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白鳥純一

白鳥純一

行政書士、宅地建物取引士などの傍らで、細々と執筆業を続けている。インタビューや堅めのコラムが中心なのだが、なぜかメジャーリーグでの取材実績もある。これからは徐々に海外も視野に入れて活動していく予定。

2019年10月11日

サッカーと通販ビジネスの繋がりとは?ショッピング大手がサッカークラブに投資する理由

EC企業がサッカークラブのスポンサーになる理由

2019年7月、人気フリマアプリを運営する株式会社メルカリが、Jリーグの名門クラブのひとつである鹿島アントラーズの株式を、61.6%取得するというニュースが発表された。

2018年シーズン以降は、鹿島アントラーズの鎖骨スポンサーとして、年間1億5000万円の契約を結び、胸スポンサーだった株式会社LIXILに次ぐ額を投資していた同社だが、この度、さらなる巨大契約を結ぶことになった。

近年、鹿島アントラーズを事実上買収したメルカリをはじめ、ヴィッセル神戸をスポンサーする楽天や、Vファーレン長崎を支援するジャパネットたかたなど、ECサイトやショッピングビジネスに関連する企業が、スポーツ界に進出する例が増えてきている。実は、その背景にはいくつかの狙いが見られる。今回は実例をもとにご紹介したい。

 

サッカークラブのスポンサー企業1 メルカリ 名門鹿島アントラーズの知名度からブランド力向上と決済サービスの拡大を狙う

サッカー観戦するファン

メルカリが、名門鹿島アントラーズをどのように変えていくか注目だ

鹿島アントラーズの契約締結時には、「自社の経営ノウハウを生かして、鹿島アントラーズの発展に繋げる」とコメントしていたメルカリ。

メルカリが鹿島アントラーズを保有する狙いとしては、歴史のあるクラブを持つことによる自社のブランド力の向上、メルカリとスマホの決済サービス「メルペイ」の拡大を図ることなどがあるといわれている。

一方でJリーグの常勝チーム、鹿島アントラーズも近年は課題を抱えている。その一つが、スタジアムの収容率だ

現在、本拠地として使用しているカシマスタジアムの収容人数は、およそ40,000人。

その一方、平均入場者数は16,000〜20,000人程度で推移している。そのため、座席数を減らし、付加価値のある席を設けることで収益をアップさせるという施策が実際に検討されていた。

スポーツ市場で自社サービスの拡大を目指すメルカリと、サポーターにより一層楽しんでもらえるスタジアム作りを模索しながら、収益アップを目指す鹿島アントラーズ。名門クラブと新興ベンチャー企業の融合は、両者の思惑が一致した結果ともいえる。

サッカークラブのスポンサー企業2 ジャパネットたかた Vファーレン長崎の新スタジアム設立で地域活性化を目指す

長崎の街並み

ジャパネットたかたの開発が長崎の活性化をもたらす

ジャパネットたかたの創業者である高田彰社長は、赤字で存続の危機にあったVファーレン長崎を救い、2018年にはチームを初のJ1昇格へと導いた

高田社長は投資の理由について問われると、度々「地元愛」や「長崎のため」などとコメントを残しているが、その背景には将来の長崎の地域活性化を目指した動きも垣間見える。

2018年4月、長崎県長崎市幸町にある三菱重工業長崎造船所幸町工場の跡地の活用に際し、ジャパネットたかたが優先交渉権を獲得した。

長崎駅に近いこの土地は、現在、計画としては2.3万人規模のサッカー専用スタジアムをはじめ、ホテルやオフィス、さらにはタワーマンションやショッピングモールなどの設立が予定されているとのこと。

長崎新幹線の整備も進められており、完成すれば、高田社長の目指す地域活性化の促進はもちろん、通販を中心にした従来の業務展開に加え、実店舗での販路拡大、新規事業への大規模進出の可能性を探れる点などメリットも多い。

高田明社長が、Vファーレン長崎のオーナーになった背景には、総合型リゾート開発のソフトのひとつとしてサッカーが魅力的だったという点も大きい。

サッカークラブのスポンサー企業3 楽天 ヴィッセル神戸・バルセロナに投資し、ブランド力向上とECサイトの普及に努める

神戸ポートタワー

ヴィッセルが本拠地を置く神戸。この街でどのような新規ビジネスが生まれるのだろうか?

