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秋田

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「戦略コンサルティングファーム勤務。中期経営計画策定、組織改編業務などに様々な案件に従事。就活生時代に戦略コンサル、投資銀行(IBD)等に内定した経験から、息抜きに就活生からの質問も受ける。アイコンは知らない人(フリー素材)。Twitter:@akita_consul

2020年8月12日

「成長」を求めに コンサルに入っても良いのか。大半が理解不足な成長への代償【コンサルキャリアの回想】第4回

秋田さんによる連載「コンサルキャリアの回想」。当連載では秋田さんのこれまでのキャリアを参考に、タイミング毎にコンサルタントについて知るべき/考えるべきだった事をご紹介します。コンサル業界を目指す方はもちろん、そうでない方々もコンサル業界を知るきっかけにして頂ければと思います。

第4回ではコンサル志望者と、彼からの多くが口にする「成長」についてご紹介します。

はじめに

ここ数年、毎年のように夏前の時期には就活サイトが「就職先人気ランキング」なるものを公開している。
東大・京大をはじめとした、いわゆるハイキャリア層対象の「ランキング」はここ数年上位の過半数を経営コンサルティングファームが独占してしまっている状態だ。

彼らは口を揃えて言う。
「特にやりたい事が無いが、経営コンサルは成長できると聞いて、とりあえず目指すことにした」

しかし、その「成長」について応えられる人はほんの一握りだ。
今回はそんな「成長」について考えてみたい。

そもそも仕事における「成長」とは何か?

仕事の成長の軸は2つある

そもそも仕事における「成長」とは何だろうか。
人は、何の仕事をするにせよ、何かしら「成長」する事は出来る。大学へ入りたての学生がカフェバイトでレジ打ちや接客対応を学ぶのも、コンサルタントがデータを用いて経営の意志決定の支援の仕方を学ぶのも、どちらも仕事における「成長」である。

一つの見方として、仕事における成長は「成長の方向性」と「成長の速度」の2軸で切り分けて見る事が出来る。

「成長の方向性」は言い換えれば職種に対する適合度とも言い換えられる。カフェバイトの成長は当然ながら飲食店のアルバイトという職業における適合度を高めるものであるし、更に広く捉えれば「実店舗型ビジネスのスタッフ」という職業への適合度も高めるものだ。

「成長の速度」は経験期間当たりの能力の上昇度ともいえる。負荷の程度や環境によって左右される事が多く、長時間労働の職種は高くなりやすい。

ハイキャリア層からコンサルが人気なのは「成長の方向性」と「成長の速度」が”望ましい”ため

成長の方向性と速度の両面が叶うコンサルという仕事

昨今の東大・京大就活生等のハイキャリア層からコンサルタント職が人気なのは、この「成長の方向性」と「成長の速度」が多くの人から”望ましい”と(経験した事も無いのに)感じられるためだ。

より具体的には、知人のハイキャリア層曰く、「ビジネスに関わる際に有用かつ汎用的な能力を得る機会に恵まれており、それ故に市場からの評価が高いため志望している」と考えているためとのことだ。

確かに、概ね正しい志望理由に聞こえる。
「ビジネスに関わる際に有用かつ汎用的な能力を得る機会に恵まれている」というのは、中々現職のコンサルタントやコンサルタント出身の経営者からは猛反発を食らいそうな内容であり、かつ、そもそも「汎用的な能力とは何か」から考えるべきであろうが、私としてはこれは概ね正しいと考えている。

ここまで事業を定性・定量的に理解し、目的に沿って課題を特定し解決する事を集中的に行う仕事はそうそう無い。

コンサルティングという仕事は、定性・定量情報を元に行動を起こし、企業活動を前に進めていく(目標に近づける)ビジネスマン一般的な業務の根底に結びついた仕事の訓練になっているように思う。

実際に自分が事業者として行動に起こすかどうかという点で大きな壁がある事に間違いは無いが、根幹の部分では概ね正しいのではないだろうか。

また、そのような機会に恵まれているか否かは同じファームですら相当に人次第・運次第な部分もあり、怪しい所ではある。しかし「成長の方向性」や「成長の速度」の両面が揃うか否かという点では、コンサルは独特な仕事内容であるが故に他の職業よりも恵まれているのかもしれない。

例えば、「成長の方向性」に関しては似た仕事として事業会社の企画職等多くの仕事があり、「成長の速度」に関しては他専門職として様々な職業が存在する。

しかしながら、コンサルタントの仕事の特異性と集約性を考えると、同等程度に両面を兼ね備えている職業は中々無いように思える。無い事を証明するのは不可能だが、感覚としてあまり思いつかない。

強いて言えばファイナンスやマーケティング関連の専門職が近いのかもしれないが、やはり経営活動全般に跨るテーマに関して集中的にインプット・アウトプットと繰り返す仕事というのは相当レアだ。

そして、結果として人材市場からの評価が高くなるという点も、以前は今以上に評価は高かったが、まだまだ陰りを見せない状況なので概ねその通りであろう。

知り合いのエージェントが抱えるような求人案件には、「戦略コンサルで3年以上の経験を優遇」といった文言を条件として見かける事が多い。戦略コンサルティングファームにおける業務が案件に見合った「成長」機会を各コンサルタントに提供し、有用だと認められてきたからこそ、現在もこのような条件を付した案件が転がっているのであろう。

こうしてあれこれと考えてみると、確かにキャリア上マッチするニーズが広範な一方で仕事の独特さから採用競合職種が少ないように思える。そんな需要過多の状況では必要以上に人気が集中してしまうのも頷ける。

