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伊藤璃帆子

伊藤璃帆子

芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

2020年6月8日

社員の幸せを考える企業はやっている。日本における「ウェルビーイング」の取り組みとは?

人生100年時代。定年の引き上げや再雇用を行う企業の増加などにより人が働く期間はどんどん長くなっています。一方で労働人口は減り続けることが予想され、企業は労働力の確保に奔走しています。そんななか、働き手の“幸せの基準”が変わってきています。「お金をたくさん稼ぐだけが幸せではない」という価値観から仕事だけでなくプライベートも大切にする働き方にシフトしてきているのです。

こうした時代の変化を受けて、近年ウェルビーイング(well-being)という概念が注目されています。今回はウェルビーイングについて紹介するとともに、社員の幸せを考える企業が取り組むべきポイントを整理していきます。

ウェルビーイングとは

社会生活は心身の健康をベースとしている

もともとウェルビーイングは医療や看護、健康領域において使われる単語でしたが、現在はビジネスの現場でも使われるようになってきています。ウェルビーイング(well-being)を直訳すると「幸福な状態」となりますが、「心身ともに健康である」という意味を含んでいる点がポイントです。社会生活とは、心身の健康がベースにあって幸福や満足を享受できるという考え方です。

ウェルビーイングにおける日本の実態

日本でも近年ようやく注目されるようになったウェルビーイングですが、国内の企業は世界各国と比較して現在どの程度の水準かご存知ですか? 2019年に経営コンサルティングファームのボストン コンサルティンググループが世界各国の「ウェルビーイング」のレベルをスコア化した独自指標「SEDA」を発表しました。SEDAは、ウェルビーイングを「経済」(所得水準・経済の安定性・雇用)、「社会への投資」(ヘルスケア・教育・インフラ)、「サステナビリティ」(平等性・シビルソサエティ・ガバナンス・環境)の10項目で定義しスコア化しています。

この結果によると、日本は143か国中17位という結果でした。全般的にウェルビーイングのレベルは比較的高い水準で年々上昇傾向にあるようですが、所得水準に対して見てみるとウェルビーイングのレベルは低いという結論が出されています。所得の多さを豊かさと仮定すれば、所得が上がれば満足度も比例して上がるはずですが、今回の結果では水準を下回る結果となっています。もちろんこれは経済面だけではなく政治や教育といったさまざまな領域が関係していますが、1日の大半の時間を費やす仕事においても今後さらなる改善が求められそうです。

健康経営との違い

健康経営とウェルビーイングの違いとは?

続いてビジネスの側面におけるウェルビーイングについて触れていきます。まず、似通った概念である健康経営とウェルビーイングとの違いを知るために、健康経営について経済産業省の解釈を紹介します。

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

つまり、健康経営は企業において働く人の健康管理に注目し施策を展開する経営方針と解釈することができます。

一方でウェルビーイングは身体的な健康だけでなく、従業員のモチベーションといった精神的な側面もカバーすることが求められるところが健康経営との違いといえそうです。

ウェルビーイングに取り組むメリット

ウェルビーイングで組織へのエンゲージメントをアップ!

次にウェルビーイングに取り組むことで得られるメリットについて整理していきます。

企業側は、ウェルビーイングに取り組んで働く環境の整備やメンタル面への支援を行うことで、従業員の働く満足度や生産性を高めることができます。結果的に組織へのエンゲージメントと社員の定着率の向上が期待できます。また新規採用も有利に進めることができるでしょう。

ウェルビーイングに取り組む企業で働く従業員は、健全な環境で働けるメリットを享受できます。ストレスを軽減しながら自分らしく働きたい人には嬉しい取り組みです。また心身ともに健全な状態でいることは心理的な安心にもつながります。パンデミックの不安がつきまとう昨今の社会情勢において、ストレスフリーで安心して働けることは重要なポイントといえるのではないでしょうか。

ウェルビーイングの取り組みで意識すべきこと

ウェルビーイングの取り組み。具体的には?

