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いづつえり

いづつえり

柑橘農家×ベーグル屋×ライター。「地方に仕事はない」という“常識“を自ら反証することを生きがいにしているパラレルワーカー。横浜出身、天草在住。

2019年7月22日

芥川・直木賞 ダブル受賞! 女性作家が令和時代に注目されるワケ

先週、第161回芥川賞・直木賞の受賞者が発表されました。新元号となって初めての今回の受賞では、芥川賞と直木賞の双方が女性作家であることが注目されています。直木賞については、候補の6作品すべてが女性。女性作家が注目される背景には何があるのでしょうか。

新人・純文学の芥川賞、中堅・エンターテイメント小説の直木賞

芥川賞と直木賞は昭和10年に菊池寛が創設した

まずは、芥川賞と直木賞についてどのような賞か簡単にみていきましょう。

芥川賞の正式名称は、日本を代表する作家である芥川龍之介賞。娯楽性よりも芸術性に重きを置いている純文学作品が選考の対象で、無名あるいは新人作家が受賞することが多くなっています。

一方、直木賞の由来は、小説家で、脚本家、映画監督だった直木三十五から。芥川賞とは対象的に芸術性よりも娯楽性に重きを置いたエンターテイメント小説と呼ばれる作品が選考対象です。

直木賞も創設当初は新人作家の大衆文芸が対象でしたが、現在は中堅作家の作品が対象となり新人が受賞するのは難しくなっています。

選考委員の間で「女性作家」は話題にならず

今回の直木賞候補作品はすべて女性だった

今回の令和初となる選考会では、芥川賞には今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」、直木賞には大島真寿美さんの「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」が選ばれました。芥川・直木賞の両賞で女性が受賞するのは約6年ぶりです。

受賞作品がどちらも女性と聞くと、なんらかの意図が働いたのではないか? と思う人もいるかもしれせん。ところが、選考委員の間では直木賞の「候補者全員が女性」であったことは話題に上がらなかったといいます。

候補作品の著者の年代は30〜50代と幅広く、時代小説、恋愛小説、ノンフィクションのヒューマンドラマなど、ジャンルもさまざま。過去の両賞の受賞者に占める割合は男性が7割強、芥川賞が直木賞よりも女性の比率が若干高いものの、全体としては男性優位の傾向です。

女性選考委員の誕生で広がった候補作品

平成以降の受賞者は男性と女性に目立った差はない

他方、平成以降の受賞者だけに絞ると、状況は変わります。直木賞の女性受賞者は35%、芥川賞では40%を超えています。実際、今回直木賞を受賞した大島さんの会見でも「たまたまそうだったんだろうなと思うくらいです」との答えでした。

女性作家の存在感が増している背景には何があるのでしょうか。そのひとつのきっかけとなったのは、1986年に施行された男女雇用機会均等法です。

この法律で、女性の社会進出が進み、翌年には芥川賞にも初の女性選考委員が誕生しました。女性選考委員が増えるにつれて、候補作品も多様化していったといいます。

「もう書くことは残っていない」といわれた文学界で女性が描いた「壁」

女性作家のテーマは女性が読みたいもの

90年台初頭の文学界では「もう書くことは残っていない」と言われた時期がありました。ところが、女性には書くべき材料があります。なぜなら、今の世の中には女性にしか書けない問題がたくさんあるからです。

日本では2016年に「女性活躍推進法」が施行されるなど、女性の働く環境は整ってきているといわれています。しかし、パソナ総合研究所が今年6月に発表した調査結果からは、いまだに「働き方に理想と現実のギャップがある」と感じている人が多いことが明らかになっています。

「女性活躍の壁と感じるものは何か」という質問に対する回答はどの年代も、「社会の制度や慣習」「仕事と家庭の両立」が上位2つを占めました。表面的には、男女同権といわれる今の世の中にあっても、実際にはまだまだ大きなギャップが存在しているということでしょう。

出典:パソナ総合研究所「約2,000人の女性に聞いた働く女性自身が考える『女性活躍推進』とは」

今回の芥川・直木賞の選考について文芸評論家の伊藤氏貴さんは、女性作家が描く差別や偏見について「男性も現実を頭では理解しているつもりでも、実感するまでには至っていないのでは」と話しています。

直木賞候補作品となった窪美澄さんの「トリニティ」では、結婚や出産を経験した働く女性の前に立ちはだかる壁、柚木麻子さんの「マジカルグランマ」では、世間が押しつけるステレオタイプな「かわいいおばあちゃん」像への痛快な批判が描かれました。

女性作家躍進の背景には、こうした「壁」を材料にした作品が多いこと、そしてそれが女性の読みたいものであるということがあるのでしょう。「女性」が話題になること自体、まだまだそれが一般的でないことを物語っています。

女性の活躍が話題にならなくなるのはいつになるのでしょうか。

出典:産経新聞「女性作家初独占の「直木賞候補」異変の裏側」

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