しかしながら、コンサル含めキャリアを検討する際に重々承知すべき点がもう一つ残っている。
あなたは本当に「成長の速度」の代償を払えるのかどうかだ。

成長に伴う代償を払えるか?殆どの志望者は理解出来ていない

成長には痛みが伴うことも多い

仕事における成長には代償が伴う。遊びではないので当然である。
にも拘らず、殆どの学生は自身が許容できる代償の限界を理解しきれていない。大半がまだ「学生」しか経験出来ていないのだから普通なのかもしれないが。

「成長の速度」は経験期間あたりの能力の上昇度という性質上、急激な精神的摩耗や労働の集中投下といった代償が伴う。普通の人間が同じ時間に対し、他の職業よりも大きく能力を高めようと思うのであれば、経験の密度を高めるしかない。

そして、その密度は労働上の負荷として個人の限界まで、時として限界以上にのしかかる。コンサルティング業界は相当ホワイトになったと言われる事が多く、その通りであるものの、一般的な事業会社に比べるとまだまだ改善の必要がある会社が多い。今現在も精神的に不調をきたしてしまう人も多いのだ。

しかしながら、殆どの学生はこの代償の程度を経験する事なく「成長の方向性」と「成長の速度」だけでキャリアを決めてしまう傾向にある。

海外では大学卒業後、インターン等で2年間程度の短い期間に働き、MBA等を経由して再度同じ職業に就くか否かを「試してから」検討する人も多い。

一方で新卒一括採用が根強い日本では、就活生は就業経験が無いまま人生の重大な部分を別途する職種・企業との適合度を見抜く必要がある。

結果としてコンサルティングファームに入り「成長」の機会を獲得したものの、その方向性と速度、特に「精神をすり減らし、時間を集中的に投下する覚悟をもって仕事に励まなければ得られないもの」という側面ももつ「成長の速度」には、一定数の人間がこのギャップに苦しめられ、早々に離脱してしまう。

更に酷い場合だと「成長の方向性」もマッチしていないケースも存在する。本当は経営や企業に対して興味も持っていないにも関わらず、それらを考える為に長時間思考力を奪われ続ける仕事に就いてしまう人も見てきた。

市場に求められた人気職業で、同期の友人が多数志望しているからと言って、自分が本当に求めている代物なのかは、重々考えなければならない。

一見広範なニーズをカバーするように見えるからこそ志望者が多く、ランキング等でちやほやされてしまいがちな業界だが、中に入ってようやく自身の本当のニーズを知り、去っていく人も多い。

「代償を払えるか」はいつかは答えを出さねばならぬ問い。今、考え始めるしかない

成長と引き換えに払える代償を問う

しかしながら、代償を払えるか否かはコンサル志望であるからには結局はいつか答えを出さなくてはいけない問いでもある。

自身のキャリア上の真のニーズを探る事は学生には難しいかもしれない。しかし、分からない事は判断出来るようになるまで調べ、経験し材料を得るしかない。

自分の頭で云々と考えてようやく納得するような話であるため、ここに書いてもあまり意味を持たないかもしれないが、ヒントとして提示しておくと、

  • 今現在・5年後・10年後にどのような欲求を持つ/持つであろうか。
    – 何かを成し遂げたいのか、誰かに認められたいのか/何かを得たいのか、はたまた、現状に満足してしまっているのか
  • それらはどの程度の負荷を許容できる程度の強さを持つのか。
    – 精神的なプレッシャーの多寡、日々の生活における時間的シェア、年単位での継続度…

考え始めればキリがないが、必ず考え始めなくてはならないのだ。

考え無しにコンサルティングファームに入ったとしても、この問いに対する考えは入社前以上に問われる。

「よく分からない」という人が大半だとは思うが、コンサル志望であるならば危険な状態である。分かるようになるまで確たる動機を裏付ける自分のニーズを探り続けるしかない。

まずは我武者羅に打ち込み、自分がどの程度の負荷とリターンのバランスを求め、耐えられるのか見てみるのも良いだろう。

体を壊してから自身の仕事への欲求と負荷のバランスを具体化させるコンサルタントもいるが、そうはならない程度に身をもって知るのが一番早いのかもしれない。

成長を目的化しない、「結果的に成長してしまった人」が最も幸せ

成長は人に尽くし、認められた結果

現在のコンサル志望の多くには当てはまらない話かもしれないが、実は成長を目的化しない、「結果的に成長してしまったコンサルタント」が最も幸せである。

実はコンサルタントとして生き抜き、幸せそうにしている人間は成長に関しては後回しな事が多い。

彼らは自身の欲求に忠実で、かつ自己実現欲求よりも承認欲求が強く、そのためには時間的・精神的労力を厭わずに自己成長よりも人に認めらる事を自然と優先している事が多い。

そして彼らにとって「成長」はあくまで人に尽くし、認められた結果の話である。成長自体を目的としているケースは多くない。

成長のために仕事をするのは個人的にも息苦しいと感じる事が多い。打算的にキャリアを形成して結局何になるのか、とも思う。

行先だけ決めておけば、成長の観点を時には忘れてクライアントのために打ち込むのも、コンサルタントを楽しむための一つのTipsなのかもしれない。

まとめ(編集後記)

コンサルタントの志望理由の一つである成長とその「代償」。
学生だけではなく、これからキャリアを再検討する方も大いに考えるべき点なのかもしれません。

次回以降も就活生・転職志望者向けに秋田さんのコンサルティング経験に基づいて、コンサルタントのキャリアを回想してもらいます。
お楽しみに!

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