企業は具体的にどのようなポイントに意識してウェルビーイングに取り組むべきでしょうか。ここでは「身体的精神的な健康」「組織へのエンゲージメント」「モチベーション」「適正な評価」の4つの観点で整理します。

社員の身体的、精神的な健康

身体的、精神的な健康が保証されていることは社員個人の安心につながります。また、目の前の仕事に集中できる体制づくりを行うことによって、生産性も高まることが期待できます。そのための取り組みとして、職場の風通しをよくする職場意識の改善や、休みを取りやすくする仕組みの導入などが考えられます。また福利厚生でスポーツジムを利用できるようにするといった文字通り身体的な健康を補助する取り組みも有効でしょう。

組織へのエンゲージメント

組織へのエンゲージメントの向上やチームワークの強化は、働く楽しみにつながり、社員個人のモチベーションアップにつながります。こうしたチームを形成するためには管理職の意識改善や、リーダーの育成が求められます。

ただし、場合によっては利害関係などにより、チームの管理職やリーダーに話しづらいこともでてくるかもしれません。そんなときのために縦(自部門)のつながりだけでなく、横(他部門)のつながりを作っておけば、いざというときに相談したりアドバイスを貰うこともできるでしょう。こうしたチームビルディングのために、イベント開催など日頃業務で顔を合わさない人とのつながり作りを支援する企業もあります。

社員個人へのキャリア支援

キャリア支援もウェルビーイングのひとつ

働くモチベーションを高めるためには、社員一人ひとりのキャリア支援を行うことも重要です。どのようなライフスタイルを送りたいか、またキャリアを歩みたいのか、これらを適切に把握したうえでバックアップする体制を整えることが重要です。例として研修制度や資格の取得支援、部署異動といった社内公募制度を整えることが挙げられます。また生涯学習の観点から再度学校で学び直せるように支援するリカレント教育の仕組みを取り入れてみるのもいいでしょう。

適正な評価を行うための管理職への教育

社員の頑張りを適正に評価することは、組織への帰属意識を高めることにつながります。そのためには社員個人の目標設定の精度を高めることや、その目標に対する成果への適切なフィードバックを行うことが重要です。それができる管理職への教育は必要でしょう。また新入社員が適正な評価を得るためにもOJTをはじめとする育成システムを整えることも大切なポイントです。

まとめ:リモートワーク(テレワーク)時代のウェルビーングとは?

新しい働き方のなかでウェルビーイングについて考えていくことが大切

新型コロナウイルスによって私たちの生活は一変しました。仕事はあらゆる職種でオンライン化が進み、これまでとは異なる働き方が求められています。パンデミックが収束したとしても、この流れは加速していくでしょう。

これまでの職場での働き方とリモートワークの大きな違いは、働く内容は同じでも個人によって働く環境がさまざまにあることです。そのためリモートワークを円滑に進めるためには、各個人の置かれる環境に配慮する必要があります。具体的には従来のように一律のメッセージではなく、個人ごとの状況に対応したやりとりが重要になるでしょう。

それぞれの環境に配慮しない一方的なコミュニケーションが続けば、働くことへの満足度や会社への帰属意識が下がっていくことは想像に難くありません。

リモートワークにおけるウェルビーングは、これまでよりもチームメンバー一人ひとりに向き合いメンバーを信頼することが重要となっていくでしょう。企業はとくにチームのリーダーにウェルビーングを周知徹底するとともに、これまで以上に柔軟な働き方を認めていく姿勢が求められています。

出典:ボストンコンサルティンググループ 「BCG、世界各国の「ウェルビーイング」のレベルをスコア化した独自指標、「SEDA」の最新の結果を発表」

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芸術大学で美術、写真を学び、ITマーケティング会社を経て、独立。現在フリーでライター、編集、撮影、イラスト、フードスタイリングなどを手掛ける。

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