この記事を書いたライター

金井 幸男

金井 幸男

大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

2019年12月5日
ミレニアルズワーク〜未来と直面する世代のワークスタイル

エンジニア 佐藤翔野(TRI-AD 所属 )/愛車とつながる最新の自動運転テクノロジーで移動をもっとおもしろく

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

いま、世界中で自動運転車の開発競争が繰り広げられている。フォルクスワーゲンやゼネラルモーターズ、ダイムラー、BMWなどの大手自動車メーカーは同業他社との提携により開発を加速し、さらにIT企業であるGoogleやテスラといった新興勢もソフトウェアテクノロジーを武器に急スピードで成長している。

しかし、その中心に日本企業の名前を聞くことはまだ多くない。日本企業の中でも自動運転車を積極的に進めているのがトヨタグループだ。シリコンバレーを拠点に自動運転、AI、ロボティクスなどの先端研究を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を2016年に設立。そして昨年、東京・日本橋にトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(以下、TRI-AD)を新たに開設した。

そこでエンジニアとして働いている佐藤翔野(しょうや)氏。「人とクルマはお互いが支え合う親密なパートナー」と考えるTRI-ADにおいて、この考えを実現するための要とも言える「ドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリングシステム」の開発に取り組んでいる。この運転者と同乗者の状態を常にモニタリングし、最適な運転体験を提供する超先進的テクノロジーをつくり出す側の人間として、自動運転車というモビリティの新たなステージで彼はどう仕事と向き合っているのだろう? いままでを振り返りつつ教えてもらった。

CMで見たことがある人もいるかと思うが、まずはTRI-ADが掲げる理念や開発中の自動運転についてよくわかるYoutube映像をご覧いただこう。

公民館のPCでブラウザゲームをプログラミングした少年時代

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

テクノロジーに作る側として触れるようになったのはブログから。

「子供の頃からモノ作りが好きでした。夏休みの自由課題は、もっぱら父との日曜大工でした」と話す佐藤氏。テクノロジーへの取り組みを始めたのは中学生になってから。楽天ブログがブームの兆しを見せていた頃だった。

「テニス部のメンバーとブログをとおしてやり取りするようになり、ほどなくしてHTMLでWEBサイト作りをするようになりました」

ブログでテクノロジーの初歩を学んだ彼。その後、夢中になったのがブラウザゲームだった。

「フリーゲームのスクリプトが公開されていて、改造を楽しんでいました。そして、自分で構築したサーバーにアップ。友人たちに遊んでもらい、感想を聞くのがさらに嬉しくて」

見よう見まねのソースコード改造で、みんなに喜んでもらえた! その作る楽しさ、充実感がたまらなかった。驚いたことに、ちょっとしたプログラミングは公民館にある共用のパソコンで行なっていたというのだ。

「自分の家に(パソコンが)なかったんです。でも、公民館のパソコンを独り占めしてしまっていたんでしょうね。学校に連絡が入ったのか、部活の先生にこっぴどく叱られ、そのまま公民館は卒業しました」

高校時代に携帯電話を手に入れ、WEBサイト運営も実践

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

高校生にしてプログラミングを習得し、携帯電話でサイトを構築した

そして、携帯電話(フィーチャー・フォン)を手に入れた高校時代。パケット通信料が定額のパケ・ホーダイを活用し、ゲームの攻略サイトを運営した。

「アクセスランキング上位常連の人気サイトでした。携帯電話の小さいキーを使ってカチカチとプログラミング。携帯電話の液晶画面サイズくらいなら自分で構成できたんです」

ディテールまで凝っていたため、別の人から作り方を教えて欲しいと連絡が来たことも。

「それでもマニュアルは親に買ってもらった分厚い教本とウェブでの検索だけ。コンピューターを体系的に学ぶのは大学に入ってからになります」

大学入学時はIT業界への道を念頭に活動

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

東京・日本橋にあるオフィスはエンジニアにとって恵まれた環境だそう

中学、高校時代に自分でIT技術に触れる楽しさを知った佐藤氏は、当時からIT業界以外で働くことは考えていなかったという。

大学に入って体系的にITを勉強し始めてからもその気持ちは変わらず、アプリを作って友人と遊んだり、自作したツールでサークルに貢献したりすることが何よりの楽しみだった。

IT単体ではなく、ITを何かと組み合わせ、メディアミックスさせることで可能性が無限大になることにワクワクし、夢を感じるようになりました」

大学院時代にハッカソンに参加したトヨタ自動車に入社

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

トヨタ自動車主催のハッカソンでハードウェアの重要性も認識

修士課程修了後はトヨタ自動車へ就職。学生時代に参加した、同社主催のハッカソン参加が影響しているという。

「本格的なアプリケーションの開発にチャレンジをしようと思いました。それまでソフトウェアしか作ってこなかったので、トヨタ自動車というハードウェアの世界に触れられたのはいい刺激でした。そして、ハードウェアとソフトウェアの連携がいかに大切かも理解しました。自然とトヨタ自動車で働いてみたいと思うようになったのです。」

