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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2020年12月30日

新型コロナウイルスで優秀な社員から見捨てられる会社とは【キャリアの傷痕】第37回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第37回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第37回は「新型コロナウイルスの対応についていけず、優秀な社員が会社を見捨てる構図」について、トイアンナさんがお伝えします。

新型コロナウイルスの対応をしない会社が、見捨てられつつある

会社が失策を打てば、優秀な社員から辞めていく

「転職することにしたよ」

と、周囲の優秀な社員が口を開きはじめました。新型コロナウイルスで、多くの業界が不景気を迎えているこの時期。転職をするにも求人が減っており、あまり有利な状況とは言えません。

なぜこんな時期にわざわざ転職を? と質問したところ、自社の新型コロナウイルス対策に失望したというのです

「まさか、それだけで転職するなんて」

とは、私は思いませんでした。実は私も同じ理由で、ある会社を離脱していたからです。私は現在、ライターとして活動しつつもマーケターとして法人向けに戦略立案を請け負っており、なかには企業へ半ば社員として常駐する案件もありました。

そして、私が常駐していた法人には、忘年会を開催するところもあります。室内でならとやかく言われないと、立食パーティーをオフィスで開催しているところも。回し飲みををしたり、ビュッフェスタイルでお皿をシェアする食事をしたりしています。

「さすがに、これはないな」
「家に高齢者がいる社員は、これだと勤労意欲が下がるだろうな」

と、思わざるを得ません。

幹部だけを優遇した新型コロナウイルス対策に絶望する優秀な社員たち

幹部社員だけ優遇すれば、社員の心にマスクをされてしまう。

さらに、優秀な社員の離脱を招いている会社の様子を聞いたところ、驚くべき実態が明らかになりました。
その会社では、幹部社員だけ在宅勤務を許可していたのです

課長以下は、事務作業だろうが何だろうが出社。
パンパンな過密状態のオフィスには、中間管理職と平社員しかいません。役員は自宅で勤務して安全地帯に避難しながら、部下は原則出社。その理由も「前例がないから」というひどいものでした。

こういう振る舞いは新型コロナウイルスにかかわらず非常事態が仕事上おきたとき、「自社は対応できないだろう」「幹部は保身に走り、自分たちを切り捨てるのだろう」と、失望させるのには十分です。

さらに会社の売り上げが減ったからと、ボーナスが減り、休みが減り。複合的な要因があれど、最終的には「ここに留まりたいと思うほど、自分は大事にされていなかった」と感じた社員から、転職を決めていきます。

この時期でも転職していくのは、この時期でも転職できる人たち
すなわち、優秀な社員から自社を離れていってしまうのです。

経営者が恐れるのは、優秀な社員が反旗を翻すこと

ところで、私は経営者でもありますが、そんな私が恐れるのは視座の高い、優秀な社員から抜けていくことです

高い視座をもち、やりがいをもって仕事にコミットしてくれる社員。立場にかかわらず、会社の長期存続を意識して動いてくれる社員。

こういう人が抜けてしまうと、会社は自分の利益を考える人の集合体になってしまいます。

「あの人は好きだから優遇しよう」
「あの人は嫌いだから、仕事では助けない」

こういう視座の低い振る舞いが蔓延すると、売り上げは一気に下がります。自社の利益を損ねてでも、自分の利益ばかり考える社員が増えてしまうからです。それも、会社の業績が悪くなって優秀な社員が抜けてしまうのは自業自得ですが、新型コロナウイルスの対応ミスで失ってしまったのだとしたら、もったいないことこの上ありません。

辞められるだけならまだしも、優秀な社員同士は外でもつながっています

「あの会社はやめておいたほうがいいよ」

と、噂が一度広まってしまえば、数年はいい社員が応募してくれなくなります。優秀な社員が自社を見限ることは、彼ら・彼女らのネットワークを通じて社のイメージダウンにもつながってしまうのです。

優秀な社員にキャリアの傷を作らせないために

優秀な社員は、転職して幸せになったと言えるだろうか?

さらに、優秀な社員にとっても、この時期の転職は苦渋の選択です。たとえ転職できても、転職先に花形プロジェクトがある期待はできません。コストカットを中心とした、下積みプロジェクトが控えている可能性も高いでしょう。そうなれば、転職先での昇進はしばらく諦めざるをえません。

さらに、転職先が新型コロナウイルス対策を万全に実施しているならば、在宅勤務が奨励されているはずです。その状態で中途入社するのは、コミュニティに入りづらくハードルが上がってしまいます。成果は出せるかもしれませんが、チームでの信頼を勝ち取るまでには苦労が控えていることでしょう。

実際、優秀な方でも転職後「辞めたのが正解だったかどうかは、今でも悩むことがある」と吐露しています。経営者側にとっても、社員にとっても……。現時点での転職はキャリアの傷になりうるのです。

ですから、会社はなるべく優秀な社員を守らねばなりません。在宅勤務のシステム構築や、会食の禁止。さらに感染者が出た場合の連絡網を整備したり、医療費負担の福利厚生を検討したりするのもありでしょう。

もしあなたが辞めたい社員で、行く当てがあるならば。行き先でまともなプロジェクトが残っているかは、確認の余地がありそうです。内定が出るのは嬉しいけれど、行った先で未来はあるのか。それを見極めてから進路を決めても、きっと遅くないでしょうから。

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