この記事を書いたライター

伊藤璃帆子

伊藤璃帆子

芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

2019年9月6日

芸術を仕事に!学芸員(キュレーター)だけじゃない。美術館で働く仕事とは?

アート

「美術家になりたい」「音楽家になりたい」

堅実な人生を望む傾向が強いZ世代の中にも、不安定な職業の代表格ともいえる芸術家への道を過去に思い描いていた人も少なからずいるでしょう。しかし、大学卒業を目前にし、就職活動に勤しむ仲間たちに流されるように、一般企業への就職を選ぶ人が大半です。

進路を選ぶときは、誰もが不安になるもの。なりたい職業に夢馳せるより、安定を得ようとすることは、賢明な選択のように思われます。しかし、そうして自分の本心と向き合わず、合わない職場で後から思わぬ苦労をすることもあるでしょう。

「本当は美術の仕事がしたかった」というあなたに向けて、これから一本のドキュメンタリー映画を紹介したいと思います。アーティストにはなれないけれど、芸術を身近に感じながら仕事をしたいと望むのであれば必見です。

美術館での仕事の種類

アート

美術館での仕事って、意外とたくさんの職種があります

“職員1200のうち
警備375人
修復部54人
古代エジプト
オリエント ギリシア
ローマ各部
装飾品 彫刻 絵画
職人105人 設営 電気 画家 額装製造
整備士 鉛菅工
修復家 物理・科学者
音響学者 調理人
清掃人、写真家、医師、消防士21名、庭師
所蔵品30万点
地下通路15キロ
職員2000人
展示面積3万平方メートル
窓ガラス2400枚“

これはある映画のクレジットタイトルの一部です。さて、これはどんな場所を示しているか、わかりますか?

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あのモナリザも展示されているのがルーブル美術館

答えは、フランス・パリにある『ルーブル美術館』。世界最大の美術館ですから、誰もが一度は耳にしたことがありますよね。

先ほどの問題は、1990年のルーブル美術館を描いた『パリ・ルーブル美術館の秘密』(1990)という映画のクレジットから抜粋したもの。この映画は、ルーブル美術館で働くさまざまな人たちの日常をリアルに記録した作品です。

私たち日本人は、美術館で働く人=学芸員と考えがちですが、美術品に直に触れる仕事はもちろんのこと、年中訪れる多様な来客に対応できるよう、美術館には様々な職業の人が勤務しています

そのため、多くの美術館・博物館では、展示スペースよりもバックヤードの方が広いということがよくあるのです。

美術界で働くことを『美大や芸大を出自としているか』あるいは『専門技能を有しているか』で捉えてしまい、自分には遠い世界であると諦めている場合は、美術館での仕事の多様さを知ることで、新たな可能性が見出せるかもしれません。

日本と海外の美術館職員の違い

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美術館で働いている人って、どんな人?

美術館の仕事といっても、海外と日本の美術館では少し違うということについて触れておきましょう。

先にご紹介した『パリ・ルーブル美術館の秘密』では、1,200名の従業員(1990年当時)の中で、学芸員や修復家、画家、インストーラー(絵画などを運搬・設置する役割)、大道具、学者など、作品そのものに触れる機会の多い職業だけでも多岐にわたることが伺えます

この映画を観ると、各業務が細分化されており、一つの職務に対する専門知識と誇りを持ちながら働く人々の姿が映し出されています。

それぞれの分野で専門の資格が必要なものもあれば、資格不問のものもあり、アーティストのための雇用作りに国が一役かっているケースもあります。

アート

海外と日本では、美術館の仕事は違うんです

かたや、日本の美術館といえば、学芸員資格保有者が採用基準の最低ライン。つまり、美大や芸大でしっかりと教養を積み、修士、博士を取得していることが当たり前という職場環境です

学芸員の資格を取る方法はいくつかありますが、取得したからといって美術館で採用されるかというと、そうではないのが落とし穴。美術館や博物館の学芸員は、毎年募集があるものではなく、とても狭き門なのです

さらに、海外の大きな美術館とは違い、国内のほとんどの学芸員は、学芸員本来の役割である展示や調査、研究だけではなく、事務その他の職種を兼任するケースが多々あるということを知っておくとよいでしょう。

学芸員は英語でCurator(キュレーター)といいますが、海外のキュレーターは主に展示立案を行う専門職であるのに対し、日本の学芸員は事務、雑務など幅広い業務をこなさなくてはいけない場合があるのです。

美術館職員の給料は?

