この記事を書いたライター
大学卒業後、生命保険業界に勤務。結婚退職し、二児の母となる。転勤を経験したことから「地方にいても働く方法」を模索し、ライターとして活動を始めた。現在は、ライター活動の他、広報やSNSの管理などもおこなっている。

会社がジョブ型雇用へ移行すると、これまでの働き方はどのように変わるのでしょうか? また、私たちはジョブ型雇用にどのように対応するべきなのでしょうか?
最近、採用や雇用関係のニュースで「ジョブ型雇用」という言葉を見るようになりました。ジョブ型雇用とは、職種別に即戦力を採用する雇用形態の事です。仕事の範囲を明確にし、その業務に見合った専門的な人材を雇用する、欧米では主流となっている雇用形態です。
これまで「メンバーシップ型雇用」とよばれる制度を採用してきた日本も、急速に変わる世界の情勢に対応できるよう「ジョブ型雇用」を導入しようとしています。
目次
ジョブ型雇用へ移行する背景と世界の働き方

欧米ではジョブ型雇用が主流
欧米をはじめとする多くの先進国では、ジョブ型雇用とよばれる雇用形態が主流となっています。ジョブ型雇用では、募集する職務ごとに必要なスキルや能力が示され、その条件を満たす人が採用されます。たとえば、AI関連、データサイエンティスト、高度な専門性が要求されるエンジニアなどが挙げられます。
採用の際は、募集ポストの職務内容や目的、責任範囲や必要なスキルなどを細かく決めたジョブディスクリプション(職務記述書)をもとに雇用契約を結びます。
一方で、これまで日本では会社の社風に合った人を採用し、入社後に適性を判断して仕事を割り当てるメンバーシップ型雇用と呼ばれる雇用形態が中心でした。「総合職」という言葉に象徴されるように、ジョブ型雇用とは異なり職務を限定せずさまざまな仕事を経験させて社員を育成していくという考え方です。
また、以下もメンバーシップ型雇用の特徴といわれています。
- 新卒学生を対象にして在学中に採用選考をおこなう「新卒一括採用」
- 企業が社員を定年まで雇用し続ける「終身雇用」
- 年齢や勤続年数に応じて役職と給与がアップする「年功序列」
このことから日本の就職は、「職」に「就く」と書くものの、実際には「会社」に「就く」のが「就社」であるといわれてきました。

デジタル化・グローバル化に対応する人材が必要
日本で当たり前であったメンバーシップ型雇用は、グローバル化による国際競争の激化や、デジタル化による急激な変化に対応できなくなってきました。そんななか、注目されたのがジョブ型雇用です。
ジョブ型雇用の特徴は、「スキルをもった即戦力の採用」です。
即戦力を採用するため人材を育成する期間が必要なく、変化に素早く対応できます。また職務内容や責任範囲が明確なため、直接コミュニケーションをとりにくいリモートワーク環境下でも成果が可視化しやすくなります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるリモートワークの普及も、従来のメンバーシップ型雇用を見直す契機となりました。
出社することを前提に、企業が勤務時間を管理しそれに応じた給与を支払うことが主流のメンバーシップ型雇用のままでは、タスクや時間を社員自身で管理するリモートワークの生産性を高めることができないからです。
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の課題

ジョブ型雇用にも課題はある
いいことだらけに思えるジョブ型雇用ですが、日本の企業で全面的に導入するには課題があります。従来のメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用におけるそれぞれの課題はどのようながあるのでしょうか。
メンバーシップ型雇用の課題
- 時代の変化に素早く対応できない
- 長時間残業をしなければいけない場合がある
- 会社都合の異動や転勤の可能性がある
- 年功序列や終身雇用が崩れ始めている
先ほども述べたとおり、メンバーシップ型雇用は年功序列と終身雇用を前提に仕事をローテーションして人材を育てます。そのため、時間をかけてさまざまな業務を広く浅くこなせる人材は育成できますが、急速に進むデジタル化やグローバル化に対応できる専門家を育成することは難しく、時代の変化に素早く対応できません。
また職務内容や勤務地に制限がなく会社の判断に委ねられている場合が多いため、長時間の残業を強いられたり、会社都合の異動や転勤が命じられたりする可能性があります。
さらに、メンバーシップ型雇用のメリットである年功序列や終身雇用制度の場合、社員一人ひとりの給与は年々増えていきます。しかし企業の業績が右肩上がりに上がり続けることが難しい現在、この人件費を負担しきれなくなってきている点も大きな課題です。
ジョブ型雇用の課題
ジョブ型雇用の課題は以下が挙げられます。
- 生産性が上がらなければ解雇される可能性がある
- 自分自身でキャリア設計しなければならない
欧米のジョブ型雇用では、能力不足や業績不振による社員の解雇が可能です。日本は解雇要件が厳しく限定しているため、能力不足を理由に即解雇されることはありませんが、ジョブ型雇用が普及すれば解雇規制を緩める議論が始まることも考えられます。ジョブ型雇用が広く導入されれば、能力不足を理由に解雇されるかもしれないというこれまでになかった不安を抱える可能性があります。
また新卒一括採用で若手を育成するメンバーシップ型雇用と異なり、即戦力を採用するジョブ型雇用では人材を育成する考えはありません。そのため、会社に頼らず自分自身でキャリア設計をする必要があります。常に自己研鑽に励まなければ上のポストに就くことはできません能力不足だと判定されれば給与は当然下がってしまいます。
ジョブ型雇用で働き方は変わるのか