2016年4月にトヨタ自動車へ入社したのち、5か月間の研修を経てTRI-ADの前身となる部署で人工知能関連の研究に取り組んだ。その後、勤務地は変わりながらも、同じ部署で物体認識の研究開発やリサーチに携わった。続いて、現在も担当する安全運転のためのコア技術のひとつであり、車内に搭載されたカメラによって運転者と同乗者の状態をチェックする、ドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリングシステムを開発するチームに着任した。そして、2018年TRI-ADに出向。

「ラッキーでしたね。僕は仲間を乗せてドライブするのが学生時代から大好き。閉ざされた空間でみんなと過ごしながら移動できるって、素敵じゃないですか。だから、車の空間作りがしたかったんです」

車内カメラを用いる現在の研究は、佐藤氏の希望にジャストなのだとか。

母親の介護疲れを自動運転の技術で軽減したい

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

1周200mあるTRI-ADのオフィス内では、トヨタ自動車が開発するWinglet(ウィングレット)に乗って移動する

自動運転は以前から興味があり、実現してほしいと願っていた技術。入社後、その思いを一層強める出来事が。

「祖母が倒れ、母が介護施設に通うようになりました。毎日、車を運転して。しんどいですよね。自動運転があればラクなのに。せめて、自分が開発に携わるシステムが完成すれば、事故や負担が減り、家族みんながハッピーになれるのに

新しい技術の必要性とともに、自分が研究していることの価値、重要性も確信できた。

自動車の可能性は無限大。もっと快適になるはず

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

国土が狭い日本。走行テストがしにくい分、シミュレーターによる丁寧な検証が重要に

「車は生活に欠かせません。プラスα次第でもっと人々を豊かにしてくれます。無限の可能性があるんです」

このプラスαのひとつが自動運転であり、運転者を見守るドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリングシステムだ。

「ともにソフトウェア中心のテクノロジーですが、最終的にはハードウェアである車の品質も重要になります。トヨタ自動車では世界最高レベルのハードウェアが作られ、TRI-ADでは優秀な人材を世界中から集めて、ソフトウェア開発だけに集中できる基盤まで整えてあります。必ず納得のいくものを作ってみせます」

2020年の自動運転お披露目が、いまの目標

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

TRI-ADではスクラムでのアジャイル開発が基本。前向きな社風も武器なのだとか

来年の2020年は、TRI-ADで開発している技術が市場に投入される。

「いままでなかった、人がコントロールしないクルマ……。試してみたいけど怖い。当然の感情です。でも、僕たちが作った車内カメラで、ちゃんと見ていますからご安心を」

まずはドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリングシステムの精度を高め、実用に耐え得るレベルまで引き上げるのが目の前のミッション。

「安全に関わる研究ですから、とてもシビアで大変です。だけど、全社的に進めるスクラム開発でチームの面々と一緒に進めていくのは楽しいし、やりがいも十分。いずれ訪れる自動運転誕生の一部に自分が携わっていると思うと光栄ですよ」

子供の頃からプログラミングに夢中だった佐藤氏。大学でより深くプログラムについて学んだ彼は、やがてクルマを好きになり、もっと楽しく便利な乗り物にしたいと願うようになった。

そしていま、自身の知識と能力が存分に発揮でき、思いも叶えられる会社に勤務。最先端の技術である自動運転を実現するうえで、重要なシステムを研究開発している。彼の開発したテクノロジーが世界標準になる日も近いかもしれない。

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取材後記

佐藤氏が研究開発しているのは、眠そうなら声をかけて休憩を勧めたり、ブレーキングが遅いようなら警告したり、車が乗る人を気遣うシステム。途方もなく未来の話のようだが、無人自動運転が遠くない将来に実現する事実を考えれば、決して夢物語ではない。

「先進的って、難しいことじゃないと思います。僕が子供の頃に習ってもいないプログラミングで友達を喜ばせたように、誰かに楽しんで欲しい、ラクになってもらいたいという意識があれば、スムーズに理解し、実現するものではないでしょうか」と佐藤氏。

遠く福岡に住む母の苦労に、胸を痛めた彼が携わるハイテク自動車。意外と早く身近な存在になるのかも。

佐藤翔野さんのご紹介

インタビュー:佐藤翔野(TRI-AD)

佐藤翔野/エンジニア
学生時代にソーシャルネットワークの解析手法の研究を主に行い、トヨタ自動車入社直後はAIや物体認識系の研究開発に携わった。その後、ドライバー状態推定のアルゴリズム開発チームに配属された。2018年より組織ごとTRI-ADに出向。現在はデータマネジメントチームにて、データ収集やデータパイプライン開発に従事し、ドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリングシステムの開発に取り組んでいる。

佐藤翔野さんのリンク集

公式HP:TRI-AD
関連サイト:トヨタイムズ

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金井 幸男

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大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーの編集・ライターに。ファッション関係を中心にペットやグルメ、スポーツ、美容など、幅広いジャンルで活動する。趣味は映画鑑賞とテレビゲームだが、ともに娘が生まれて以来まともに絡めていない。ダイエットのため、深夜に代々木周辺を徘徊中。

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