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本気で美術が好きじゃないとやっていけない

美術館の顔ともいえる学芸員の職は、専門性が高いため、離職率が低く、ポストが空きづらい性質があります。また、資格保持者でも正規で雇用されることが難しいのが現状です

現在、日本で学芸員として美術館や博物館で働く人の平均月収は15〜20万円ほど。ただし、公立の施設なら、公務員扱いになるので、これより少し良い待遇を見込めます。

いずれにしても、美術が好きではない方にとっては、比較的厳しい待遇だといえるでしょう。

一日の仕事や必要なスキル、年収を知るには職業ナビ!
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穴場! 美術館で働ける外注仕事

日本の美術館職員の待遇は厳しいものですが、本当に美術が好きであればやはり憧れの職場ではありますよね。ちょっと視点を変えたところで、美術館に所属せずに働く職種があるのでご紹介しておきます。

保存修復家

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長期にわたる修行が必要!でも、絵を描く人にとっては憧れの仕事

美術品はメンテナンスが欠かせません。適宜修復を重ねながら後世へと受け継がれているわけなのですが、その大切な役割を担っているのが修復家です

修復を専門とした大学あるいは専門学校で技術を学び、一人前になるまでの下積みが必要となります。

美術館お抱えの修復家がいることは日本国内では稀で、大学などの研究機関に依頼されるなど、修復は外注となることがほとんどです。難易度は高いですが、やりがいが大きい仕事といえるでしょう。

出版社

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編集者やカメラマンとして美術館の仕事を請け負うこともできる

大きな展覧会開催時には、会場に展示された作品がまとめられた『図録』が販売されます。このような出版物は美術館内で作成するのではなく、出版社に依頼されるケースがほとんどです

美術館で図録を買ったことがある方は、奥付(著者、出版社、発行年度などが記載されるページ)を開くと、どのような出版社が美術館図録を取り扱っているのかわかるはずです。

そういった出版社のライター、編集、カメラマンであれば、美術館の展覧会図録作成に携わることができます。

一日の仕事や必要なスキル、年収を知るには職業ナビ!
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大道具

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美術館の壁を作るのも外注の場合がほとんど

美術館は、各展覧会の企画内容に沿って壁を増設したり撤去したりしているものです。そういったセットを外部で作っているのが『大道具』と呼ばれる職人の仕事

舞台美術などを専門にしている会社などがあるので調べてみると良いでしょう。

美術品運搬業

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運送業者にも美術品部門がある!

大手運送会社には美術品を専門に扱う部署があり、高級で希少価値の高い美術品を安全に運ぶプロフェッショナルがいますので、チェックしてみるのもおすすめです

トラック運転手の仕事であっても、美術品を運び入れる際に美術館のバックヤードを見られる機会があるかもしれませんよ。

一日の仕事や必要なスキル、年収を知るには職業ナビ!
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ボランティア

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休日ガイドで趣味を兼ねた社会貢献

生活があるから仕事がやめられないけれど、美術が好きという方に人気なのが、美術館のボランティアスタッフです

休日のみの美術館ガイドなど、趣味を生かしながら活動する人、それを受け入れる美術施設が増えてきています。

美術に携わり働く喜び

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自分の感性を信じるのも大切なこと

日本の高校生が美大へ進学する確率は、たったの2%といわれています。そして美大を卒業した人のほとんどが、芸術家になるわけではありません。

美術界で働くことは、一般的な企業で働くよりも不安定に思えるかもしれません。しかし、休日になると、たくさんの人々が美術館や博物館へと足を運びます。多くの人に求められ続ける職場であるともいえるのです。

芸術が好き

その気持ちは、世間に押し付けられた価値観ではなく、自分が生まれながらにして持っている感性から来るものではないでしょうか。ぜひ、その気持ちを大切にして、夢の職場への一歩を踏み出してみてください。

就職やシゴトに関するお悩みはジョイキャリアカウンセラーにご相談ください!

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芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

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