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トイアンナ

トイアンナ

慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 http://toianna.hatenablog.com/ Twitter: https://twitter.com/10anj10

2021年1月13日

職場の支配者だったはずなのに…念願の正社員になったお局の挫折【キャリアの傷痕】第38回

トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第38回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。

第38回は「たたき上げで念願の正社員になれたはずが、自分の派閥を失う結果になってしまった、お局さんの挫折」について、トイアンナさんがお伝えします。

立ち上げ期と異なる中途社員への苛立ち

会社が10名以下のときは、誰もがかけがえのない仲間

スタートアップ……社員が10名以下のフェーズで参加してくれる人というのは、とにかく貴重です。安定感のまるでない会社へ、きっとこの人ならなんとかしてくれる、と社長への信頼だけでやってきてくれるメンバーは、どれほど心強いことでしょう。

しかし、会社は成長していきます。そして、どんどん新しい社員が入ります。そこでは、これまでのやり方を否定されることも出てきます。

とあるスタートアップ企業の古参メンバーの中井さん(仮名)は、それが許せませんでした。スタートアップで何もルールがないなか、手探りで作り上げてきた道を新参者に「整っていない」と一蹴されることで、プライドを傷つけられたのです。

最初に入ってくる人は「仕組みなんてないのが当たり前」と思っています。だから試行錯誤でシステムを作り、ダメな部分を改善して積み上げました。たとえば、給与計算はただの紙へ印刷していたのが、そのうち袋とじになりました。

しかし、そこへ途中から入ってきた人は「なんでPDFじゃないんですか?」「オンライン給与システムがないんですか?」と平気で言ってのけます。それが中井さんには、許せなかったのです。

上司のお気に入りとして活躍し、念願の正社員に

気づけば周りが一歩引いて自分を見ていた

中井さんは、新しいメンバーからの言葉に対して常に声を上げてきました。

「仕組みがないのも、仕方ないでしょう。うちは新しい会社なんだから」
「整ってないのが嫌だと文句を言うなら、この会社に来ちゃだめでしょ」
「何で昔から頑張っているあの人じゃなく、中途のXXさんが評価されるんですか」

中井さんは、そこで上司を頼りました。上司は中井さんがお気に入りで、これまで契約社員だった中井さんを正社員へ推薦してくれました。

これまで何でもやってきた。飲食店、事務アシスタント、デザイナー。その何でも屋のスキルがベンチャーで自分を四方八方へ動かしてくれた。そして40代で、念願の正社員に。

中井さんは、自分が報われたと感じていました。
しかし、落とし穴はその先にあったのです。

そして、「お局」と呼ばれている自分を知る

周りから孤立して、キャリアの傷を負った

ある日、中井さんは自分の陰口に気づいてしまいます。裏で、お局として揶揄されていたのです。

「あの人って、好き嫌いで態度を変えすぎだよね」
「新入りばっかりいびって、新しく入る社員がかわいそう」
「あの人と働くと、みんな辞めちゃう。会社にとって害になってるよ」

確かに、中井さんと働いた中途の社員は、みな早期離職をしていました。中井さんはそれを「新しい社員が、この会社に合わせようと努力してこなかったからだ」と理解していました。

しかし、周りはそう思っていませんでした。会社に合わせていないのは、中井さんだ。そう思われ始めたのです。

とくに社員が50名を超えたころからは、上司のひいきも効力を発揮しなくなりました。上司の権限自体も限定されたからです。創業期は、役員も少ないため何でも手を出さねばなりません。しかし会社が成長すれば、管理職にも役割分担が生まれます。かつて流通から利益率、営業施策まで何でも決められた上司は、いまやいち部門長に過ぎませんでした。

後ろ盾もなく、正社員としての責任は重く。中井さんが初めて味わった、キャリアの傷でした。

創業期の「仲間」を手放して楽になる

持っていたものを手放すと、代わりにギフトが手に入る

ここで、事件が起こります。中井さんと共に創業期から頑張ってきたメンバーが、会社を辞めたのです。原因は突然の心筋梗塞。中井さんにとっては「大事な仲間」でした。

中井さんはショックを受けつつも、それからは新しい社員に向かってフラットに接するようになりました。上司の寵愛と最愛の仲間を失った中井さんにとって、好き嫌いを言っている余裕がなくなったのです。

しかし、それから中井さんは急激に仕事を任されることが増え、正社員としても評価されるようになりました。なぜなら、中井さんにとって「最高の仲間」だった創業初期のメンバーは、後から入った社員には「派閥」に見えていたからです。

そのことに気づいたのは、“派閥”が崩れてからだったと、中井さんは振り返ります。

――あの頃は、毎日が辛かった。友達がいなくなり、上司も私を守ってくれなくなって。もう誰も信頼できないと思っていました。でも、実は上司と友人を失ったことが、私を社員として自立させてくれたんです。

今は、新入社員にも平等に指導しています。前のやり方を押し付けることもできないし、新しいやり方を提案されたら、嫌ですけど受け容れます。だって、それしかもうできないんですから。不満ではありますね。でも、そのおかげで得られたものもあったので。

ギフトは、失ったと思ったときに届く。中井さんが抱くキャリアの傷痕は、そんなことを教えてくれます。

トイアンナさんの連載コラム

自身の体験談や取材など、トイアンナさんが実話を元に届けるキャリアコラム。性別職種問わず、様々なキャリアの傷痕話とそこから得られるジョイを紹介します。

トイアンナの連載コラム「キャリアの傷痕」

連載コラム【キャリアの傷痕】記事一覧

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