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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2020年5月27日

猫が家に来てから、根本的に変わった私のキャリア【キャリアの傷痕】第22回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第22回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第22回は、トイアンナさんが猫を飼い始めてから予期せず起きたキャリア観の変化についてつづります。

ペットを飼うつもりがなかった家に猫が来た

子猫のうちは、どんな猫も青や緑の瞳を持つという

猫を飼うつもりはなかった。もともと子どもを産むつもりで、養育費を考えるとペットを養う余裕は、零細ライターである私になかったからだ。しかも私はどちらかといえば犬派。べったり甘えられるのが大好きだから、ツンツンしている動物をわざわざ飼おうだなんて、かけらも思っていなかった。

――が、夫は大の猫好きだった。

「スコちゃん(スコティッシュフォールド)かわいくない? アメショ(アメリカンショートヘア)ちゃんもかわいいよ。猫だけど甘えん坊なんだよ。俺も前は犬派だったけど、猫も甘えてくるんだよ」と、1年がかりで説得された。

さらに、私の不妊が発覚。厳密にいえば、100万円以上課金すれば子どもができる”かもしれない”と分かった。だが、ペットすら飼う余裕のない私に、不妊治療へ3ケタ万円を賭ける勇気はなかった。

そんなわけで、我が家に猫がやってきたのである。

キャリア観が猫で変わる日

かわいいだけじゃなく、キャリアを変えてしまった猫の存在

猫ちゃんがうちに来たとき、その子はまだ生後3か月。片手で持てるくらいのサイズだった。あまりの小ささに、つぶしてしまわないか怖いほどに。

子猫は、ただのかわいい生き物ではない。離乳したての猫は、まだ固形物を噛む力が弱い。3時間に1度起きる猫ちゃんへ、お湯でふやかしたキャットフードを与える必要があった。餌をふやかして、食べさせて、歯磨きして、遊ばせて、寝かしつける。これを延々繰り返していると、寝ている暇はない。仕事はガタガタになった。私はまだ夫がほぼワンオペ育猫を担当してくれたため、楽させてもらった方だ。これが自分1人だったら、倒れていたと思う。

「人の子どもを育てている母親って、どんだけ偉大なんだ……」
「世のワンオペ育児をしているお母さま方、頭が上がらないっす……」

と、鳴き声に起こされて無の境地で猫トイレを掃除しながら思った。

それから数か月。子猫の存在は、私のキャリア観まで変えてしまった。

働く理由が「猫」になった

猫のために働き、猫のために稼ぎ、猫のために帰宅する

子猫を飼うまでの私は、自分のために働いていた。そこには達成したいビジョンもある。ケアしたい部下もいる。それらは最終的に「私のやりたいこと」だった。だが、子猫がうちに来てからは「この子のためにも、失職できない」と覚悟が決まった。

子猫が家に来てから、私は急ピッチで事業を拡大した。それも、激務ではなくワーク・ライフ・バランスを維持して働く方へ。家族(夫・子猫)と過ごす時間を伸ばしつつ、安定的に働く道を模索し始めた。

仕事にも熱が入り、文章には魂がこもった。……と、編集者さんや読者さんが感じてくださっているかはさておき、以前より命を込めて仕事へ取り組めている。3時間に1度起床するせいで、睡眠はガタガタなはずなのに。これが、ワーキングマザーがいうところの「子どもがいて大変だけど、寝顔を見れば頑張れる」っていうやつなのね……!!

もっといえば、子猫はどんなに甘やかしてダメにしてもいい存在だ。人の子のように自立することもなければ、成長も早い。先ほどの「3時間に1度の起床」も、2か月で終わった。生後半年になったうちの子は、家族と顔をくっつけて寝ないと「ふにゃ~ん」と鳴く。だが、これも1年以内になくなり、あとはちょっと甘えん坊な普通の猫になるのだろう。

猫ですら苦労した私には、人の子を育てる人類すべてに感謝感激。子猫を飼ってから、人の子までいとおしくなった。今や電話会議で後ろから子どもの声が聞こえると、恐ろしくニタニタしながら「かわいいでしゅね~。何歳でしゅか? 3しゃい? ハキハキしゃべれて偉いねえ~」と話すスイッチが搭載された。現実なら職質されるからオンライン会議でよかった。

ペットを通じて柔軟な働き方を手に入れる

猫を通じて子どもを持つワークスタイルが理解しやすくなる

子を育てるのは大変。言葉では知っていた。だが、3時間睡眠で子育てする母親に何が起きるのか。子どもが幼少期にどれほど病気をしやすいか。その苦労は少しだけ、子猫を通じて教えてもらえたように思う。

今なら子どもが熱を出すと「家族が病気なので」と早退し、リモート勤務したい気持ちが痛いほど理解できる。独身のとき、夫婦だけで暮らしていたとき”なんとなくわかる”けれど、”切実に痛いほど共感する”ことはなかった。だが、子猫は確実に、キャリアの多様性を教えてくれた。と同時に、独身時代の自分がいかにワーママへ無理解だったか、当時自分が無意識につけてしまった傷痕を悔やむ。

「私なんかが、猫の一生に責任を負っていいのだろうか」「子どもができてから、猫アレルギーだったらと思うと、出産後までは飼えない」と悩んでいた、当時の私。あと10年早く、子宮の検査をして、飼っておけば良かった。それくらいペットの存在が、私のキャリアを変えてくれた。

トイアンナさんの連載コラム

トイアンナさんの連載コラム「キャリアの傷痕」

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慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

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