2017年には、リーガ・エスパニョーラの名門チームであるバルセロナと、4年257億円で胸スポンサーを結んだ楽天株式会社。

一方、日本においても、同社が保有するヴィッセル神戸は、ポドルスキ選手を皮切りに、イニエスタ選手、ビジャ選手などを次々と獲得。2018年シーズンは営業利益96億円で、Jリーグの市場最高利益を更新した。

楽天が国内外で、大型スポーツビジネスを進める背景には、ヨーロッパ地域を中心とする世界市場でのブランド力の向上と、楽天のサイト自体の利用普及促進があるようだ。

実際に日本国内でも、イニエスタ選手のイラストが描かれたクレジットカードを発行したり、スタジアム内でのキャッシュレス化を促進するなど、スポーツを切り口にした自社サービスの普及活動を積極的に行っている

今後、ヴィッセル神戸がアジアチャンピオンズリーグへ進出した場合には、アジアでの自社ブランドPRやシェア獲得につなげる動き、自社専用スタジアム建設に向けた議論も重ねられており、さらなる新規ビジネスが生まれる可能性を秘めている。

サッカークラブのシャツで販路拡大 スポンサー以外でもEC企業が参入 株式会社アダストリア

カラフルなTシャツ

店舗とサイト以外の販路探しに、アパレル企業も積極的

チームの保有だけが、サッカービジネスというわけではない。最近の例では、2019年8月に大手アパレルの株式会社アダストリアが、J1とJ2に所属する39クラブのコラボシャツを発売したことが記憶に新しい。

「ファッションとサッカーのコラボレーション」を実現したこの企画は、色や価格まで各チームの特色があり、細部へのこだわりが反映された作りになっている。

この企画自体は2回目だが、今年からはスタジアムでの販売も行われているとのこと。2018年3〜8月期に、およそ5億円の赤字計上が話題になったアダストリアにとっては、新規の顧客層へのアピールや、販路の拡大を目指す絶好のチャンスといえる。

なぜ企業はサッカーチームのスポンサーになるのか?

世界的に人気があるサッカーは宣伝効果も魅力的だ

サッカーのファンは全世界に35億人いるといわれ、競技別で堂々の第1位。一方、日本国内で人気が高い野球は第7位だ。

日本国内をターゲットにするならば、野球に投資をすることに魅力を感じる経営者もいるかもしれない。しかし、日本に12しかないプロ野球球団を保有するには、新規加入の預かり保証金25億円をはじめ、新規参入時だけでも総額で30億円の資金が必要なほか、オーナー会議での承認が必要になり、ハードルは高い。

その後のチーム運営も、大規模な事業展開が必要となる。2016年に25年ぶりの優勝を決めた広島東洋カープの売り上げが182億円というデータが発表されているが、選手の年俸だけでも20〜50億円ほどの支出が必要になり、企業の体力が必要とされるビジネスモデルだ。

スポーツを使ったブランディングは、日本でも徐々に浸透しつつある

一方のJリーグは、冒頭で触れた鹿島アントラーズの価格がおよそ25億円。強豪クラブでも30億円程度で推移しているケースが多い。大規模な事業展開が必要なことには変わりないが、当事者間の交渉とリーグの承認があればオーナーになれることもあり、野球よりはハードルが低いといえる。

クラブ運営によって企業資産価値を向上させたいという企業にとっては、サッカーという競技の世界的な人気も相まって、投資に適していると考える企業も多いのではないだろうか。

スポーツを用いた企業ブランディングは、一般的な企業広告よりも、消費者から友好的に受けいれられやすい傾向もあり、近年導入するケースが増えてきている。各社の思惑はさまざまだが、投資の背景には、新規の顧客層へのアプローチや新たなビジネス展開が見え隠れする

EC企業によるサッカークラブへの投資に目を向けると、その企業やクラブの未来、さらにいえば日本の将来像が垣間見えるかもしれない。ぜひこの機会に、グラウンド外の動きにも目を向けてみてはいかがだろうか?

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行政書士、宅地建物取引士などの傍らで、細々と執筆業を続けている。インタビューや堅めのコラムが中心なのだが、なぜかメジャーリーグでの取材実績もある。これからは徐々に海外も視野に入れて活動していく予定。

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