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いづつえり

いづつえり

柑橘農家×ベーグル屋×ライター。「地方に仕事はない」という“常識“を自ら反証することを生きがいにしているパラレルワーカー。横浜出身、天草在住。

2019年10月24日

日本人とは相性が悪い? 地方や高齢者をも巻き込むキャッシュレスの波

消費税が10%になったのと同時に展開されているキャッシュレス還元策。増税後の景気の冷え込みを避けるのが還元策の狙いですが、諸外国と比べて現金信仰の厚い日本では「それほどニーズがない」「還元策が終わる来年の6月以降は現金決済に戻るのでは」という声もあります。

日本でキャッシュレスを推進するのは難しいのか。地方在住の筆者から見えるキャッシュレスの動きを紹介します。

「地方でキャッシュレスのニーズはない」を覆した筆者の実証実験

現金を持たない生活の便利さは一度知ってしまうとやめられない

「お客さんの大半が高齢者のこのあたりではニーズがない」これは2年前、筆者が店にクレジットカードや電子マネー対応のレジを導入した際にいわれた言葉です。

個人商店の多い地方でキャッシュレス決済が可能なレジを設置している事業者は少なく、現金で支払うのが一般的となっています。

キャッシュレス決済にかかる手数料も事業者が敬遠する理由のひとつです。

しかし、筆者は都市部より現金信仰が厚いとされる地方で暮らしているにもかかわらず、ほとんど現金を持たない生活をしています。

クレジットカードや電子マネーが使えるところを探してそこでしか買い物をしないため、スマホ一台あれば日常で不便を感じることはありません。

なぜなら、その方がわざわざATMまでお金を下ろしにいく手間が省けるし、使った金額を見える化できてお得だからです。

”キャッシュレスなのに現金より安い”は衝撃だったようす

ところが、普段現金で決済をしている人に「キャッシュレスはお得」といったところで、インセンティブにはならないでしょう。特に不便を感じていないのですから。

それなら、現金を使うことで不便が生じるようにすればよいのでは。

そう考えた筆者の店では、導入当時からキャッシュレス決済と現金決済とで価格を分けることにしました。キャッシュレス決済なら8%割り引くことにしたのです。

すると、やって来たお客さんは驚きました。「普通、キャッシュレスの方が割高になるのでは?」

1年間キャッシュレス割引を続けた結果、筆者の店では現金決済よりもキャッシュレス決済で買い物をする人が多くなりました。売上ベースでもキャッシュレス決済は対現金決済で110%超に。

もちろん手数料はコストになりますが、小規模店にとっては両替に行ったり、レジ締めをしたりする手間の方が大きなコストになります。

キャッシュレスならすべてのお金の出入りを記録できるので、帳簿付けの手間を省くこともできるのです。

個人零細店なのでデータの有効性には疑問がありますが「地方だからニーズはない」とは限らないことが分かりました。現在はキャッシュレスのみの対応としています。

現金はソン? 着実に広がる各業界でのキャッシュレスの動き

都市部ならSuica一枚あればどこにでも行ける

いま、さまざまな業界で現金がソンする仕組みが広がりつつあります。

分かりやすいのが、SuicaやPASMOでの支払いでしょう。電車運賃は現金で支払うよりも、SuicaやPASMOを利用した方が少し安く設定されています。

また、大手宅配業者のクロネコヤマトや日本郵政でも、宅配料をオンラインで決済できるサービスが登場しています。

運賃表を見てみると、現金での決済よりもスマホを利用したオンライン決済の方が安く設定されているのです。

人手不足が深刻化している宅配業界では、省力化へいち早く舵を切ったという見方ができます。

今後、ATMでの現金引き出しは気軽にできなくなるかもしれない

金融業界でも大きな動きが始まっています。今年8月に、みずほ銀行が窓口でも両替や振込手数料の引き上げを発表しました。

続いて、10月にはATMの振込手数料の引き上げを発表しました。

長引くマイナス金利やネットでの取引が増える中、ほかのメガバンクでも窓口取引での手数料の引き上げや、ATM廃止の動きが進んでいます。

海外では1億円を超えるような巨額の預金をしている顧客に対しても、口座の維持手数料を徴収する銀行が登場しています。

“優良顧客”ですら、手数料から逃れることができなくなっているのです。

いまのところ日本で口座維持手数料を徴収する銀行はありませんが、金融機関は着実に既存の店舗運営を中心にした「リアル重視型」から「ネット重視型」への歩みを進めています。

地方や高齢者だからこそキャッシュレスの恩恵を得られる

好むと好まざるに関わらず、日本にももうすぐキャッシュレス社会が到来する

こうした金融機関をはじめとする事業者の動きは、他業界に従事する事業者、そして生活者である私たちにとっても大きなインパクトになるのではないでしょうか。

メガバンクが始めれば、経営が苦しい地方銀行や信用金庫が追従するのはそう遠くないはずです。

少子高齢化の進む日本で、この動きが逆戻りすることはないでしょう。

これまで高齢者や高齢者の多い地方には”関係ない”と思われてきたキャッシュレスの波。

しかし、本来、判断能力が衰えた高齢者や人口が少ない地方だからこそ人が介在しなくてもやっていける仕組みを活用するべきです。

「対面での対応や現金はコスト」ととらえるこの荒波は、今後、日本全国の津々浦々を無差別に巻き込んでいくことが予想されます。

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