだ

遊び道具であり、世界中の人と繋がる撮影に欠かせない7つの愛用品たち

あまり買い替えず、気に入ったものを長く使うそう。

ドローン撮影時のパートナーたちは、ネットオークション利用やもらい物が多く、意外にもローコスト。ドローンだけは同じモデルを複数所有し、反応や調子が良くなければ現場で交換している。

レノボのノートPC

パソコンには特にこだわらないが、編集ソフトは使い慣れているものを。

「動画編集に使用しているのがレノボのノートPC。ネットオークションでリーズナブルに落札できました。ソフトは主にエディウスを使っています」

タオル

手ぬぐい代わりに愛用。夏は常に携帯する。

「夏の海岸で撮影するには、タオルも絶対欠かせません。自分だけでなくディスプレイが汚れた時だって役立ちます。ふわふわのパイル地で少し大きめが理想です」

ドローン:DJIのPhantom 4 Pro V2.0

黒いモデルを愛用するパイロットが多いので、視認性の高いホワイトを選ぶ。

ドローンのシェア率トップを誇るDJI製。「友人が僕をイラストにして描き入れてくれました。おかげで複数のドローンが飛んでいても、すぐ自分の機がわかるように」

プロポ

ドローンの視界を映し出すモニターを見ながらコントロール。

コントロールするプロポは本体付属のものを。モニターはデフォルトで付いてくるアンドロイドを使っている。

シャワーサンダル

同じタイプを10年以上履いているほどのお気に入り。

「ここ12年、楽で通気性も良い便所サンダルしか履いていません。インドネシアでは懐かしいと言われ、日本人にはウケる。覚えてもらうのにちょうど良いんです」

マジックシーウィード

プロサーファーも利用している人気のサイトだ。

世界中の波や天気が分かるサイト、”マジックシーウィード”はかなり重要な存在。「波の状況を見て海外に出陣。常に5カ国をチェックできるようにしています」

日産のセレナ

車内で寝泊まりするため、大きなワゴンタイプが便利だそう。

日本では足であり宿にもなるという愛車。「兄に譲ってもらったので、年式とか細かいデータはわかりません(笑)。でも、大きくて荷物がたっぷり入る。頼れる存在です」

1億円稼ぐ人より1億人から愛される人に

ドローン教室も開催。初心者でも一から優しくレクチャーしてくれる。

自分が持っている技術や知識も惜しまず分ける。目指しているのはお金じゃないからだ。人から無料でもらったものは、次の人にもタダで与えるはず。そうやって、広がっていくのが理想なんだとか。

1億円稼ぐ人と1億人のファンがいる人。僕は後者になりたい。とても難しいのはわかっています。でも、オリンピック関連だけで僕の動画は世界中から何千万という視聴がある。決して果たせないことではないなと、ワクワクします」

ドローンの卓越した操縦術、センスはあくまで遊んでいるうちに習得。好きだから、楽しいから上手くなったというわけだ。なかでもお気に入りなのが次の作品だという。

「もし学びたいのなら僕のYouTubeチャンネル、satoshi baliでビデオSALONと付いたタイトルをチェック。テクニック集なので参考になると思います。また、ドローンパイロットで一番大事なのは臆病になること。ドローンの事故は大半が人為的ミス。安全に対して敏感になるのを忘れないでください。あとは、電源を入れるか、入れないかだけです」

取材後記

取材をした鵠沼海岸近くではサーフィンの大会が開催されており、世界中からトップクラスのサーファーが集まっていた。そのため、多くの選手が取材現場を訪れ、その度に中村さんは笑顔で応答。同時にドローン講習も行う慌ただしい環境だったが、彼は常におおらかで優しく、スムーズにインタビューは進んだ。「自分が親切にすれば、他の人も親切になる」。そう信じて活動する中村さん。作品だけでなく、人柄まで愛される理由が誰でも理解できるはず。

中村聡志さんの紹介


中村聡志/ドローンパイロット
1979年12月愛知県豊橋市出身。優秀な空間把握能力と予測力を生かした、立体的でダイナミックな映像を撮影できるパイロットとして人気に。YouTubeでは関連動画の総再生数200万再生を誇る。

中村聡志さんのリンク集

YouTube:公式チャンネル
Instagram:公式アカウント

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金井 幸男

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大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

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