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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2020年8月5日

就活で落ちた憧れの会社へ…その先に待ち構えていた失望(前編)【キャリアの傷痕】第28回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第28回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第28回は、新卒で落ちた会社へ中途で転職を果たした原田聡介さん(仮名)が、転職後に抱えたある「失望」を取材しました。

新卒で夢破れて、それでも諦められなかった「商社内定」

たとえ新卒で希望する仕事に就けなくても、夢は叶う

原田聡介さん(仮名)は、就活で悔しい思いをしてきた人たちが抱く「あこがれ」そのものだ。第一志望だった総合商社に入れなかった雪辱を、転職で果たしたからだ。

新卒採用における総合商社(総合職)の平均採用人数は、150名程度。5大総合商社で合計750名の限られた枠だ。そこへ届くエントリー数は3万人ともいわれる。40倍以上もの過酷な倍率を乗り越え、内定する学生はただ者ではない。

体育会のエース、公認会計士合格、中国語検定トップ資格保持者……。日本最高の学歴であるはずの東大卒でも内定できない世界が、そこにある。

「学歴でハンデがあり、誇れるエピソードも当時は少なかった」と、原田さん(以下、原田)は就活していた頃の自分について語る。

原田:当時を振り返ると、無謀だろって思います(笑)。なんで内定が取れると思ったんでしょうね。でも「倍率」という考えもなかったし、学歴差別があることも知らなくて。とにかく何も知らなかった。だから落ちたときはショックでしたね。こんなに頑張ってES(エントリーシート)書いたのにって。タイムマシンがあったら、あのときの自分に「頑張って書いたからなんやねん。人生で成果も出してなかったくせに」と怒ってますね。

――でも、夢を捨てなかったんですね。

原田:そうですね。もともと英語には自信があって、独学でTOEIC 880点を取ったんですよ。だから海外経験を積みたかったんですよねぇ……。

原田さんは、「落ちた」と言いつつも、その能力をいかして貿易会社に新卒で内定した。総合商社とはかなり近い業界だが、輸送・物流がメインの事業だったらしい。

――そこで満足できなかった、ということですか?

原田:仕事がつまらなかった、というわけではないです。研修も1年近くありましたし、上司も優しかったです。同期の人数もそこそこいて、助け合う文化もあって。業務上、英語を使うことも多かったですね。といっても定型のやりとりが多いので、そこまでペラペラというわけでもないんですが……。

ただ、「チャレンジ」がなかったんです。僕はチャレンジがしたかった。

人生で「チャレンジ」してみたかった

丸の内、摩天楼にまたたく光。そこにあこがれの商社があった。

「チャレンジがない」と原田さんが語った、物流業界。実際に原田さんが勤めていた会社の評判をOpenWorkや転職会議の口コミで見てみると、良くも悪くも伝統的な社風がうかがえる。

根回しの根回しの根回し、といった稟議を通すための準備が多くスピード感に欠ける。若手は物足りなさを感じる環境かもしれない

福利厚生がしっかりしており、有給休暇もとれる。不当なパワハラはない。だが、上の命令は絶対という風土があり、職位が上がらなければ自分の意見は通せない面もある。

※個人情報が特定されないよう、口コミの言い回しを編集して掲載した。

原田さんは、さらに語る。

原田:海外赴任するチャンスもありますが、結婚した人を優先的に赴任させる仕組みでしたので、自分はおそらく後回しだなと思ったんです。倉庫で力仕事をしながら、お客様とやりとりする日々に慣れつつも「こんな人生でよかったんだろうか」とくすぶっていました。あのまま転職しなかったら、やる気を徐々に削がれて腐った社員になっていたんだろうなあ、と。

原田さんは26歳で、転職エージェントの門を叩く。当時は、転職市場が求人であふれかえっていた。商社も金融・流通業界の経験者を求めており、原田さんの夢はすぐそこにあった。

憧れの「あの会社」を紹介されて……

流通業界で詰んだ経験が、転職で夢を叶える足掛かりになった

原田:転職エージェントに接触したとき、なんでもっと早く連絡しなかったんだろう! って、後悔しましたよ。こんなに商社の募集があるのか! ってね。しかも新卒採用では選べなかった、おもしろい専門商社もたくさんあって。新卒採用をしている会社が、いかにごく一部の会社に過ぎないか、よくわかりました。

原田さんは慎重派だ。1年以上、転職を悩み続けた。そしてついに、自分が行きたかった「あの会社」を見つける。

原田:新卒のとき、第一志望だった「あの商社」を紹介してもらえたときは、興奮しました。自分がようやくここまで来たのか……と。苦労して山のてっぺんに登りきったときの感動みたいなものが。求人にありつけただけで、もう感激でしたね。

長年目指してきた「あの会社」へ手が届くチャンスを、原田さんは逃さなかった。関連業界での経験を手に、無事内定を獲得する。

そして、ここから原田さんの苦労は始まった。

……後編へ続く

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トイアンナさんの連載コラム「キャリアの傷痕」

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慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

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