ジョブ型雇用へ移行すると、働き方も変わる
ジョブ型雇用へ移行すると、働き方も変わります。考えられる変化は次の4つです。
1.長時間の残業がなくなる
ジョブディスクリプションに残業が記載されていなければそもそもやる必要はありません。また、仕事の範囲が明確になるため、自分が担った仕事以外をする必要もなくなります。従来のメンバーシップ型雇用のもとで当然とされてきた長時間の残業はなくなるでしょう。
2.テレワークが定着する
ジョブ型雇用は成果主義ですので、成果さえあげていれば出社の必要性が必ずしもあるわけではありません。ますますテレワークが推進されるでしょう。
3.転職のハードルが下がる
企業は職種に応じたスキルがあるかどうかで採用を判断するので、転職へのハードルが下がります。
4.副業が可能になる
業務内容や範囲、必要なスキルなどが記載されたディスクリプションに就業時間の記載がなければ、勤務時間は自由です。
自分の業務をこなし成果さえあげていれば、余った時間で複数社での勤務や副業ができるようになります。
ただし、一気にこのような変化が訪れるわけではありません。日本のメンバーシップ型雇用が全面的に廃止されるとは考えにくいからです。厳しい解雇要件と一括採用が残る限り、日本では当面メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用が混在する「複線型」になるでしょう。複線型の雇用形態では、次のような変化があると考えられます。
ジョブ型雇用が導入されても人材の流動性は社内に限定

すぐに解雇はされず社内での配置換えが現実的
厳しい解雇要件がある限り、転職はそれほど活発化しないと考えられます。そのため日本では、転職で人材の入れ替わりが激しい欧米のジョブ型雇用とは異なり、「社内での人材の流動性を高める」運用が中心となるでしょう。
具体的には、職務をこなすには能力不足であると判断された場合には解雇されるのではなく、同じ会社で難易度の低い職務に配置換えになることが考えられます。当然、給与は職務内容に応じて下がります。
一括採用が残るため、ジョブ型雇用の導入は中堅以上
現在の採用手順で大きく占めている新卒一括採用がすぐに変わるとは考えられないため、当面は中堅社員以上を対象にした限定的なジョブ型雇用になるでしょう。若い社員に対しては引き続き社内で育成する機能が残り、中堅以上の社員から順次、ポストの公募や成果による評価基準が適用されることが予想されます。
ジョブ型雇用時代に必要なスキル

自ら進んでスキルアップに取り組むことが必要
これから一定期間の複線型時代を経て、日本でも本格的にジョブ型雇用時代への移行していくでしょう。実際に、日立製作所や富士通、KDDIやNEC、資生堂などの主要企業がジョブ型雇用の導入に着手しています。職務内容が明確になり成果で評価されるジョブ型雇用時代を迎えるにあたり必要なことは次の2つです。
専門性
ジョブ型雇用時代で求められるのは、即戦力になる高い専門性です。ポストに就いた後も職務に必要なスキルは何かを自ら考え、自己研鑽してキャリアを形成していく必要があります。
専門性を高めるためのスキルを身につけようと努力すればするほど、高い評価を得ることにつながります。
自立性
労働時間に応じて給与が決まるのではなく職務内容に応じて給与が決まるジョブ型雇用では、具体的な指示がなくても自分の仕事を見つけられる自立性が必要です。また、時間の使い方を自分で決めたり、自分の仕事量を把握しスケジュールを組み立てたりする管理能力が求められます。
労働時間によって給与が決まるメンバーシップ型雇用に比べてプレッシャーのかかる環境にはなりますが、自分の仕事を終わらせ、かつ成果を上げてさえいれば休暇や働き方は自由です。
まとめ:ジョブ型雇用時代に向けて、専門性や自立性を高めよう
日本の主要企業は、急速なデジタル化やグローバル化に対応できる人材を確保するためにジョブ型雇用の導入を進めています。ジョブ型雇用は職務を明確にし、ポストに適切な人材を集めるものです。これまでの日本の伝統的なメンバーシップ型雇用と異なり、即戦力が求められ、年齢や年次は関係ありません。
ジョブ型雇用の導入が進むにつれて、長時間残業がなくなる、転職しやすくなる、副業が可能になるといったさまざまな変化が生まれるでしょう。ただしジョブ型雇用にも課題があるため、企業がジョブ型雇用を導入したとしても、すぐにすべての社員に対して適用されるわけではないと予想されます。
当面の間、日本の企業はメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用がミックスされた複線型の形をとると考えられます。全面的なジョブ型雇用時代を迎えるのには少し時間がかかりそうですが、来たるその日のために今から専門性や自立性を身に付けておきましょう。
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