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人材業界で10年以上働いた経験を持つ、就職氷河期世代のライター。翻訳書出版の実績もある。現在の執筆テーマは、社会人のキャリアやスキルアップ、女性の生き方など。趣味は飲酒しながらの料理。

新型コロナウイルス感染症の影響によってリモートワークが定着しつつあるいま、オフィスの在り方が見直されています。
これまでは当たり前のように存在していたオフィスを、閉鎖したり縮小したりする会社も見受けられるようになりました。いくつかの事例を交えながら、これからの時代におけるオフィスの役割を考えていきたいと思います。
目次
コロナ禍で一気に進んだ「フレキシブルワーク」

自宅でのリモートワークも珍しくなくなった
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、各企業で一気にリモートワークが進みました。始業・終業時間を従業員が自由に決められるフレックス制度をあわせて導入する企業も見られ、フレキシブル(柔軟)な働き方が浸透しつつあります。
フレキシブルワークとは
働く人が自分自身で働く場所や時間を決められることをフレキシブルワークといいます。女性の社会進出の加速、育児や介護と仕事を両立する人の増加といった社会の変化により、フレキシブルワークを望む人は増えています。
また最近ではオンラインでもスムーズに会議ができるようになり、同僚と同じ場所にいなくても仕事に支障は出ません。IT技術の進展もフレキシブルワークの浸透を後押ししています。
働き方の自由度が増したことによる生活の変化

通勤時間がなくなった分、プライベートを充実させる
働く場所と時間を自分で決められるメリットは大きいものがあります。
自宅で仕事ができると、通勤時間がなくなります。その分の時間を家族と過ごす、スキルアップのための勉強をする、身体を鍛える、といった生活面を充実させることに使えるようになります。
また、育児や介護と仕事との両立もしやすくなります。筆者の知人は、勤務先の会社でリモートワークとフレックス制度が導入されたことにより、家族の介護のために東京から関西の実家へ住まいを移しました。フレックス制度を使って家族の通院にも一緒に行くことができているようです。
仕事をしながらいまの生活を充実させることができるのが、フレキシブルワークなのです。
コロナ時代、オフィススペースは削減されていく

オフィスの閉鎖や縮小が相次ぐ
フレキシブルワークが浸透し、毎日出社する必要がなくなりつつある「コロナ時代」において、オフィスの在り方を見直す会社が出てきています。どのような変化が起きているのか、事例も交えながらご紹介します。
固定席をなくし、フリーアドレス制へ
フリーアドレス制とは、一人ひとりの固定席がなく、出社したら好きな席に座って仕事をするオフィスレイアウトのことです。
従業員にとってのフリーアドレス制のメリットは、
- 偶然近い席に座った他部門の人と交流がしやすい
- 話し合って仕事をしたいとき、集中して作業をしたいときなど場面に応じて座席を選べる
といったことが挙げられます。
会社にとってはコスト削減の効果もあります。リモートワークを取り入れている会社では、従業員全員が同時に出社することはありません。フリーアドレス制であれば、従業員の人数分の座席数を用意しなくて済むのです。コロナ禍になり、フリーアドレス制の導入に注目が集まっています。
オフィスの拠点数を減らす
リモートワークの導入が進んだことで、オフィスの拠点数を大幅に減らす動きも出てきています。
外資系製薬企業のノバルティスファーマでは、国内の営業拠点をすべて閉鎖し、都市部にある6つの事業所のみにオフィスを集約しました。医療情報担当者(MR)は通勤するオフィスがなくなり、基本的にはリモートワークで働くことになります。どうしても対面で集合する必要があるときのみ、貸し会議室を借りるのだと思われます。
富士通は、2023年度末までに現在のオフィススペースを半減させる方針を発表しています。フレックス制度も導入し、場所や時間にとらわれない働き方を本格的に取り入れます。
コロナ以前からオフィスがない会社もある

同僚が遠く離れた場所に住んでいるのは当たり前!
ソフトウェア開発企業のソニックガーデンは、コロナ禍よりはるか前の2016年から従業員全員がリモートワークで働いています。出社するオフィスはありません。そのため、従業員が住んでいる場所は全国津々浦々です。
リモートワークでもチームワークを重視し、自社開発した「Remotty」というツールを使って同僚のいまの様子を分かるようにしたり、雑談を推奨したりして、ポジティブな雰囲気をつくる努力をしています。
このようにコロナ時代のオフィスは、会社によって在り方が多様になりつつあります。
コロナ時代のオフィスの役割とは?

出社しなくてもいいのに、オフィスがあるのは何のため?
オフィスがなくとも仕事ができる時代においてオフィスは何のために存在し、どのような役割を果たすのでしょうか。そしてコロナ時代のオフィスは、従業員を感染から守るための安全性も確保しなければなりません。
これらの観点から、特徴的なオフィスの事例を2つご紹介します。
他部門とのコラボレーションを促す:Zホールディングス
東京都千代田区のヤフー本社ビルにある「LODGE」というスペースは、ヤフーをはじめとするZホールディングス社員が部門を越えてコラボレーションする場として位置付けられています。
出社するからこそできる、普段あまり接点がない人と「ちょっと話す」ことを促すための場です。多くの人と気軽に話し合えるような、明るく開放感のあるスペースが特徴です。
コロナ禍以前は社外の人も利用でき、会社を越えてビジネスの企画や相談ができる場所として運営されていました。いまは感染リスクを減らす観点から、利用者を従業員に限定して新たな目的を設けたようです。社外の人との交流は、今後オンライン中心に行う方針とのことです。
従業員を感染から守る:「6フィート・オフィス」

オフィスでもしっかりソーシャルディスタンス
「6フィートオフィス」とは、アメリカの不動産会社Cushman & Wakefieldが提唱するオフィスの概念です。従業員同士が6フィート(約2メートル)のソーシャルディスタンスを保てるように、オフィスレイアウトを工夫することを提案しています。たとえば、座席をジグザグに配置する、一方通行の導線にする、入口と出口を分ける、といった内容です。日本企業向けの問い合わせ窓口もあります。
このような安全性を確保したオフィスは、機密情報を扱う仕事や生産現場など、どうしても出社が必要となる業種の会社で導入が進む可能性がありそうです。
まとめ:コロナ時代のオフィスは会社ごとの特徴が現れる

今日はなぜオフィスに出社する?と考えるようになった
これからの時代は、業種の特徴や目指す組織風土によって、会社ごとにオフィスの在り方が多様になっていくことが予想されます。
オフィスに着目することで、その会社の理解が深まるでしょう。今後、自社や顧客企業を理解したいときや転職活動で企業を調べる際は、その会社のオフィスにもぜひ目を向けてみてください。
出典:日本経済新聞 富士通、オフィス面積半減
出典:LODGE
出典:6 Feet Office
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